本.26


浦原商店で覚悟を決めた日。
あの日アタシは全てを話し、この世界でこの世界の人間として生きる覚悟を決めた。
けれどそれは自分一人で成せる事ではなく、全てを知った上で尚、
アタシを認めてくれる存在があってこそ成せた事だった。

─── アナタの居場所はアタシが作ります。アタナはアタシを目印に帰ってくればいい。

あの言葉が全てだった。
あの言葉でアタシは確かに救われ、アタシはここに居ていいのだ、そう思えた。
だからアタシはこの世界で年を重ね、老いていくだろう。生まれた世界ではない、
偶然辿り着いた先に在ったアタシを受け入れてくれたこの世界で自分に出来る事を模索し、
自分の中に知識として存在する運命という名の流れに抗いながら。

そして、そんな風に素直に全てを受け入れる事が出来るようになってから数日後。

「来たのか…。」

一護にとって最初の試練になるだろう二人の死神が現れたのだった。










深夜2時を過ぎた頃、突然家の中から一護の気配が消えた。
全てを受け入れ、覚悟も決めて腹も括ったアタシだったけれど、性分ってのは変えようがなく。

─── 虚でも出た…?

と、たまたま偶然うっすら目が覚めたからそれに気がついた。
けれど、まぁいつもの事だしその内帰ってくるだろう、と安易に考えていて。

─── 結構近くに居るぽい…?

感じ取れる一護の霊圧を探り、
嗚呼あの辺りで頑張ってるんだ虚は2体居るんだ…って思った瞬間思い出して飛び起きた。

「やっば!そういやルキアの気配無かった…って事はつまり…」

ルキアが姿を消し、深夜に一護が飛び出して行ったという事はつまり迎えのあの二人が現れたという事で。

「で?」

アタシはどうすればいいんだろうか?否、どうしたいのだろうか?
夕食前辺りからルキアの気配が無かった事で気付くべきだった。と感じながらも、
それに気付いたアタシは果たしてその段階で何かしらの行動を起こしただろうか?とも考える。
覚悟は決めた。けれどそれが即行動に繋がらないのは所詮性分というヤツか。
それとも、単に未だ迷っているだけなのか。

「迷ってても仕方ないんだよなぁ…。」

けれど、ポツリ零れた呟きこそが答えなんだろう。
今ここで頭抱えて迷ってても仕方ないのは明白だった。
単にアタシはアタシに何が出来るのだろうか?を言い訳にアタシは何がしたいのか?を考えないようにしているだけ。

「思いつきで行き当たりばったりで行動する結構能天気なタイプだったんだけどなぁ…。」

今から向かったところで、アタシに出来る事など何もないだろう。

「それでも…行かないとね。」

もし間に合うのなら彼女に一言、伝えたかった。
怖がらなくてもいい、心配しなくてもいい。必ず一護が迎えに行くから…と。



んがっ!



気付くべきだった思い出すべきだったっつーか何で忘れてたんだ!?
かつてアタシが能天気に行動した結果ロクな事がなかった。という現実を。





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2009.05.20