05.見えない真実…は隣のクラス。 えのもとあずさ、7さいです。 パパとママとイヌのヤイバと4にんですんでいます。 はるからしょうがくいちねんせいになってがっこうにかよっています。 でも、パパのしごとのつごうでてんこうすることになりました。 せっかくおともだちもできたのにちょっとかなしいです。 あたらしいがっこうでもおともだちができるといいな。 ───── 子供らしさを前面に押し出した結果がコレなんだよね…。 きょう、あたらしいおともだちができた。 となりのくらすのあゆみちゃんとげんたくんとみつひこくんのさんにんが、あずさのあたらしいおともだち。 さんにんともとなりのくらすなのに、あずさのおともだちになってくれるっていった。 あと、コナンくんとあいちゃんのふたりもおともだちになってくれるようおねがいしてくれるやくそくをした。 はやくふたりにあいたいなぁ。 ───── ひらがなばっかりって書くのも読むのも結構しんどいわ…。 日記を読み返し、一人ごちながら溜め息を吐く私は”榎本 梓7歳、帝丹小学校1年A組に通う小学生”だ。 ちなみにこの日記はママに勧められて書くことになった”あずさにっき”だったりする。 「見られてもいいようにそれっぽく書いたけど…。」 娘が学校に行ってる間に部屋に入り込み、勝手に引き出しを開けて日記を盗み見する両親の為に 書いてると言っても過言ではない日記だからこそ手は抜けない。 「てかSSより時間掛かる日記ってどうなの!?」 榎本梓、元17歳。 趣味は二次創作(妄想)した作品を締め切りギリギリに入稿し、 出来上がった冊子を大型イベントにて販売する事 ────────── じゃなかった。 えのもとあずさ7歳、趣味は創作した小説をネット公開する事です。 と、まぁ前置きはこれくらいにして。 えのもとあずさ7さい、ではない榎本梓17歳な私は、 その日延ばしに延ばしてもらった締め切りにどうにかこうにか間に合った原稿を入稿し、 3日ぶりの睡眠を貪っていた(当然学校はズル休み)。 そして、目が覚めたらなんと!?子供になってましたーアハハ…って笑ってる場合じゃない。 しかもそれだけじゃない、小説やマンガや同人誌やフィギアや衣装だらけだった筈の部屋がピンクまみれの レースまみれの部屋になってましたー…って何の冗談だこれ。 もしかして睡眠を貪りすぎて頭がイカれたのかそれともまだ夢の中?と、頬を抓ったら死ぬほど痛かった。 つまり夢の中じゃない!?何これ!?って慌てて部屋を飛び出して下の部屋に行こうと階段駆け下りる途中で…頭が真っ白になる。 だってウチ、こんな豪邸じゃなかったし。 「何が起こったの!?」 「梓ちゃん自分で起きちゃったの!?ママせっかく起こしに行こうと思ってたのに…。」 「えっ…?」 おまけに、私を起こそうと階段を上がってる最中だったらしいママ?には見覚えがあった。 ───── ちょ…なんで母さんまで若返ってんの!? アルバムにあった若かりし頃の母。 その母が写真よりもずっとお上品な状態で目の前で残念そうな顔をしている。 「どうしたの梓ちゃん?」 「なっ…んでもないよ…ママ。」 「そう?顔色が悪いみたいだけど…やだ梓ちゃんお熱があるみたい!パパっ!ちょっと大変!」 「どうしたママ!?」 てかパパも登場しちゃった…けどパパに見覚えはない。 ウチの母さんはシングルマザーで私は父さんの顔は知らない。 写真の1枚も残ってなかったし。 「梓ちゃんお熱があるみたいなの…。」 「大丈夫だよママ、ほ〜ら梓、パパと診察室に行こうね〜…。」 開業医かよっ!!! って一体何がどうなってんの ──────────────────── !? と、言うのが事の顛末だったりする。 簡単に説明すると、目が覚めたら金持ち開業医のパパとお嬢様ママの子供になってたっていうか。 正確に事態を把握するのが面倒だったもんで今は静観する事にしたっていうか。 ようするに、何か判んないけど子供になっちゃった!しかもイイトコのお子様!って事だ。 ───── 何が悲しくて今更小学生にならなきゃなんないの!? けど、そう頭を抱えたのもまた事実。 私が三度の飯よりも大好きな創作活動の資源になってるあのマンガじゃあるまいし、中身は高校生のまんまで何で小学生なんだ!? 小学生じゃイベント参加出来ないじゃんどうしてくれんのよっ! そして、そう嘆き悲しんだのもまた事実。 ただ、訳の判んない出来事や嘆き悲しみが吹っ飛ぶ事実が私の目の前に振ってきた。 「来週には引越し出来るんですって!楽しみねぇ梓ちゃん!」 ウキウキしながらママが教えてくれた引越し先が私の目を覚まさせた。 「ママ…これどうよむの?(べっ、べっ、べっ…)」 「米花町の事?」 「うん。」 「べいかちょう、っていうのよ?梓ちゃんはお引っ越したら帝丹小学校に通うの。」 米花町の帝丹小学校といえばあーた! 私の愛する(いや違う、愛するのは奴で私はそれを愛でるのが好きであってんでもって…) 私が青春の全てを捧げて作り上げる冊子の元ネタとなる 名作漫画に出てくる地名及び学校名じゃないか!!! 「ねぇママ、あずさ…べいかちょうにいってみたい!がっこうも!」 「お引越しが済んでからじゃなくて?」 「いますぐみてみたいの…ダメ?」 喜ぶのはまだ早い。 確認作業をし、事実を確かめなければ真実は見えない! だからママ、私を今すぐ連れてって! と、子供の特権であるおねだりをフル活用し、梓ちゃんな私にすこぶる甘いママを 上手く懐柔して私は真実を確かめに米花町に向かい ────────── そして。 「ふっ、ふふふふふふふふ…。」 パパにおねだりして買ってもらった新型のノートパソコンを深夜立ち上げ、 頭の中に残ってる作品の全てに手を加え、PC上に作成したファイルに保存していく。 後はレンタルサーバーを借りてアップすれば開設出来る段階にまで持っていったここまでに要した時間は徹夜して一週間。 「ふふふふっ…ふはははははははははははっ!」 イベント参加出来ない身体になったのは悲しいけど、その代償に手に入れたモノはそれ以上に大きなものだった。 だから私悲しくなんかないもんっ! それに、もしかしたら関係者の誰かが偶然発見して何か面白いことになるかもしんないし。 私はそんな些細な野望を胸に、念願のHPを開設するまでに漕ぎ付けたのだった ────────── がっ! 「あはっ、あはははははははははははは!!!!」 ぶっちゃけこんなにも関係者が釣れるのは想定外だった。 裏URL請求メールが届く日々の中、よもやの複数の鈴木園子(HN)さんからURL請求メールが届く。 「っていうか…。」 っていうか、全員が鈴木園子を騙るって一体…。 (HNがHNじゃなかった事実。盲点です。ちなみに鈴木園子さんから来たメール件数は5件ありました…) -------------------- 2010.09.14 ← □ →