本.55


アタシが此処に来た最大の目的は”一護のお腹を守る”事。
勿論ルキアを助ける事も目的の内だけど、それはアタシがやる事じゃなくて一護がやるべき事だったからこそ
アタシは藍染に掻っ捌かれる一護のお腹を守る為に此処に来た。

───── 一応は初志貫徹?

最大の傷になっただろうあのお腹の傷を付けさせる事は阻止できたのだから一応アタシの目的は達成された訳で?
当然スッキリした気分にならなきゃなんないのにアタシは何でこんなにムラムラ…じゃないイライラ?
でもなくてモヤモヤしてるんだろう。

───── …………。

だろう、じゃなくて本当は判ってる。
心の何処かで”もしかすると”って期待してたからだ。
無理だと判ってたし事実無理だったけど、アタシは0.0001%位は期待していたのだ。
ギンちゃんが思いとどまってくれないか?って。

アタシというイレギュラーな存在と関わった事で、彼の中に僅かでも変化が起きてくれないだろうか?
って驕りじゃないけど期待していたのは事実。
けど、きっとそれは無理だろう…って思ってた事も事実で、頭で判ってても気持ちが付いていかないからアタシは
こんなにもイライラモヤモヤしてるんだと思う。

───── それに………。

それに喜助さんの事だってそうだ。
山じぃは”浦原喜助と此度の事は関係ない”そうキッパリ言い切った。
そんなのは単なる言い訳で、現状と事実を合わせ見ればそうじゃない事はバカでも理解出来る。
こんな事が起きてしまった以上、過去の処遇が過ちだったとしても認める訳にはいかないのも判る。
判る…けど納得がいかない。

過去の事は判らない。
アタシの知る未来はそこまで至っていない。
それでも、喜助さんや真ちゃん達に対する理不尽な仕打ちを”仕方なかった”や”そうするしかなかった”で
片付けられる程物分りのイイ出来た人間じゃない。
けれど、それが覆せないのも判ってるからこそこんなにイライラモヤモヤしてる。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっもおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

ガチでムカつく。
イライラして頭掻き毟って喚いてもイライラが収まらない。
この苛立ちをどうしてくれようか!!!と地団駄を踏んでた時だった。

「おっ………邪魔だったかしら…?」

後ろから非常に申し訳なさそうにしながらも決して私と視線を合わせないようにする乱菊さんが再登場、
アタシは何故か流魂街にある居酒屋?飲食店?っぽい場所に半ば拉致されるように連行されたのだった……。





「遅ぇよ。」
「………ゴメン。」

え〜っと。何でアタシがいきなり謝んなきゃいけない訳!?

「何してたんだよ…。」
「べっ…つに特に何も…。」
「………。」

しかも何で言い訳しなきゃなんないの相手が彼氏ならともかく弟である一護に!と思いつつも。

「ゴメンね一護。」
「………っ別に怒ってねぇよ。」

怒ってないと言いつつも不貞腐れて機嫌が悪い一護につい下手に出てしまうのは姉の性なんだろうか。
っていうかコレ一体何の集会なんだろう隊長副隊長集まってるし。

「で、何でこんな状況になってるの?」
「反省会だか慰労会だってよ。」

何か余裕だなヲィ!

「ルキアは?」
「兄貴と一緒に後から来るってよ。」
「はい?」

いやいや朽木兄は重傷でしょ?ルキア庇って瀕死の重傷で息も絶え絶えにルキアと会話して一護に謝罪(お礼?)して、ってあれ?
アタシ双極の丘に辿り着いてから今に至る迄にそんな場面見たっけか?
それとも何か?アタシが辿り着く迄にその場面は終わってたって事?

───── 少なくとも…。

アタシはあの場面を見た覚えは無い、っていうか朽木兄がブッ倒れてた記憶はない。

「あれっ…?」
「どうかしたのか?」
「や、何でも…ないんだけど。」

嗚呼そうか。
ギンちゃん乱入の所為で朽木兄じゃなくて話しがブッ飛んだのかまぁいいや。
多少の変化はあって当然、大きな変化も無いと言い切れない。
アタシという存在が存在する時点で既に変化が起きている。
つまり、朽木兄が無傷な事など小さな変化に違いないからまぁいいか。

───── いいんだけど、ん〜…?

それよりも気になる事がある。
アタシを何ともいえない微妙な表情で見る一護の視線。
生温かい…ならともかく、何かを探るように何か言いたげな感じでアタシをチラチラ横目で見てる事の方が余程気になる。

───── ギンちゃんとの事気にして?

一護の知らない間にギンちゃんと知り合った事を気にしてるんだろうか?
それとも、別の何かが一護の中に引っ掛かって…それで?

「一護、どうかしたの?」
「何でもねぇよ。」

聞いたところで一護は答えてはくれない。
言いたい事があるならハッキリ言えばいいのに ────────── と思うけど。

───── アタシだって言えないことあるし仕方ないか。

自分の事を棚に上げておいて人にどうこう言える立場じゃない。
それにこういう表情をしてる時の一護に何を言っても無駄なのは判ってる。

───── そのうち何か言ってくるかもしれないし…。

今はとりあえず目の前に広がる大量の食べ物を消費する事を考えた方がいいかもしれない。

「それ取って。」
「ん?ああこれか。」

存外美味いなオイ、と初めての尸魂界の食事をモグモグマグマグする事を優先する事にした。





のだがっ!

「で?一護はどういう子がタイプな訳〜?」
「俺のタイプなんでどうでもいいだろ!」
「え〜気になるじゃな〜い。杏子は知ってるの?一護のタ・イ・プ。」
「巨乳か貧乳か?おっぱい星人かおしり星人かって事?」
「違うだろそれっ!」
「やっだ〜何それウケルんだけどぉ〜!」

出来上がった乱菊さんの暴走に巻き込まれない事が先決だろう…多分。





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2011.10.07