◇◆ 春の憂鬱 ◇◆










桜の開花予想

そんな話題がニュースで持ち上がる頃になると酷く落ち着かない。
それも、家にいる時よりも外出してる時の方が酷い気がする。



「ねーちゃん…何か探してんの?」
「え?」
「キョロキョロとさぁ…まるで子供みたいでこっちが恥ずかしくなるんだけど」

尽のクセに生意気な口を…。

「で?何探してるのさ」
「何も探してないわよ」
「ふぅ〜ん…」

この頃の尽は妙に大人びたというか、妙に鋭い。
尽の指摘は間違ってなかった。
以前はそうでもなかったのに、ここ最近自分で自覚症状がある程、自分が落ち着かないのは解っていた。

「春…だからじゃない?」
「何それ!」
「いーの春なんだから!!ほら、行こ!」

これ以上詮索されるのは姉としてマズイ!
と、尽の手を取った時だった。

『・・・・・・・・』

一瞬浮かで消えた言葉。

今のは尽?それとも??
そしてまたついキョロキョロして

「だーかーらぁ!ねーちゃん何か探してんの?」



それはこっちが聞きたいわよ・・・・。


































「何だったんだろ…」

小さな尽の手を握った瞬間だった。
ゾクリとするような感覚…とはまた違う、何か得体の知れない感覚に襲われた。

「何て言ったんだろ…」

感覚と同時に浮かんだ言葉。
思い出そうとすればする程その言葉が思い出せない。
そしてそれを想えば想う程に

「・・・・・」

酷く切ない想いが身体中を支配するような感覚に襲われる。
言葉を思い出さなければ…と焦れば焦る程に言葉が薄れ、
言葉が薄れると思う思えば思う程胸が痛む。

「胸が軋む…?なぁんてね…」

コレじゃまるで

「恋する乙女じゃない…」

相手は?出会いは?始まりは何処????
心当たりはない筈なのに、まるで恋する乙女のような…

「って恋した経験あったっけ?」

エスカレートしていく独り言。

「気のせいよね!多分…」

それが嫌で自分を納得させて布団を被った筈が

「おやすみなさ〜い…」

そう呟いて目を閉じた瞬間、胸を締め付けられる様な痛みに襲われる。
訳も解らないままに、どうしてそうなるのか解らないのに涙が止まらない。
今すぐ大声を上げて泣き叫びたい衝動に駆られる程の悲しさ。
何で自分がこんな風になるのか解らない事が余計に怖いのに、
たった一つの言葉を思い出せない事がそれ以上に怖い。
湧き上がる嗚咽を手で押さえながら、泣き疲れてウトウトしはじめた頃。






























『 迎 え に い く か ら … 』









































不意に頭に浮かんで消えた言葉。それは朝起きた時には忘れてしまっていたけれど……。















何かが起こる気がした         春の憂鬱