本.49


『サンを頼みます。』

そう言って儂に頭を下げた喜助。
素直な性格をしとらんあやつが儂に頭を下げる事自体珍しい事なんじゃが、
それはを大切に思うが故 ────────── と思えば解らん事でもない。

『儂を誰だと思っておる!』

だから儂は”任せろ!”と胸を叩き、約束通り尸魂界では儂がを面倒見るつもりでおった。
が!事はそうそう上手く運ぶものではない。
瀞霊廷に突入直後、儂はあっけなくと逸れて単独行動を余儀なくされた。

「困ったもんじゃ…さて、どうするかのぉ。」

霊圧を探ればは一護達と行動を共にしておるようで、暫くは安心しておったんじゃが

「逸れたのか?」

一護達と一緒に移動しておったの霊圧が単独行動を始めた。
儂が離れてしまった事で運動能力は限られたの移動はゆっくりとしたもので追うのは容易く

「あそこか…。」

儂は直ぐにを見つけることが出来た ────────── のじゃが。

───── あれはマズイ…。

喜助が最も恐れていた事態に陥ったらしいは市丸ギンと行動を共にしておった。
儂はの身を案じ、付かず離れずの距離を保って様子を伺ったのじゃが。

「あれは完全に…忘れておるようじゃ。」

は尸魂界へ行く直前、喜助から念押しされておった。
市丸ギンには気をつけろ、市丸ギンには近付くな、市丸ギンには見つかるな…と。
側で聞いておった儂がそのしつこさに思わず耳を塞いだ程、喜助の市丸ギンへの拘りは執念すら感じた。
現に当人であるは念押しが終わった後、生気を抜かれた抜け殻のようにぐったりとしておった筈じゃが…

「困った奴じゃのぉあやつも…。」

よもや儂の指輪に超高性能盗聴機能が付いているとは思うまい。
1Kmを離れてしまえば儂からの力の恩恵は受けられん。
じゃが盗聴機能は3Km圏内で受信するというタチの悪い高性能じゃ。
に同情する儂はせめて会話だけは筒抜けにならんよう3Kmを保ち様子を伺い続けたんじゃがまさかあんな事になるとはのぉ…。





「夜一サン、ご苦労様っス。」
「そっちはどうじゃ?」
「普通っスよ。深夜に手を繋いで歩いてくれるような相手、アタシには居ませんしねぇ…。」
「(何故知っておる!?)」
「ああそう言い忘れてました。盗聴機能は3Km圏内ではなく5km圏内なんスよ。」
「(筒抜けじゃったか…すまん。)」
「サンの事…。」
「わっ、解っておる!儂に任せろ。」
「ならいいんス。」
「(怖い…怖すぎるぞ喜助!)」





と合流する直前、儂が知った恐怖の事実がそれじゃ。
とはいえ映像まで送れる機能が付いてなかった事は不幸中の幸いじゃろう…。





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2010.04.25