序.07 「ともかくじゃ、お主がこの里に害成す者でない事は明らかとなった。」 「そしてその責任がアタシには一切なくて、そっちの責任である事も明らかとなった。」 「いい加減にしたら?」 「うっせーよ。事実だろうが!!」 「大体アンタ、年上に向かってその口の聞き方はないんじゃない?」 「は?何言っちゃってくれてんの?」 「はぁ?何寝ぼけてる訳?鏡見て出直してくる?」 「出せるもんなら出してみろや!!あん?」 「はい、これ鏡ね。」 口の減らないのはお前の方だ! カカシの野郎、ご丁寧にホントに鏡まで手渡してきやがった。 「アンタも仮面着けないと人前に出られないブサイクなんて可哀想ネー。」 だから、嫌味たっぷりに言いながら、アタシは手渡された鏡をふと見て、 「マテコラ。」 うっかり赤ん坊になりそうになった。 「アンタの世界じゃ年上にそんな口聞いても許されるんだー…。」 「いやいやいやいや、だからマテ。」 「へぇ…今更言い訳でもするつもりなんだ。」 「だからちょっとマテと言っとろーがっ!ちょ!誰よコレ!!」 「は?何言ってんの?」 何だこのピチピチの美少女は!? アタシはこんな…こんな可憐な美少女に生まれた覚えは一切ねぇよ! おまけに! 「何オプションだこれはーーーーーーーっ!!」 も の っ そ 若 返 っ と る が な !! (推定年齢:18〜9or20?実年齢:ピーッ(自主規制)) さらにぶり返したすったもんだの挙句。 といってもアタシが一人大騒ぎしただけなんだけど。 こうなったら仕方ない。 若返ってるってのは伏せといた方がよさげ?と判断したアタシ。 「あはは…そうね、アタシは確かにアンタより年下だわねーこれは。」 「へぇ…認める訳だ。」 「や、アンタ仮面だし歳判んないから認めないから!」 「俺が言ってんだから間違いないデショ。」 「聞く耳持たないからー!それより三代目?」 「な、何じゃ!?」 ワシに話を振るな!と云わんばかりの視線を一瞬向けたけれど。 それでも余裕があるように見えるのはさすがというべきか。 ともかく、今から大事な話をしなきゃならない。そう、事故といえば保険、保険といえば… 「示談に持ち込みます?それとも半永久的に面倒見てくれます?」 「物騒じゃの…。」 「そりゃ生活掛かってるし?戻れるかどうかも判んないし。」 「こっちとしてはさっさと戻って欲しい限りだね。」 「それには同意して差し上げあげますわよ?オ・ジ・サ・マ」 「ホント口の減らないガキだね…。」 「条件提示してよろしいかしら?」 「言ってみるがよい。ワシが出来る事であれば出来る限りやらせてもらおう。」 さすが三代目!よっ太っ腹! 「先ずは、住む場所を確保したいから、アタシこのままナルトんちに居候していい?」 「そ…それは…。」 「あの子供に拘る必要はないんじゃない?」 「あのねぇ、あんな子供を一人暮らしさせるとか、バッカじゃねーのアンタら。」 「アンタも十分ガキだろ。」 「不衛生にも程があるわっ!あんなとこ一回見たら…放っとけるか!」 アレはさすがにマズイ。健康体が不健康体になれる自信すら湧く汚さ。 あれを見たら最後、どんな掃除嫌いだろうが手を出さざるを得ない。と、 事情を知らない人間なら思うはずだ。 何も知らない人間であれば。 「しかしじゃな、ナルトにはちと特殊な事情が…。」 「そんなもん知らんがな。アタシには関係ねーし。」 「三代目…。」 「仕方あるまい。確かにナルトを一人置いておくには…。」 「じゃ、OKね。次はー。」 「次は何が必要じゃ?」 「オカネクダサイ。」 「直球だね〜そういうのだけは。」 「そういうの”も”って言ってくんね?」 「ホント口の悪いガキだな…。」 「お金はあるけど使えないから意味ないし。仕方ないジャン」 そして、人は金がなければ生きていけないのは万国共通。 それがたとえ異世界だろうが何次元だろうが同じで、 ましてこれから子供の世話に(?)なるのだから最低限生活費は どうにかせにゃならん。が、こればっかりはどうにもならん。 「確かにお主の言う通りじゃ。」 「2〜3ヶ月、人間が生活できる位でいいわ。んで!」 「で?何じゃ」 「仕事探すから、見つけられそうになったら保証人お願いしたい。」 そして最後、流石にニート生活する訳にもいかないし。 仕事くらいしないとね、生きてけないし。 でも忍者にはなれないしなりたくないし! 一般人としてアタシは生きたい…そう願う。 「どういう事じゃ?」 「得体の知れない人間、保証人無しで雇ってくれる甘いトコなの?この里?」 「判った。保証人にはワシがなろう。」 「三代目!?」 「一応生活費はお主が戻れる目途が付くまでワシが責任を持って出す。保証人も含めてじゃ。」 「ワオ、随分太っ腹だねオジーチャン。でも助かるわ。一応仕事見つかったら生活費は要らないから。」 「お前、いい加減にその生意気な態度どうにかした方がいいよ。俺、気が短いから。」 「人に名前も名乗れないような輩に言われたかねーよ。」 「こんのガキ…。」 「アタシ、っていうの。。はいアタシは名乗ったしー、常識人ネ♪」 「俺は…っ…。」 そして、今だ続いてるカカシとの応酬は一応アタシの勝利で幕を閉じた。 そりゃお面被ってる位だから名は名乗れんだろう。と判っているから勝負に出たんだけどさ。 お面の下、相当悔しがってるだろう表情を思うと 「プッ…。」 「三代目、こんな失礼なガキ他国に捨ててきません?俺今すぐ行きますよ。」 我慢できずに噴出したら何て事言い出しやがんだ陰険野郎!? 「非人道的な里、と言いふらしてやるーーー!」 「なっ!?この…クソガキがっ!」 「わーーん!怖いよーーー三代目ぇぇぇぇ…」 「お主等、随分と仲の良い事じゃ…。」 「「冗談じゃ(ねぇよ!)ありませんよ!」」 そんな、陰険でいけ好かないカカシと綺麗にハモった事で、 今度こそ本当に一応の落ち着きを手に入れたアタシ。 にらみ合いは続くけれど、三代目の命令って事で逆らえないカカシは めっさ渋々ながらアタシをナルトんちまで送り届けてくれる。 「ありがとー。」 「……へぇ、礼は言えるんだ。」 「あのねぇ、挨拶とお礼は常識ヨ?人を何だと思ってんだよアンタこそ。」 「口の減らないクソ生意気で態度の悪いガキ?」 それはお前じゃね?アタシの実年齢からすりゃお前がそうなんだ!とは言わないっ。 何かこう、してやったり感のが多いんだけど、インパクトが足りない気がした。 もっとこう、鳩尾辺り?を直撃するようなダメージをくれてやりたい衝動に駆られ。 鏡で見た自分の顔を思い出し、最も効果的になりえる表情を浮かべ 「お世話になりまして、ホント助かりました。ありがとうございました…名無しさん。」 深々と頭を下げ、その頭を上げたと同時に0円のタダ笑顔を浮かべてみた。 「っ!?」 と、一瞬だけど仮面に隠れて見えない顔が動揺しているのが判った。 だって思いっきり態度に出てるし。 「動揺しまくりじゃね?まだまだ修行が足りんよ君ィ…ふはははは!」 「………そりゃどうも。」 「じゃ、もう逢う事もないだろうから…さよーなら名無しさん!」 「……俺の名前は名無しなんかじゃないよ。」 「言えない名前なら名無しだろ。別に無理して言わなくていーよ。」 「喰えないガキだね全く…。」 やっぱまだまだ子供だな…って考えてちょっとだけ凹んだ。 実年齢は自主規制にしたい!しておく!けどぶっちゃけるとアレだ。 多分カカシって… (弟と同い年位じゃなかろうか……。) ならば、アタシにとってはやっぱりガキで。 「じゃーね!アンタ危なっかしいしー、仕事中に野垂れ死体とかならんよう気ぃつけや!」 アタシはそんな言葉を狐野郎に残し、ナルトが待つ家へ振り返る事なく入った。 こうして、アタシの異世界での生活の第一歩が始まる事になる。 -------------------- 2008.08.16 ← □ →