本.51


夜一さんと合流した翌日、アタシは再び一護と合流した。
当然一護はアタシの顔を見るなりお前は小姑か!?って勢いで愚痴り始めたんだけど。

「杏子!?何でお前がこんなトコにいんだよっ!」
「こんなトコ…ってねぇ、ここがあるからアンタはこうして鍛え直しが出来るんでしょーがっ!」
「そりゃそうだけ…ってそうじゃねぇ!お前今までどこほっつき歩いてたんだよ俺がどれだけ心配したかっ!」
「へいへい…。」
「杏子っ!」
「悪かったわよっ!」
「喧嘩している暇があると思っておるのかっ!」
「「っすいません…。」」

夜一さんに一喝され、二人揃って縮こまり

「(バカ一護の所為で怒られたじゃないのっ!)」
「(杏子が悪いんだろっ!いきなり一人でどっか行きやがって!)」
「(アタシがアンタらに付いてける訳ないでしょ考えれば判るじゃない!)」
「(んな心配する必要ねぇだろ!)」
「貴様等の耳は飾りなのか…?」

縮こまりながらこっそり喧嘩を続けた結果

「「痛ったあぁぁぁぁぁぁ!」」

夜一さんから強烈な拳を後頭部に頂戴し、その強烈な痛みにアタシと一護は地面に崩れ落ちた。
その痛みたるや『剣八なんか目じゃねぇ!』って一護に言わせた程のもので

「っ頑張ろうね一護…。」
「っおう…。」
───── 夜一さんは怒らせないようにしよう。
───── ああ、次殴られたら頭蓋骨が砕けちまう…。
───── うん…。

アタシと一護は涙を滲ませながら、これからの3日を共に戦う事を堅く誓ったのだった。

そして、一護の卍解特訓がついに始まる。
特訓開始一日目、転神体によって具現化した斬月が登場して一護との斬り合いをおっぱじめた。

「、お主どう見る?」
「どう…って何を?」
「一護は間に合うと思うか?」

捻じ伏せられ膝を着いては再び立ち上がる一護の必死な様子に、夜一さんは静かにアタシに問う。

「それは一護が言った通りだと思う。間に合うかどうか?じゃなくてこれしかないんだから一護はやるよ。」
「そうか…。」

実際、一護はやり遂げた。
卍解を修得し、白哉との戦いに勝利して ────────── あの男の前に立つ。

「けど……。」
「何じゃ?不安でもあるのか?」
「いや、こうやって見てるだけって恐ろしく退屈だなぁ…って。」
「お前というヤツは………!」
「だって見てるだけで何も出来ないし。」
「儂もお前も手伝う事は出来ん。こうやって一護を見守り信じる他ないんじゃ…。」
「あんまり遠くに行って欲しくないなぁ…。」

判っていても、アタシはどこか寂しさを感じていた。
一護がアタシに対して同じ事を思ってるなんて事に気付きもしないで ────────── 。



そして特訓開始二日目。

「俺もまぜろよ。」

僅かな霊圧を追って恋次は現れた。
”ルキアの処刑時刻が変更になった”事実を持って。
当然その発言が一護と夜一さんに衝撃を与える事になったけれど、アタシにとっては違う意味での衝撃が待っていた。

「っつうか何でお前がここにいんだよ!お前市丸隊長に連れられてったんじゃねぇのか!?」
「杏子、どういう意味だ?」
「ばっ!何余計な事を…。」
「余計な事ってどういう意味だ?」
「いやっその…いっ…一護?」
「俺から逃げて…一体何してやがったんだっ!!!!!!」
「っごっ…ゴメンってば!!!」

お陰で一護の特訓開始は遅れるわ説教されるわでアタシは散々だった。

───── 絶対仕返ししてやるっ!覚えてやがれクソ恋次っ!




そして幻となった特訓3日目であるルキアの処刑当日。

「アタシ、チャド達に合流してくるから。」
「杏子!?」
「一護…ギリギリまで頑張って。」
「っ!」
「じゃ、夜一さん…後は宜しくお願いします。」
「儂から離れてどうするつもりじゃ!?」
「どうにかなるから!んじゃ!」

どのみち一護とは別行動になる。
そして夜一さんとも別行動する事になる。
ならアタシは早いうちにチャド達と合流して

───── あそこに間に合いさえすれば…。

間に合いさえすればいい。
あの局面までに双極の丘に辿り着きさえすれば ──────────────────── それで。




















その頃の現世。

「店長…今日は随分ご機嫌な様子で。(不気味ですぞ店長!)」
「(流石アタシが見込んだだけはある。特訓も忘れて説教3時間とは…流石っス一護サン!)」(説教中継にご満悦、気持ちスッキリ)





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2010.05.24