05.大切な言葉…ほど伝わりにくい。(訂正、言葉が伝わらない。) 米粒おにぎりを頬張りながら佐助お母さんと幸村お父さん(?)の会話に聞き耳を立てつつ 関係図を書き直した結果、私が思う関係性(お父さんとお母さんの関係)が勘違いである事が判った。 どうやら佐助お母さんと幸村お父さんの間に婚姻関係は無かったらしい。 まぁ他人の性癖にとやかく口出しするつもりは最初からなかったし? そういう事に対して偏見を持ってるつもりもなかったから問題はなかったけれど、 幸村お父さんは義父ではなく佐助お母さんの雇用主である事実が判明した。 ようするに”旦那”って呼び方は”旦那様”の意味じゃなくて男性全般に当て嵌まる呼び方っていうか 佐助お母さんは雇用主含め”ホニャララ(名前)の旦那”って呼び方をするようだった。 そして、佐助お母さんが通い妻(改め通勤)ではなくこの上田城?ってとこに常駐してる事も判った。 昨日まで私が居た小屋はいわば佐助お母さんの実家?で、 現在はここに住み込みで働きに来てるみたいな?状態で、 私を引き取った数日はたまたま休暇で実家に掃除に帰ってた…みたいな? ともかく、米粒おにぎりを頬張りながら佐助お母さんとゆっきーの会話から察するに、 私も今日からこの上田城の佐助お母さんのほぼ未使用の部屋に常駐する事になったっぽい。 「ことりは何の心配もしなくていいでござるよ!」 「旦那がちゃんと皆に説明してくれたってさ。」 『踏み潰される心配はしなくていいって事?』 「ことりは妖の類ではない!と言っておいたでござる。」 「怖がらなくても大丈夫だ、って俺様からも一応言っといたから。」 『そうじゃないだろ言っておく事はもっと他にあんでしょーーーーがっ!』 座卓?みたいなのと座布団しかない佐助お母さんの部屋に通され、 竹で編んだザル?みたいな中に布巾敷いた簡易ベット的な中に下ろされて説明を受けるも、 苦情を受け付けて貰えない怒りに私の小さな身体がワナワナと震える。 ───── もっと重大な事があるのにっ! もしかして私にこの部屋っていうかこのカゴから出歩くなって事なんだろうか。 まさに鳥の籠!?って感心してる場合じゃない! 『ねぇねぇ、私はここで軟禁されてろって事?』 「っ!!!!!!!!」 「ん?どうしたこと…って旦那どうしたの。」 「こっ、こっ、ことりの訴えるような瞳が某を射抜いたでござるぅぅぅぅぅぅっ!」 「何馬鹿な事言ってんの。」 「もっ、もう駄目でござる………。」 『訴えてんのが判るなら話し聞いてってば!』 「…………成る程ね。」 『もしかして佐助お母さん…私の言いたい事わかっ…。』 「この目にやられた訳ね。」 『えぇいこの役立たず共めっ!!!!!!!』 全然話しが通じないから腹立たしいったらありゃしない。 これならまだ外国人相手にボディランゲージしてた方が通じるわっ! 『っそうか!ボディランゲージ!身振り手振りで伝えればいいんだっ!』 早速私は行動に出る事にした。 先ずはカゴから這い出して畳に飛び降り何とか着地し、部屋と廊下を遮る襖の前に立ち 『ここを開けておけば出入り自由よね?』 襖の右隅の角を枠に沿って縦横切れば襖の紙が扉代わりになって猫用ドアみたいな使い方出来るよね? って障子の端に切り目を入れようとするも穴すら開かない拳を突き立てても貫通しない。 「佐助、ことりは一体何をしようとしているのであろうか?」 「ん〜…退屈だから遊んでるって感じではなさそうだけど。」 『おのれ紙ごときに舐められてなるも…って濡らせば破りやすいかも?』 う〜んどうしようか?って襖の前に立ち暫く考えた結果。 『当初の目的を忘れてたわ…。』 自力でどうこうしようとしたんじゃなくて、自力でどうにもならないから私は私がやりたい事を伝えようとしていた事を思い出した。 となれば伝える為に先ずは佐助お母さんのトコに近付いて膝によじ登る。 私の様子を見て正座状態で俯っ伏して畳をガシガシやってるゆっきーは取り合えず無視。 口元を押さえ、私から視線を外すようにして斜め下を見てる佐助お母さんも無視して膝から太腿を歩いて渡って正面に到着。 そのままロッククライミング(命綱無し)のように垂直な佐助お母さんの腹を胸をよじ登って 『っ着いた…!』 目的地である佐助お母さんの肩にやっとこさ到着した。 「ずるいでござるよ佐助えぇぇぇぇぇぇぇっ!」 「ずるいとかずるくないとかそういう事じゃないでしょ旦那。」 『そうそうずるいとかずるくないとか今はそれどころじゃないから。佐助お母さん、聞いて?』 「っことり!?」 「ことり!そっ、そっ、そっ、某の肩は必要ないでござるか!?」 だからゆっきー。 今、私ゆっきーと戯れてる場合じゃないから後にしてね?の意味を視線と表情に含めて頷いて見せた。 「必要無い、と!?某は必要ないという事でござるか!?」 うん全っ然伝わらなかった。 まぁいい、今はともかく私の専用ドアを作るのが最優先。 『あのね佐助お母さん。あそこの襖の一番下の角を枠に沿ってちょっと切って欲しいの。』 「何か指差してるけどあっち見ろって事か?」 『そう!あそこ!あそこを…。』 「ここでござるか!?」 『いやそこは違うから。』 「首を振って…つまりここでは無い、と!?」 「だねぇ。ことり、どこを見ろって言ってるんだ?」 『だからあそこだってばっ!』 「…………旦那。」 「…………うむ。」 「一体どこの密偵だろうねぇ。」 「佐助ですら気付かなかった気配を感じ取るとは…ことりはすごいでござる。」 『………………はぁ?』 結局、曲者?の登場でドアを作ってもらうどころか再び籠の中へ強制送還され、 「じゃ旦那、俺様ちょっと様子伺ってくる。」 「うむ。某はことりを安全な場所へ…。」 『いやいやいやそうじゃなくてそうじゃないの何やってんのっ!!!!!』 ”専用ドアを作ってくれませんか?”の一言を伝える事は叶わなかったのだった…。 (意思疎通の難しさを改めて知る。) -------------------- 2010.08.26(08.02) ← □ →