序.04



(取り入る為の嘘か?)

三度撒かれてなるものか!と奮起したのも束の間、
現れた女と子供の会話に脱力をせざるを得ない状況にある現在、
俺は気配を殺し、二人の様子を伺いながら会話に耳を傾ける。

(迷子?帰れない?)

女は、口から出任せにも程があるだろう、そう言いたくなるような嘘を並べ、
うずまきナルトを取り込んでいるようだった。
それは、相手が子供でなければ信じる筈もない出任せだが
子供にはそれが嘘と見抜ける筈もなく。
女はスルリと子供の懐に入り込み、接触に成功した上子供の家へと招きいれられた。

(ねぇ…)

本当に、見掛けは普通の一般人にしかみえない女。
女、というには若い、少女は本当にどこにでもいる、ごく普通の少女だが。

(騙される訳にはいかないんでね…)

自分の目ですら追えない速さで姿を消した以上、普通ではありえない。
接触に成功した今、油断しているであろう相手を捕えるならチャンスは間違いなく今だ。

(ムキになっても仕方ない、ってね。)

一応、今日こそは捕えるつもりで三代目には報告を済ませてある。
嘗て使用していた面を懐から取り出し顔を隠し、髪も覆い隠せば準備は整う。

(ま、さすがに逃げる事もないでしょ…)

逃がすつもりもなければ逃げられる事も許さないけれど。

全ての準備を整え、俺は今度こそ捕えるべく、扉を叩いた…。




















コンコン

扉をノックする音が聞こえてきた。
こんな時間にナルトにお客さんって来る訳!?
と、失礼な事を考えながら、さて出るかどうか?を考えていた。
居候の身であるアタシが勝手に出る訳にもいかないし、と放置を決め込む事にしたのに。

コンコンコン

扉をノックする音は止まず、決め込んだ放置をする訳にもいかない臭いから、
仕方なくアタシはナルトの代わりにお客さんを確認(?)しようと扉を開けた。

「どちらさまで…すぅ!?」

バタン

そして、開けたドアを脊髄反射で閉めちまった。
だって、だって人んち尋ねてくるのに狐面とかどういう神経してんのよ!
しかも夜よ!?開けたドアも閉めたくなるっつーの!!!

ドンドンドンドン

なのに、相手はさっきまでの遠慮はどこへやら?ものすごい勢いでドアを叩き始めた。

「ちょ!五月蝿いって!近所迷惑でしょ!開けるから叩くの止めろっての!」

このままじゃドアを叩き壊しかねない勢いでドアを叩くもんだから、アタシはまた仕方なくドアを開けた。
うん、さすがに二度目だから脊髄反射はなかったけど。

「どちらさまで?ナルト今お風呂入ってんですよね…。」

だから、出直してこい。との意味を含ませてみたが、うんお面で表情見えないから
なに考えてんのかサッパリ。

「あのー…」
「………。」

しかも、ウンともスンとも言わない狐面は、無言のままアタシをジッと見ている(気がした)。
ん〜…狐面、どっかで聞いたような見たような気がすんだけどどこだっけ?
あれは確か、どっかの場面でヤヴァイ人がこう顔を隠す為に?

「あっ…!?」

暗部ーーー!って叫ばなかったのは、やっぱりどこか冷静なアタシのお陰か。
いや、叫ばなくて正解、よくやったよアタシ!!

「………貴様に用がある。」
「アタシに用はない。」
「………。」
「………。」

基本、動じる事は少ないアタシをナメんなよ?
そんな意味を込めて切り替えしで応戦すれば、相手も中々やり手のようで

「今すぐここで死にたいか?」
「やりたいならどうぞ?」
「………。」
「ナルトに一応言ってくるんで、待っててもらえます?」

一般人を【死】で脅す態度にムカツクからニッコリ笑って一発かましてから覚悟を決めた。
あれか、お約束の連行ってやつですか?

「ナルトー!ちょっと出かけてくるからー」
「え?何処行くんだってばよ!」
「すぐ帰ってくるからー。」
「ちょっと待つってばよねーちゃん!」

さすがにお面とナルトを対面させるのはマズイ?
そう思ったからアタシは狐野郎の手を引いて急いで表に出た。
追って来るなよナルト…。そう祈りつつ、

「で、どこ連れてこうっての?どこでもどうぞ…ってヲィこらマテやーーっ!」

アタシは狐野郎に荷物が如く俵担ぎされ、どこぞへ連行されるハメになった。










「さて、お主はどこから来た?名は何と申す?」
「どこって…家から?名前は。」

そして、現在アレだ、三代目のじーさんと対面中な訳で。

「この里に来た目的は何じゃ?」
「来たくて来た訳じゃないんですけどこちらとしては。」
「ほほぅ…どういう事じゃ?」
「あ、聞いてくれます?いやこれホントマジ話なんっすけど信じてくれます?
 あーいや信じらんないかもしんないんだけどさ、いやいやもう話せってなら話しますよ?
 ガンガン話しちゃいますけど…あ、引いてます?ちょっと引いてますかそうですかそうですよねー。」
「いや…ワシは別に引いてはおらんが…。」
「じゃ、サクっと話します?」
「できればゆっくり話してもらえると助かるんじゃが。」

ケッ…これだから年寄りは好きじゃねーんだ。
こんなもんさっさと話しゃ済む事だろうが!とはおくびにも出さず。

「何風で語ります?長くなりますからー、ちょっと飽きない為にも…」
「普通で頼めるか…?」

ドン引き手前の三代目、その横に立つ狐野郎(も僅かに引いてる臭い)相手に
アタシは語る事にした。自分がどうしてどうやってここに来たのか?を。





--------------------
2008.08.16



←