※ NARUTO連載 睡蓮主人公










カカシ先生はすげぇ上忍だと思う。
オレだけじゃねぇ、サスケだってきっとそう思ってるに違いない ────────── んだけど。
カカシ先生に致命的な欠陥がある、っていうか致命的な欠陥が出来た?気がする。
オレが知る限りカカシ先生にそんな致命的な欠陥なんては無かった筈なんだ。
多分あれは、ねーちゃんが言い出したあれが切欠に違いないってばよ!!!










お昼過ぎ、任務が終わったオレは約束してた通りねーちゃんの待つ食堂に行った。
お昼過ぎっていうより、もう大分お昼は過ぎちまってたからお客さんとかほとんど居なくて、
洗い物してるねーちゃんの背中見ながら、オレがカウンターで昼飯食べてる時。

「ナルト、ちょっといい?」
「何?」
「ちょっと教えて欲しい事があんだけどさ。」
「オレで判る事だったら教えるってばよ!」

頼みがあるから任務終わりに来て欲しいって言ってたのがそれかな?って思ったから
ねーちゃんの役に立つなら!って二つ返事したんだけど。

「ずっと気になってたんだけどさぁ。」

濡れた手をエプロンで拭きながら、振り返ったねーちゃんは深刻っぽい?表情でオレをじーっと見つめ

「チャクラってどうやったら ───── っと練るんだっけ?出る??」
「ぇえっ!?」
「ちょ!声大きいってば!」

今更チャクラって何?って聞かれてもオレもどう説明していいか判らないってばよ!
っとそれ以前に、何で急にそんな事言い出すんだ?って思ったんだけど。

「あのさねーちゃん。」
「何かね?」
「っそのチャクラがどうこうっての聞いてさ?」
「ん?」
「どうするつもりなんだ?」
「どうする…って聞かれてもねぇ…。」

その時のねーちゃんの表情を見てオレは直ぐにピンと来た。
ねーちゃんがこういう表情する時は絶対金銭問題なんだってばよ!

「アンタ達見てたらさぁ、すっげぇ便利っぽいからぁ?」
「便利?」
「だってさ?壁面とかヒョイヒョイ〜って歩いて登ってんじゃん。」
「忍だから当たり前だってばよ!」
「この店さ?痛まないように長ーく営業しようと思ったらやっぱメンテが肝心なんだよね。」
「メンテ?」
「メンテナンス。こまめに手入れしないと何でもガタがくるからねぇ…。ま、アタシのお肌は大丈夫だけどー!」

そう言ったかと思ったら、ねーちゃん大口開けてアハハハハーって高笑し始めた。
あのさねーちゃん、そこで笑い飛ばされてもオレ困るってばよ。
だって高笑いしてっけど目が全然笑ってねぇんだよな。
んー…ここはサスケも呼んで、ってかサスケに説明させた方がいいかもしんない気がしてきた。
オレ、人に教えたりとかそんなの絶対無理だしなぁ ────────── って、何となく上見上げた時だった。

「 ────────── あれっ?」
「どした?」
「今上で気配感じた気がしたんだ…けど勘違いかもしんねぇし…。」
「気のせいじゃない?」

ほんの一瞬だったけど、確かに感じたんだよなぁ気配。

「オレ説明とか苦手だからサスケ呼んで来るってばよ!」
「わざわざ呼んでこなくてもいいよ。夜んなったら聞けばいいし?」
「でもさ?チャクラの練り方聞いてどうするつもりなんだってばよ?」
「そりゃアンタ!壁の補修するに決まってんだろ!!!!」
「まさかねーちゃん…。」
「何よその目は。」
「それだけの為に!?」
「それだけ言うな!他にも屋根とか看板とか色々あんだよ!」

ねーちゃんってどんだけケチなんだよ。
無駄使いとか全然しねぇし、オレやサスケにも無駄使いすんな!って口やかましいし?
近所じゃ『ちゃん相当貯め込んでるらしいわよ!』っておばちゃん達の間で言われてんの全然知らねぇのか?
っていってもねーちゃんの事だから知ってても知らんぷりするだろうし、
一体どこまで自力でやり遂げる気なんだってばよ!?

「でもさ?簡単に出来る訳じゃないってばよ?」
「わーっとるわ!」
「んじゃいきなり何でそんな事言い出すんだよ…。」
「そりゃ…。」
「他にも理由あんのか?」
「興味もあるし?」

と、さっきまでとは全然違う妙にモジモジした様子のねーちゃん。
オレは、そんなねーちゃんの姿にまたピンときた。
絶対何か企んでるに違いない!って。
怪しいなぁ ────────── っていつまでもモジモジしてるねーちゃんを思いっきり訝しんでた真っ最中

「お昼いいかな?」

このタイミングで来るの!?な、カカシ先生が店に入ってきた。

「いいけど、大したモンないよ?」
「何でもいいよ。」

そのカカシ先生に普通に接して普通に昼飯差し出して普通に接客するねーちゃん。何時もならここで

『とっとと喰ってさっさと帰れ!』
『冷たすぎデショ!』

だとか

『こっからが忙しいんだよ暇なアンタと遊んでる暇はねぇ!』
『だから何だよ。』
『まかない時間に来るんじゃねぇよ!』
『お昼だと忙しいデショ?オレの気遣いが何で判らないかな…。』
『一生判りたくねぇよ!』

ってやり取りがある筈なのにねーちゃんが普通で怖い。
普通過ぎるから怖すぎた。その上

「あのさぁカカシさん。」
「何?オレに相談でもある?」
「うん。」
「っ ───── !?」

普通って言葉の対角上に居るねーちゃんが普通どころかに殊勝で怖かった。
やっぱり絶対何かある!でなきゃねーちゃんが普通な筈ないってばよ!

「チャクラってどうやったら使えるようになるの?」

そこで頬染める意味は何処にあんだよねーちゃん…。

「っチャクラを…?」
「うん。アタシもナルトやサスケやカカシさんみたいに格好良く壁登りとかしてみたいなって。」

太字で強調する部分に作意を感じるのはオレだけ!?

「っ登ってどうしたいとか、あるんだ?」
「アタシも…同じ目線で同じ景色見てみたいなぁって。」
「っ!?」

だったら普段の上から目線をどうにかしたほうがいい気がするんだ、オレ。
っていうか、さっきそんな事一言も言わなかったってばよ!?
壁の補修だとか屋根の補修だとか看板の補修だとか如何に出費を抑えるかを力説してたじゃねーか!

「オレでもいいんデショ?」
「何が?」
「教えたりする事?」
「そりゃ…いいけど…。でも他にもやりたい事もあるし…。」
「覚えるのに時間掛かるかもしれない。それでもやる?」
「やる!時間掛かってもいいから覚えたい…。」
「仕方ないな…。」

っていうか、仕方ないって表情じゃねーよカカシ先生!
っていうかていうか!今ねーちゃんがテーブルの下で親指立てて拳グッと握ったのオレ見ちまったんだけど。

「いつから始めたい?」
「今すぐにでもっ!でもその前に裏手の二階の西側の壁が傷んでるから直したくて…。」

そう叫んだねーちゃんが見たこと無い程に瞳輝かせて言うもんだからカカシ先生ってば

「ほんと、仕方ないな…。」

仕方ないって言いながらポリポリ頭掻きながらも、妙に嬉しそうに表に出て行った。

「ねーちゃん…。」
「皆まで言うんじゃねぇ。」
「んじゃやっぱり!?」
「いいかナルト。立ってる者は親でも使えって言葉よーく覚えとけ?」
───── ちゃん!裏手ってあの辺りー?
「今行きますぅ〜!」
「 ────────── 。」
「上忍のクセに素人に気配読まれる方が悪いんだ。違うか?」
「っ違わないってば ────────── !?」
「あーそうそう!今晩は焼肉しよ!だから早めに帰ってこいよ?」
「何で急にそんな…。」
「アンタ等そういうの先に言っとかないと遅くまで修行してんでしょーが!」
「じゃお昼来いって言ったのってまさか…。」
「晩飯メニュー伝える為だけど?」

つまりねーちゃんは最初っからカカシ先生が居た事に気付いてて、んでもって
カカシ先生が聞いてたの知っててあんな話言い出したって事なのか!?

「大体さぁ、アタシみたいな普通の人間が簡単に覚えられる訳ねーじゃん?」
「じゃ覚える気もないって事なのか!?」
「覚えられるなら覚えるけどさ?覚えてる間に壁壊れるよか先に直してから覚えた方が効率いいだろ?」

そう言って笑ったねーちゃんはまさに、極悪非道の悪役みたいだった。










ねーちゃんが関わってるとどうにも冷静さを欠く?っぽいカカシ先生。
それだけならまだしも、カカシ先生ってばどっかでそれを自覚してんじゃねーか?って思う事がある。
口癖のように『仕方ないな』って言って、困ってる風に振舞うけどやっぱりどっか嬉しそうだし?

「もうさ、オレどうでもいい気がしてきたってばよ…。」
「今更だな。」
「普通気付くだろ!?っていうか相手がねーちゃん以外だったら即気付いてるってばよ!」
「当然だろ。」
「でもさ?見てて気持ち悪いってばよ…。」
「自虐癖持ちなんだろ。」
「それはそれでもっと気持ち悪いってばよ…。」
「別にオレ達に被害さえなければ問題ないだろ。」
「そうだけどさ…。」
「で?本気で覚える気なのか?」
「らしいぞ?オレとサスケに教わるんだって息巻いてたし。」
「じゃあ…。」
「うん、カカシ先生は店の補修しただけ?」
「それでも満足してたんだろどうせ。」
「 ────────── うん。」

痛んだ壁を直し、屋根を直して看板も直してまだ『他に直すところは無いか?』って
嬉しそうに聞いてた位だしなぁ。

「こっちに被害さえなければ好きにさせておけばいい。」
「っだよな!」

今んとこねーちゃんの被害に遭ってるのはカカシ先生だけだし ────────── いいか!









──────────────────────────────

自虐癖持ちのマゾい人認定された記念日。










→