本.45


バカ一護の派手な行動のお陰で再び追われる事になったアタシ達。
これ以上悩んでても仕方ないっていうか、考えた所で全部無駄になると悟った今、アタシが取る道は一つしかない。

「いっ、一護っ……。」
「どうした杏子!?」
「あっ、アタシもうダメ…。」
「大丈夫かっ!?」
「これ以上一護に付き合ってたら身体が持たないから離脱するわ。」
「何だよ意味解んねぇよそれっ!」
「オイオイこの状況でキョウダイ喧嘩かぁ?余裕あんなぁお前ら。」

このバカ岩鷲っ!余裕ないから喧嘩してんでしょうがっ!

「ともかくこれ以上一緒に居ても付いてけないから!んじゃ!!」
「ちょ!杏子っ!?」
「一護っ!急がねぇと追いつかれんぞっ!」
「クソっ!!!」

曲がり角が左右に分かれる分岐点。
アタシは追ってくる死神達の目を盗み、最後の力を振り絞ってバレないよう一護達と逆へ曲がった。
そこで、喚く一護と一護を引っ張る岩鷲に手を振って別れを告げ

「これ以上走らされたら冗談抜きで口から腸が出るとこだったわ…。」

気持ちと内臓が落ち着きを取り戻した事に感謝した。いやホント、良かったわ。

「さて…どうするかなぁ。」

そして辺りの気配を探り、誰にも見つからないよう注意しながら身を隠せそうな場所を探して移動しながら
見つけた建物の隙間に身を潜め、一護の霊圧を追って近くに来てるチャドの霊圧を感じ取った。

「このまま待ってればチャドと合流できるけど……。」

けれどチャドと合流したところでお荷物になるのは火を見るより明らかだ。
夜一さんと一緒に居ないと歩いて移動するのがやっとな状況で、その夜一さん以外の誰かと行動するのはまさに愚の骨頂。

「そうなると、やっぱ夜一さん探すのが一番だよね…。」

建物の隙間に身を潜めて考える事暫く。
アタシはやっとこれからの自分の行動を決めた。
落ち着いて冷静になって、目を閉じて心落ち着かせて夜一さんの霊圧を探す。

「やっぱりあっちか…。」

修練場だっけか?喜助さんちの地下にある勉強部屋の元になった場所。
双極の丘がある方向だか何だかよく解らないけどたしかそっち方面にあって、
遠くに見える双極の丘方面に移動してる夜一さんの霊圧を僅かだけど確かに感じた。

「行くかぁ。」

この際、修練場に一護が拉致されて来た時にアタシが居ても問題ないって事で納得して。

「先ずは…アレだよね。」

石田と織姫が使ったあの手を使わせてもらおうと、女性の死神を探し ──────────────────── たんだけど。
標的を決めて探し始めた途端、全然見つからない標的。
アタシは本当に死神から死装覇を奪えるの?っていうかそれ以前に。

「相手が女だとしても何かやだなぁ脱ぎたて脱がしたてホカホカの他人の服着るの。」

他人が今の今まで来てた生暖かい服を脱がして着るのに抵抗を感じる。
そんな事言ってる場合じゃないのは十分理解してるけど、考えれば考えるほど嫌になってきた。

「どっかに入り込んで脱ぎたてじゃないの探してみるか…。」

標的も見つからない事だし、どこかを探せば脱ぎたてじゃない死装覇の一枚や二枚あるだろう!と
アタシは気配を殺し(霊圧をこれでもかって位消し)て移動を開始したのだった。

そして誰にも見つかる事無く壁沿いを歩き続け、見つけた裏木戸みたいな扉を発見したアタシ。
そっと扉を開け、中の様子を伺って身体を中に忍び込ませて発見した。
建物を囲ってる壁じゃなくて建物の壁にぽっかり開いた謎の穴を。

「何で…壁に穴!?」

故意に開けた穴とは思えないそれに違和感を覚えたけど、ここから中の様子を伺えばタンスの1つや2つ見つかるかもしれない。
背伸びすれば何とか中を覗き込めるその穴に手を掛け、限界まで背伸びして

「お前……………何やってんだそこで。」
「えっ、えーっと…?」
「…………………………。」
「…………………………。」

ベットに横たわる一角を発見したのだった。

───── ここ四番隊隊舎だったのかあぁぁぁっ!










「でさ?もうアタシ付いてくのヤんなって…。」
「そりゃ仕方ねぇな!」

そして、壁を挟んで一角となごやかに談笑してる場合じゃないけどつい話し込んでしまう。
だって”何かあったのか?”って一角が聞いてくれたもんだから此処に来るまでの事をちょっと説明したらもう
口が止まらなくなってぶっちゃけてしまった。

「でもよ?こんな場所ウロついてる場合じゃねぇだろ。見つかったらどうするつもりなんだ?」

オマケにアタシの心配までしてくれるなんて、ホントさっきはごめんねつるりん呼ばわりして。

「あの…厚かましいお願いだとは思うんだけどお願いしていい?」
「一応聞くだけは聞いてやるぜ。」
「死装覇貸して欲しいなぁって。あ、でも一角の脱ぎたてホカホカじゃないやつね?」
「ま、それ位なら構わねぇけど何で俺のじゃダメなんだ。」
「脱ぎたてじゃなかったら一角のでもいいよ?」
「そりゃ残念だ。脱ぎたてならほらそこにあんだけどよ…。」
「凄く魅力的だけどヤだ。脱ぎたてはヤだ。それ以前にアレ血だらけボロボロじゃない。」
「そうかよ…。」

脱ぎたて断固反対!と言い張るアタシに折れてくれた一角。

「ありがと一角!助かる〜!!」
「ま、見つからないよう気を付けんだな。」
「気を付ける〜!じゃ、ホントありがとね!」
「ああ。」

人を呼び、十一番隊にあるらしい一角のお古だけど脱ぎたてじゃない死装覇一式をお取り寄せしてくれた。(オプション:風呂敷)
こうしてアタシはねんがんのしはくしょうをてにいれたぞ!

















その頃の現世。

カチャリカチャカチャ
ゴンゴン
カチャリッ

「…………………………。」(今だ破壊した盗聴受信機を修理中)





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2010.03.11