序.02


「あのさ一護…。」
「何だ?」

一護と並んで空座高校へ向かう道、アタシは不可解な事に気付き始めていた。
アタシの中に存在する、存在する筈のない物に。

「アタシ、アンタの双子の姉なんだよね?」
「はぁ?お前さ、どうかしたのか?」
「いや、ちょっと夢見が悪くてさ…だから?」
「んだよそれ…。」
「アタシ等さ、今年空座高校に受かったんだよね?でさ?……」

その、不可解な物が存在する事の有り得なさ、けれど存在してしまった事に納得しようと
訝しんだ様子の一護に構うこともなく、一人確認をし続けた。その結果

「ゴメン、やっぱ具合悪いかもしんないから…帰る。」
「おい杏子!?」
「先生には適当に言っといて!」
「一人で大丈夫か?」
「だいじょうぶー!よろしくねー一護っ!」

これ以上、何を聞いてもどうしようもない事を悟り、学校へ向かう途中でUターンし、
一人家に向かう…事も出来ずに近くに見えた公園に入った。

午前8時過ぎの公園、人気は殆ど無く、考え事をするには最適で、
アタシはベンチに腰を降ろし、自分に起きている事を最初から改めて考え直してみた。

「車にぶつかった、のは間違いない筈だし…」

ぼんやり歩いていたからそうなったのかもしれないけれど、あの衝撃は確かな物で、
あれが夢だったとは到底思えない。
その上、あの時アタシは確実に感じた。その先に自分を待つものが【死】である事を。
だとすれば、アタシがいるこの場所は死後の世界?
死後の世界って二次元だったの?

「そんな訳ないし…。」

けれど、それ以上に不可解な事は。

「何でアタシの中に”黒崎杏子”の記憶がある訳?」

アタシが、として生きてきた2×年間の記憶は間違いなく存在し、それがアタシの全てだというのに、
そんなアタシの中に黒崎杏子の15年間の記憶までもが存在していた。
妄想にありがちな、入れ替わり?とは思えない、全てを夢と片付けるにはハッキリすぎる記憶として、
確かなアタシの記憶としてそれは存在する。
そして、BLEACHという漫画の知識もアタシの中にある。

「こんな事になるなら…」

夢小説とか避けてないで読んでおけばよかった。
じ ゃ な く て !!
この現状は理解できた。出来たけれど果たして

「受入れていいの?これって?」

後付されてしまったアタシという、黒崎杏子のこれからはどうなるのだろうか?
受入れるとして、受入れたらアタシはどうすればいい?
アタシが存在しているこの世界の、今後にどう対応すればいい?

「ヤバイよなぁ絶対…」

よりによって、主人公の姉とか絶対関わりを避けられない立場だなんて。
何も知らなければ流れに乗ってしまえば済むかもしれないけれど。

「バッチリ覚えちゃってるもんなぁ…」

知っている以上、関わりから逃れる事は出来ない気がする。
けれど関わってしまっては変わってしまう可能性がある、この先の未来が。

「どうにかなるんじゃね?なぁんてね…」

本当に、どうにかなるだろう。で、片付けるには、アタシの読んだ内容はアレ過ぎる。

「や、まてよ…。」

確かに知識とかイロイロあるかもしれない。けれど!

「二次元扱いするからマズイ?」

アタシは死んだ。それだけは断言できる。
だとすれば、ここはアタシにとって現実に存在するアタシの生きる世界。

「二度目の人生を生きる世界なんだから…二次元じゃない!そうよそれよ!」

そう、片付ける以外ない。ぶっちゃけ小難しく考えるのが 
非 常 に 面 倒 に な っ て き た。

「アタシは杏子だけど、でもあるんだから仕方ないよね?」

そして、アタシがアタシである以上は答えは1つしかない。
開 き 直 り が 一 番 だ 。(持論)

「せめて、怪我だけはしないようにしないと…」

そう結論付け、そしてふと思いついた事に胸躍らせる。

「もしかして生で見れる!?ヤバイヤバイ生で浦一が見れるかもしんないいいいいいいっ!」

、改め黒崎杏子として生きる決意をしたアタシは、
やはりどうしてここでも根っからの腐属性である、と自分の言葉に思い知る。
(ちなみに推奨CPは浦一だったりする…。)
そして、若返ってる事にちょっとニヤリした事は一応伏せておいていいかしら……。





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008.08.15



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