序.06


ふぅ。
ノンブレスはやっぱキツイね。
うんもう喉カラッカラに渇いちゃった。

「すいません、お茶もらえます?」
「「………。」」

アタシのマシンガンノンブレストークにドン引きしてる三代目と狐野郎を尻目に、
何処からとも無く出されたお茶を啜るアタシ。

「他に何か?」
「お主の自宅…とやらは何処にあるのじゃ?」
「日本?japan?」
「ニホン…という国など存在せんのじゃが。」
「そりゃそーでしょ?アタシの住んでる国っつーか世界には木の葉隠れの里なんて無いし。」
「………そうか。」
「そうっす。」
「お主は…」
「アレっすね、俗に言う”異世界”から来ちゃいました♪ってやつ?」
「なるほどな…。」
「三代目、そのような事を鵜呑みにされるのは」
「狐はお黙んなさい!」
「っ!?」

うん、言いたい事言ったらちょっとスッキリして、ある事に気がついた。
アタシの聞き間違い…っつか聞き間違いする筈はない!
多少変えてる風だけど、絶対間違いない。

(狐野郎って…カカシ?)

何だっけ、何とか眼…車輪?違っ、写輪か。
あの声は、間違いなくそうだ。アニメはそれこそ片手程度しか見てないけど、
それだけは覚えてる。だって…うふ…うふふふふ。
ヤバイおもしろい。何かちょっとS臭いカカシがアタシに対して引いてるだとか、
いい負けしそうになってるのがおもしろい。
敵対心煽りまくってるけど、これくらいしないとね、ストレス溜まってるし。

「お主が異世界から来た証拠でもあればの…多少信じてやってもよいのじゃが。」
「証拠って言われても、何が証拠になるか判んないし。具体的に何が証拠になんの?」
「手荷物を持っておったそうじゃが。」
「ナルトんち置いてきたー。」
「荷物ならここに。」
「置き引きかよテメェ。」
「………。」

アレだな、声だけは好きだが。コイツ、生理的に合わないかもしんない。
狐野郎改め、カカシの野郎は事もあろうか人の荷物まで勝手に持ち出してきやがった。

「勝手に開けないでよ。パンツとか入ってるし。」
「う、うむ…。」
「何が出るかな…何が出るかな…チャチャラチャンチャンチャラララッ♪」

人は、何かに対して許容量を超えるとどうにかなるんだろう。
アタシの場合、ちょっと違う方向にテンションが上がる、と今気付いた。

「旅行に行くのに持ってくモンなんて証拠になんのかね…。」

自分で言ってりゃ世話ないが。
正直証拠になりえるモンなんざ持ってる自信ない。
着替えとか着替えとか着替えとか、財布にお金にそれから何持ってたっけ。

「着替えと財布とお金と煙草と携帯灰皿と携帯って…携帯電話!?」

文明の利器、現代日本人の三種の神器があるじゃまいか!!
アタシは慌ててポケットから携帯を取り出した。
ちなみにアタシの携帯はdoxxmoのノーワンセグ機種。

「これは?電波さえあればこの世の果てにいても会話出来るシロモンで…。」
「何と!?そんな便利な品物が!?」
「ちなみに、当然ここじゃ使えないけど。今使えんのはカメラ機能と電卓機能くらい?」
「カメラがこれに付いておるのか!?何と便利な…」
「隠し撮りサイコー!って使ったら即逮捕だけどね…。」

逮捕の意味は判らないけど、ニュアンスで感じたらしい三代目はちょっとガッカリしたようで。

「他国にもこのような物はありえんの…」
「あったら困るし。証拠にならんしー。」
「間者でも忍でもないようじゃの…。」
「話の判る年寄りは好きだ。うんイイネ!」

どうやらアタシの言う事を、多少でも信じてもいいと思ってくれたのか?
三代目はさっきまでとは違う穏やかな表情に変わった。
変わったのはいいんだけど、その代わり

「アンタさ、もうちょっと口の聞き方考えたら?」
「オマエモナー…。」
「ホント口の減らない女だね…。」
「アタシにそれはホメ言葉だから。」
「………。」

カカシの口調が素に戻った臭い。
あ?そんなにアタシを悪に仕立て上げたいのかコノヤロー!
大体何がそんなに気に入らないっつーんだコイツは?
アタシがお前に何かしたのか!?あ?したっつーなら言ってみろっての。

「荷物片付けていい?」
「構わん、それと今後の事じゃが…」
「ちょっと待った!今何か…」

これで落ち着けるか?そう思ったのに。何が目についたのか、カカシがいきなり身を乗り出して
人の鞄の中をガッサガッサと漁り始めた。

「三代目っ!これを…」
「なっ…これは…」
「ん?あ…それ?それ確か2〜3日前かな…家の前に落ちててさ、交番に届けようかと思って忘れて…」

それは、本当に拾った物だった。
旅行に行く準備の最中、買出しから戻った家の前にそれは落ちていた。
何つーか、こう一人暮らししてる家の前に落ちてたら、相当ヤバイ品は、さすがのアタシでも戸惑った。
だって刃物だし!ナイフみたいだったし!
そう思ったからアタシは出発日を少し(っつっても1日だけど)早めたのだから。

「玄関前に落ちてた…とな?」
「認めざるを得ませんね…。」
「そ、落ちてたのを拾って届け忘れ?」

そんな刃物を神妙な顔つきで眺める三代目とカカシ。
何だろう、物凄く嫌な悪寒がするんだけど。

「間違いありません、これは四代目の…」
「時空空間忍術用のクナイじゃの。」
「しかも術式が滲んで…これじゃ不発というか失敗というか、どうなるか…」

何です?その嫌な響きを含んだ術とやらは。

「クナイだけが飛ばされた…か。」
「ですね。何かの反動でそれが戻って…。」

戻って…何?そこでアタシを見る理由は何!?
嫌な響きの台詞込みで説明してくれませんか?今すぐに!!!

「お主はおそらくこの術に巻き込まれたのかもし…」
「しれん!とかあやふやな回答は受け付けませんから!」
「落ち着け、この術は…」
「事故か?事故なのか?当て逃げ?何それ犯人どこよ!!」
「当て逃げってアンタね…。それに四代目を犯人扱いってどーなの!?」
「うっさい!持ち主がいる時点で犯人扱いは当然だろうがっ!」
「落ち着け、少し落ち着くのじゃ!」
「ざけんじゃねーぞ?これが落ち着いてられっか!不審者扱いの挙句に検挙した犯人いねぇとか…」
「だから!犯人とか言い方止めてくんない?師匠はそんな人じゃな…」
「じゃかーしいわ!100%被害者のアタシを不審者扱いした責任取りやがれっ!」

そっからはもう、すったもんだ?っていうか。
怒り心頭なアタシは暴れる寸前で、三代目は責任が自分達側にある事を認めたから
あたふたするし、カカシは自分の師匠の悪口を言ったと逆ギレし始め。

結局、収集の付かないまま罵詈雑言の応酬が一晩中繰り広げられたのだが。





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2008.08.16



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