本.37 「で?どうしたらいいのよっ!」 「、お前が落ち着かずしてどないすんねん!」 「なんで真ちゃんそんなに落ち着いてんのよっ!喜助さんに言いつけてやるっ!」 「おおおおおおおおおおおおいぃっ!?」 「まままっまてっ!絶対どないかしたるさかいとにかく落ち着けっ!」 「ひよ里ちゃんは何でそんなに慌ててんの?」 「それはね〜ひよりんが〜怖いからだよね〜!」 「うっうっさいっ!」 「ともかくやっ!アイツに頼んのは最終兵器や。」 そこは普通、兵器じゃなくて手段じゃないのか?っていう疑問はともかく。 そこまで慌てるには多分、海溝よりも深い理由が在るに違いない。っていうか、 不用意に最終兵器の名前を出してこれ以上落ち着きが無くなったら大事だし。 『どうしたらいいの?』 ─── 何をだ? 『虚化が解けないんだけど。』 ─── 時間が解決してくれますよ? 『…………………。』 だから、何でアタシの回りにはこんなんばっか…。 「もーやだあぁぁぁぁぁぁっ!」 「っ!?」 「どどどどどどどないしたっ!?襲撃かっ!?」 「ちゃん落ち着かないと〜ねっ?」 「だって…時間が解決してくれますよ?ってはんなり微笑んで首傾げられて応えられてアタシにどーしろっていうのよぉぉぉぉっ!」 「どないな斬魄刀やねんそれ…。」 「え〜!?何か可愛いっぽい〜!!」 「カンちゃんもアッちゃんもキライだあぁぁぁぁぁぁっ…。」 アタシの為なのか何なのかは全然理解出来ないけど、あまりの酷い仕打ち(?)に絶叫したアタシ。 その瞬間だった。テンパって叫んで頭抱えてたアタシですら敏感に感じた回りの変化。 その変化に、抱えた頭を上げてみれば皆一様に驚いた表情っていうか引きつってるっていうか、 愕然としてたり呆然としてたり十人十色? 「あっ…あのぉ?」 「。」 「っはい?」 特に、真ちゃんが微妙に米神の辺りをヒク付かせてアタシを見下ろしてる形相がちょっと怖かった。 「カンちゃんとアッちゃんて何や?」 「えーっと、一護で言うところの斬月…みたいな?」 「ほな何か?お前の斬魄刀は二本一対なんか?」 「違うよ?アタシの斬魄刀は一つだけだし。」 一つじゃ悪い?って意味合いで、真ちゃんを睨み返そう ───── として失敗した。 その”一つ”って言葉に激しく反応した真ちゃんはその三白眼(?)をさらに細め 「もっぺん聞くで?お前の斬魄刀は何本や?」 地を這うようなおどろおどろしい声でそう言って 「いっ…一本です…。」 そう応えたアタシに 「そういう大事な事は先に言わんかいこのドアホがっ!!!」 ペペペッと唾を飛ばしながら、罵声を盛大に浴びせてくれたのでした。 何でアタシが怒鳴られなきゃならないの?って不満タラタラ…否、ダラッダラに垂れ流して 思いっきり不貞腐れた顔で真ちゃんを睨み、絶対後で喜助さんに告げ口してやる!って心に誓った後。 一応言い訳だけは聞いてやろうと思って 「何でそんなに怒る訳!?」 睨んだままプンスカしてたんだけど、どうやら怒ってるのは真ちゃんだけじゃないみたいで、 流石に空気を読んで睨むのだけはやめてみた。すると 「ったくなぁ…喜助は何も言わんかったんか。」 「何も…ってどういう意味?」 「ええか?」 真ちゃんは困ったように頭を掻き、アタシの前にしゃがみ込むと理解出来てないアタシに説明してくれた。 アタシの斬魄刀が如何に特殊であるか?を。 「ええか?普通は斬魄刀の名前は幾つや?」 「一つ。」 「せや。なら二対一本の斬魄刀ならどうや?」 「京楽さんとか浮竹さんのみたいに?」 「ああ。」 「えーっと…確か。」 花天狂骨と双魚理だっけ? 「二本で一つだから名前も一つ?」 「判っとるやないか。けどな?お前のはちゃうねん。」 「一本なのに名前が二つ。」 「せや。京楽と浮竹の斬魄刀は二本で一つ、どういう意味か判るか?」 「二対で一本でしょ?」 「ほなお前のはどない説明すんのや。」 「アタシのは…一本で二つとしか言いようが…ない?」 「お前そこまで判ってて何でその後が判らんねん!アホかっ!?」 アホアホ連呼されても判らないものは判らない。 二対一本と、名前が二つあるだけの斬魄刀とどう違うっていうのだろうか。 「ええか?二対一本の斬魄刀は稀なケースや。尸魂界にはあの二本しか存在せーへん。」 「それは知ってるけど…。」 「二対一本っちゅーのは二つで一本、いう意味や。」 「だから判ってるって。」 「割り箸みたいなもんや。」 「へ?割り箸?」 「二本あって斬魄刀として成り立ってるっちゅーこっちゃ。片方だけやったら斬魄刀にもならへん。」 「だから二対なんでしょ?」 「二本やから?そら普通の斬魄刀よりは勝ってるやろ。けど所詮は二つで一つや。」 「うん、判ってる。」 「けどお前のは違う。まるっとその逆 ───── みたいなもんや。」 「っどういう意味?」 「斬魄刀は一本やのに名前は二つ。つまり一本しかあらへん斬魄刀を二本持ってるっちゅーこっちゃ。」 「イマイチ意味が…。」 「二対やない。二本や。サルでも判るように説明するとしたら、喜助の持つ斬魄刀は紅姫と斬月の二本や、っちゅー感じや。」 それはつまり、名前の数だけ斬魄刀を所持してるって事? 一つの斬魄刀に名前が二つあるんじゃなくて、二つの斬魄刀が一つになってるっていう事なんだろうか? 「カンちゃんとアッちゃんやったか。能力は完全に別やろ。」 「うん。」 「要するに、お前は一人で贅沢にも斬魄刀二本所持しとるようなもんや。」 「それは理解できたと思うんだけど、それと虚化とどう関係すんの?」 「霊力と斬魄刀の大きさが比例してるのは知ってるな?」 「うん。だから一護の斬月は大きいんでしょ?」 「けど本人の意思で縮小化できるのも知ってるな?」 「知ってる。」 「お前はそれを無意識にやっとる。一護並み ───── いや、下手すりゃそれ以上の霊力持ってるんかもしれん。」 「だからそれがどうしたっていうの?」 「おまけに持ってる斬魄刀は一本で二本分。それをを一本に収めてみぃ。」 「収まってるけど?」 「収めすぎや!言うてんねや。虚化の保持時間も霊圧に比例しとる。」 「で?」 「何でここまで言うて理解出来んのやその頭はっ!お前の脳ミソはオガクズ入ってんのか!?」 「そこまで言う事ないじゃん!」 「腐る程霊圧持ってる。けどそれを役に立たんようにしか使えてない。つまりや!」 「つまり?」 「最大量を100としよか?それを0.000001ずつ出したとして100出し切るまでにどんだけ時間喰う思ってんねん。」 えーっと100割る0.000001すればいいのかしら。 「一億?」 「せや。お前、一億持ってたとせぇ。毎日一円づつ使て一億使い切るに何日掛かる?」 「一億日?」 「そんな感じや。」 急に大雑把になったよね、真ちゃん…。 「とりあえず霊圧カラになったら解けるやろ、虚化。」 「なんだ。なら空になるの待てばいいだけじゃん。ってどんだけ掛かるの!?」 「せやから言うてるやろ!お前はなんで暢気なんや!て!!」 「そんな事言ってない!どどどどどどどどどおすんのよっ!」 「せやからどないしたらええか判らんて皆慌ててんのやないかっ!」 「死ぬまでこのまま?じょじょじょじょ冗談じゃないわよっ!?」 「!落ち着け!」 「何で真ちゃん落ち着いてんの!?どうしてくれんのよっ!」 「せ、せやからな?」 「うわぁぁぁぁん!このままじゃお嫁にも行けないぃぃぃぃっ!」 この時点でアタシの頭の中からカンちゃんとアッちゃんの事は抜け落ち、 こんなお面被ったまま一生過ごさなければならないかもしれない、という乙女には屈辱以外の何物でもない状況に 当然アタシはそれまで以上のパニックに陥る。おまけに誰一人としてアタシの虚化を解く方法も思い浮かばないという 不運極まりない事態に見舞われたアタシ達は、というと。 「もうさぁ〜諦めて聞けばいいじゃん。最終兵器にさ?」 「誰が聞くんや?」 「さぁ?」 「さぁ?やあるかい!ましろ、お前電話出来るんか?このの状況を喜助に報告できるんか!?」 「死んでもヤダ。」 「偶然やな、オレもや。」 「に電話させればいいんじゃないのか?」 「っそれや!こうなったらに泣き脅させたらええねん。自分で勝手にやってこうなったて…。」 何て奴等だ。この期に及んでアタシ一人に罪着せようっての!? アタシは今、もしかしたら一生をこの姿で過ごさなきゃならないかも?って恐怖と一人戦ってるっていうのに 涙堪えて頑張ってるっていうのにそれなのにっ!どいつもコイツも自己保身ばっか考えやがってぇぇぇぇぇぇ! 「、お前には悪い思う ───── けど喜助にはこうやって電話してくれへんか?」 「ひよ里ちゃん…。」 「すまん思ってる。けどっ…こっちも命掛かってんねん。」 「うん…。」 「今からハッチが結界張る。で、そこに隠れるさかいに…。」 「っそこまでしなくてもよくない?」 「、うちらの事キライか?」 「そんな事ないっ!」 「ほな、笑って見送ってくれへんか?」 「判ったよ…。」 って何処行くつもりなんだひよ里ちゃん達。 「厳っ重に結界張った中にひっそり隠れるさかい、そしたら…電話せぇ。」 「何て?」 「喜助さんっ!アタシどうしたらいいか判らないっ助けてっ!って涙ながらに訴えるように言うだけ言うたら電話切れ。」 「………………。」 「っそんな目で見てもアカン!こっちかて命掛かってんねんそれ位してくれてもええやろ?」 「判った。なら今から電話していい?」 「まてまてまてまてまて!結界張るのが先や!」 と、説明担当:ひよ里、ちゃんの説明が終了した後、指示担当:真ちゃんの素早い指示の元、 核実験でもあんのか?って言いたくなる程厳重な結界が地下の一角に張り巡らされ。 「よっしゃ。ほな逝ってええで?」 「そこ!字が違う!!」 この状況でボケを忘れない真ちゃんに、絶対復讐してやる!と心に誓い。 『もしもし。』 「っ喜助さん?」 『サン?どうかしたんスか?』 「っ助けて…。」 『サ…』 「アタシっ…も…どうしていいかっ…お願いっ!」 『今直ぐ行きます。』 事前の打ち合わせ通りの台詞で喜助さんに連絡を取った。 ちなみに、言うだけ言って切る予定だった電話は一方的に切られた。 そ し て 「どういう事か…説明してもらいましょうか。」 5分も経たない内に、アタシの待つダダっ広い場所ではなく何故か結界内に突如現れた喜助さんの 迅速かつ素早い捕獲作業に、一網打尽? 見事全員綺麗に簀巻きにされたのでした(アタシは除く)。 -------------------- 2009.08.19 ← □ →