本.41 「これはっ…っまさか婚約指輪!?」 「誰と誰のっスか。」 「喜助さんと一護のに決まっ…。」 「聞えませんが?」 卓袱台に置かれた小さな箱に入った2つのリング。 アタシはてっきり一護と喜助さんとの婚約指輪だと思ったが、この怒りっぷりからするとハズレなんだろう。(ちょっと残念) 「いい加減そういう妄想は勘弁してもらえませんか?アタシは男性にどうこうしたいなんてこれっぽっちも思ってませんから。」 「そうなの!?一回も妄想もした事ないのっ!?」 「一回もありませんよ。」 「どうこうしたい!がない…ってまさかっ!?」 どうこうされる妄想なら!? 「お願いですからそういう妄想をダダ漏れにしないで下さい。」 「ゴメンナサイ…。」 だって妄想したくなる要素しかないんだもん。 「説明させてもらってもいいっスか?」 「ハイ、オネガイシマス。」 とはいえ、これ以上妄想世界にいたら本気で嫌われ兼ねないし、真面目に真面目に。 「一つはサンが。そしてもう一つを夜一サンに付けてもらいます。」 「じゃこれアタシと夜一さんの婚約指輪なのっ!?」 「簡単に説明すると、一方が送信機で一方が受信機になってましてね。」 「(うわぁ完全にスルーされたよ…。)」 「尸魂界へ行くメンツで最も霊圧を余らせてる夜一サンから少々それを分けて頂く事にしました。」 「一護じゃダメなの?」 っていうか、霊圧ならアタシにもあるんじゃなかったっけ?何で自分のじゃダメなんだろうか。 ───── 近しい霊圧は相殺されるからな。役に立たん。 『そうなの!?』 ───── ええ。下手をすればあちらに吸収されかねませんから。 そんな設定あったっけか? ───── 裏設定ってヤツだ。 『ありえないからそれ。』 ───── 他にもありますよ?教えましょうか? 『いらないからっ!』 裏設定とか何言い出してんだよコイツ等は。 そりゃ裏設定とかあるかもしんないけど何でアンタ等が知ってんだよっ!!! ───── 情報通だからな。 ───── 情報収集を怠る者は負け組みですよ。 『 ……………。』 もう深く考えるのは止めよう。そう決めて、溜め息をつくのも諦めて改めて喜助さんを見る ───── と アタシを見て苦笑してた。うんもう読まれてるね会話の内容も。 「夜一サンの霊圧なら有り余ってますので安心して頂けますから。」 「それは判ったけど、それでどうなるの?」 「簡単っス。頂いた霊圧をそのリングで体力に変換して使用するだけの事っス。」 なるほどそりゃ楽チンだな!って一瞬は素直に喜んだけど。 それってもしかしてもしかするとやっぱりそうだよね? 「これって…。」 「サンが平子サンの所に行った夜に作らせてもらいましたが?」 「うっ、うわぁすごーい…。」 「棒読みっスね。」 ───── やっぱり迷惑掛けまくってるなぁ。 そう思うとやっぱり凹む。アタシはどんだけ遠回りすれば気が済むんだろう。 それどころか迷惑掛けまくりで呆れられても仕方ないってのに喜助さんも真ちゃんやひよりちゃんや、 事情を知って気付いてる筈の誰もが笑って許してくれて。 「迷惑を掛けるのはアタシの方っス。」 「それは違う!」 「いいえ、元はといえばアタシが…。」 「ごめん。もう言わないからそういう言い方は勘弁してください。」 喜助さんは何も悪くない。責めるべきは他にあって、喜助さんに自分を責めるような真似はさせちゃいけない。 アタシはそうさせたくなくて、信用するって決めて全てを曝け出したのだから 「もっとちゃんと、言うようにする。ちゃんと遠慮せず頼る!でいいんだよね?」 「サン………。」 巻き込んで巻き込まれて、それでいいって決めたんだから遠慮は絶対しちゃいけない。 ちゃんと向き合って、ちゃんと言葉を口にして伝えなきゃ何も始まらないから絶対だ。 「ありがとう喜助さん。ちょっと空回りしすぎてたから今度からはちゃんと相談する!」 「そうして下さい。じゃないとアタシの立場ってもんが無くなりますから。」 ───── うん、これでいい。 これでいい。アタシだけじゃどう頑張ったってどうにも出来ないし、 どうにも出来ない事をどうにかする為に浦原喜助という人を信じる事を自分で決めたんだから。 「けれど、それとこれと平子サン達を頼った事は別問題っス。それに関しては追々話し合いを…。」 マジっすか!?いやいやもうそれは終わった過去の事ですし?って言えたらどんだけ良かったか。 どうやら喜助さんはその件をキッチリ済ませるつもりらしい。どっ、どうしよう……。 そして、アタシが尸魂界へ行く手段を手にした翌日の深夜。 同行メンバー宅を怪奇現象が襲う事となり、 「まるっきりホ…。」 「一護それ以上言うと凹むから止めとこう。」 「……………。」 「んじゃ行こうか。」 「お前本気なのかよっ!」 「当たり前でしょーがっ!何の為に特訓したと思ってんの?」 「だから絶対ムリに決まっ…。」 「だから絶対ムリって勝手に決めるなって言ってんのっ!」 浦原商店に辿り着くまで延々一護と言い争いし続け、 「絶対に無茶すんじゃねーぞ!?」 「それはこっちの台詞だから!!!!!」 穿界門の前に辿り着いて、渋々ながらも一護を納得させる事に成功した。 こうしてアタシは一護、チャド、石田、織姫と共に夜一さんの先導で尸魂界へルキアを救出すべく突入するのだった。 -------------------- 2010.01.30 ← □ →