09. アタシは再びあの場所へ戻っていた。 今、後にしたばかりの世界でも帰る場所でもなく、その二つの世界を行き来する原因?になった 最初 ───── 水鏡の声を聞いた真っ暗な場所に。ただ、そこに居る理由は何となく判っていた。 傷付いた身体を残し、アタシは違う世界で結構楽しく時間を過ごしてしまった。 身体を残していった場所で死んだように眠ってる筈のアタシを心配してるだろう人の事を思うと、 アタシがいくら厚かましく出来てたとしてもどんな顔して帰ればいいものか?と悩むのが正直なトコだ。 言わなけりゃ判らない事かもしれない。けれど、アタシが体験してきた事は紛れも無い事実であり、 その結果自分が助かったとしても、どこか後ろめたさがあるのも事実。 アタシが此処にいるのはおそらく、それらを自分で消化しろって事で、与えられた猶予っていうか考える時間かもしれない。 ───── 最初とは全然違うもんなぁ。 此処に来るまでの、底辺を這う程の後ろ向きな考えなど綺麗サッパリ何処へやら、 嬉しい楽しい事ばっかで過ごした三十日は間違いなくアタシに影響を与えた。 つまり、目覚めたアタシは新しく生まれ変わった今までのアタシとは別人!?なわきゃないが、 色んな事をつい無駄に考え過ぎて、目覚めた時、もしそこに誰か居たらどう反応すればいいか?だとか ホント余計な事を考えてどうしようどうすりゃいいだろか。 ───── 面倒臭ぇな…。 アタシはアタシなんだからゴチャゴチャ考えなくていーんじゃね?と思う。 全部やっちゃったもんはやっちゃったんだし、仕方ないんだからしょうがないし。 聞かれたら答えて、聞かれたら謝って。 『お姉ぇこそ素直になんなきゃダメなんだって!』 素直じゃなかったつもりはないけど、普通常識でいう所の素直とは多少ズレてたかもしれない。 成る様にしかならない、どうにでもなんだろ。って考えは変わらないし、変えようもない。 でも、全部を自分一人でどうにかしようってんじゃなくて、誰かを頼る事も必要なのかもしれない。 浦原喜助という人物を信用し、確かに変わったあの子のようにアタシも少し変わらなきゃならない時が来たのかもしれない。 それは、悟りとかそういうんじゃなくて、この先生きて行く上で絶対に必要な事で、でもアタシはやっぱ 素直じゃないからそれを受け入れられなくて。あの子達の所に連れて行かれたのはそれらが必要な事だと知り、 受け入れられるようになる為に何処かの誰かに与えられた時間だったとすれば ───── 大人になれって事か。 自分の中にある”子供”ってカテゴリに該当する年齢に逆戻りして大人のまんまで子供になって。 大人だと思ってた自分が思ってた程大人じゃなかった。外見年齢に引きずられ、大人なアタシは中身まで 子供になってたのかもしれない。少なくとも、アタシが生まれ育った場所でのアタシはあんなガキじゃなかった筈だ。 ───── けどいきなりってのはムリだしな…。 行き当たりバッタリは変えようにも変えられない。それはアタシの性根であり矯正は不可能だ。 だからこそ、これ以上ここでウダウダ考えてても仕方ない。 「ありがとう水鏡。アンタがアタシを助けてくれたのね。」 『また逢えるから呼んで。いつでも逢えるから呼んで。待ってるから必ず…。』 それが水鏡との最後の会話。最後っていってもそれはその時点での最後って意味で、アタシはまた水鏡と逢える気がしてた。 そしてそのままアタシの意識は朦朧とし始め ────────── 。 「ふぁ〜〜〜〜〜っ………よく寝たわぁ。」 結局全てを流れに任せ、目覚めたアタシの口から出たのは当然っちゃあ当然な台詞だった。 首をコキコキ鳴らし、寝ぼけ眼を擦って完全に意識を覚醒させたところでやっと気付く。 そこにナルト・サスケ・カカシさんが居た事に。 ………………すげぇ気不味い。 そんな、気不味さMAXのド真ん中にアタシは帰ってきたのだった。 -------------------- 2010.01.29 ← □