本.52 再び合流した一護と夜一さんを見送り 「無事に合流出来るかなぁ…。」 不安と戦いながら目的地っていうか目的人物?を目指して探してアタシは歩いていた。 「多分チャドと石田と織姫は合流してる筈だし…。」 一緒にここに来たチャド達と合流すれば安全に双極の丘に辿り着く事が出来る。 アタシはそう考えて合流しようと探してたんだけど。 「合流する為に引き返す…って何か間違ってないこれ?」 よくよく考えてみれば一護や夜一さんと別れた場所は双極の丘の真下。 つまり登りきれば目的地に到着出来たんじゃないのこれ!? 「まだそんなに進んでないし…戻るなら絶対今だよね。」 夜一さんからの恩恵が受けられなくなってからまだそんなに時間も経ってないし距離だって進んでない。 体力消耗して合流する為に戻るより今来た道をもう一回戻って一人で山登りした方が絶対効率的だ。 「剣八とやちるちゃんには逢いたかったけどこればっかりは仕方ない!」 己の欲望を満たすより先にすべき事を優先しよう!そう決めて 「もう少し早く気付けばよかった…。」 今更気付いた自分のバカさ加減にゲンナリしながら今歩いてきた150mを戻るのだった…。 「始まったっぽいな…。」 そして一護と夜一さんとのお別れ地点(アタシのスタート地点)まであと30mって辺りに差し掛かった頃、 大きな霊圧がぶつかり合うのを感じた ────────── けどそれは一護のものでも夜一さんのものでもなく。 「一番最初は剣八だっけ?あれ…?」 剣ちゃんと狛村隊長との戦闘を皮切りに他もぶつかり合ってた…気がするけど一護が双極の丘に現れる方が先だっけか? 「何か大切な事忘れてないかアタシ…?」 知識にある戦闘は全て順に開始されてた。 けど、それは大人の事情であって現実は違う。 全て違う場所で多少の時間差はあるものの、ほぼ同時進行で進んでたんじゃないだろうか? 「って事は…つまり?」 もしかしたら今にも一護は処刑台を叩き割るかもしれない。 で、そのまま一護は白哉とそこで戦闘開始だし夜一さんは蜂砕と一緒に崖からダイブで?っていうか何か抜けてない? 「白哉って一護との戦闘前に恋次をフルボッコしてなかったっけ?」 んでもってそれ以前に、だ。 処刑の開始って合図があったようななかったような? そんなそれらしい合図ってあっただろうか? 「始まったか…とか言ってなかったっけ?」 散らばって戦ってた死神が合図に気付いて処刑を知る様子をどうにか思い出し 「んじゃ今さっきのは白哉と恋次?」 最初に感じた大きな霊圧の衝突が白哉と恋次のものであると確信すると同時に そのぶつかり合いがアタシが引き返すのを決めた辺りから感じられる事に冷や汗を掻く。 「あのまま進んでたら巻き込まれてたかもしんない…。」 あのペースで進んでたら確実に白哉か恋次に見つかってただろう。 それが恋次ならまだしも白哉だった場合アタシは確実に捕獲され、簀巻きにされて放置されてかもしれない。 「首の皮一枚で繋がってるってこういう事かもしんない。」 夜一さんの恩恵を受けられなくても瞬発力で目的を果たせるよう、微々たるものだけどアタシはそれなりに力を温存してる。 冗談抜きで、もしあのまま引き返さず進んでたら白哉から逃げる為に大切な力を使ってたかもしれないっていうか確実に使っただろう。 引き返す事を決めた時はゲンナリしたけど今思えばその決断は正しかった。 「行き当たりばったりで行動するのは本気で止めないと…。」 まだ処刑の合図らしきものが無い今、この先を上手く乗り切る為にも考えを纏めて進む方が確実だし これまでのように思いつきで行動したら今度こそ肝心な場面で行き詰る事になる。 目と鼻の先には登山口(?)らしき場所も見えてきた上に、急に足取りも軽くなった…けど。 「夜一さんが近くに…いっ!?」 その瞬間だった。 瀞霊廷中に知らしめるような合図が響いた。 「もうちょっと時間ある…筈よね?」 一護があの場所に到着すれば全てが始まり、あの場所にいた隊長達も一護と白哉以外は全て散り散りになり各々戦い始めるだろう。 そうなれば、逆に双極の丘は手薄になりアタシは誰に気付かれる事なく多少なりとも時間を得る事が出来る。 崩玉を藍染の手に渡さなければ今後が大きく変わる ────────── けどそんな事が出来る程の力をアタシは持ち合わせてない。 どれだけ足掻いても誰も藍染を阻止する事は出来ない。 なら、アタシはアタシのやりたい事を優先する。 アタシが此処に来た”やりたい事”をやり遂げる為に。 「急ごう…。」 尸魂界の為でもルキアを助ける為でもない。 『腰から下を斬り落としたつもりだったが…浅かったか。』 あの場面を阻止する為に。 -------------------- 2010.06.17 ← □ →