本.42 追いかけてくる拘流の壁に囚われないよう、飲み込まれないよう必死で走る。 振り返る暇があるなら一歩でも前へ進めと夜一さんに叱咤されながら必死に。 もちろんその中にアタシも含まれていて、皆から遅れないよう皆と一緒に走っていたけれど、 実際のとこ心中は複雑だった。 ───── 何だかなぁ…。 い や ホ ン ト 。 だって今の状況に辿り着くまでの必死の努力が物の見事に無駄に 終わってるんだもん ────────── って言ってる場合じゃないし、 成果は無かったけど努力は確かにアタシの身となり力となったけれどそれとこれとはまた別問題。 こんなに楽勝に、遅れを取る事も無く息を乱す事もなく走ってるという事実は、解っていたとはいえちょっと切ない。 ───── 自信満々だったもんなぁ喜助さん。 この結果を体感し、ドヤ顔をしてた喜助さんの態度に改めて納得しつつ ───── しかしすんごいな、これ。全然楽勝過ぎ!? 拘突に追い掛けられて皆が慌てる中一人平然と走れてる事に本っ当に感謝して 「私は…拒絶するっ!!」 織姫の三天結盾のお陰で誰一人怪我する事なく尸魂界に辿り着いたのだった ──────────────────── が。 夜一さんの制止虚しくやる気満々の一護が早速瀞霊門へ突っ込むわそれを追ってチャドも織姫も走り出すわで ───── アホかーーーーーーーっ!バカ一護ぉぉぉぉぉぉっ! 怒り心頭の夜一さんの横で頭を抱えるしかなかった。 それが、解っていた事とはいえ目の前でやらかされると夜一さんの心中をお察ししますっていうか、もうね。 「ぬ゛う゛ん!!」 おまけに頭抱えて座り込んでる間に瀞霊門開いちゃったしどうすんのコレ!? しかもこの先に居るのが誰か解ってるから門前には行きたくないし行かない方がいいだろうし近付くつもりは無かったし? っていうか出発前に念押しされたんだよね。”あの人には絶対近付かないで下さいよ?”って。 何で?って聞こうとして”な…”で言葉詰まらせたのはもう条件反射っていうか慣れって怖い。 とりあえず今はそんな事思い出して震え上がってる場合じゃない。前に出過ぎず下がってよう そうすりゃ顔合わさないで済むから ────────── ってアタシは頑張ってたのに。 またも一護によって邪魔された。神槍によって思いっきり門内から門外へと突き出された一護。 その身体は何故かアタシへ一直線へと飛んできてアタシをマットに無事着地しやがった。 「ちょおっ ────────── ぐえっ…。」 当然アタシはカエルが潰された瞬間の擬音を口から発せざるを得なくなりその結果、 閉じられようとする門からこちらを覗き込み 「バイバ ───── イ…ってちゃん!?」 手を降るギンちゃんに見事発見されてしまったどうしてくれようかこの愚弟めがっ!! 幸い、意識を半分飛ばしてたっぽい一護は気付かれなかった。 けれどこれでもしギンちゃんの言葉を一護が聞いてた場合言い訳とか説明とかしなきゃならなくなる上に、 全てが終わって現世に帰った時、それが喜助さんの耳に入りでもしたら…と思うとマットになっととはいえ、 不幸中の幸いだったかもしれないそう思わなきゃやってられんわっ!!!!! その頃の現世。 『 ────────── ぐえっ…。』 『 バ ──── イ ────── ちゃ…?』 ────────────────────────────── あれ程注意したというのにこのザマっスか。(傍受中) -------------------- 2010.02.19 ← □ →