こんにちは、です。
ワタクシ只今非っ常にマズイ情況に陥っております。

「おいデネブ!」
「何だい侑斗?」
「お前、俺に何か隠し事してるんじゃないか!?」
「そそそそそそそそそそそそんな事してる筈ないじゃないか!」
「何動揺してんだよっ!」
「どどどどどどどどどどどどうようなんてしてな…」
「デ〜ネ〜ブ〜〜〜〜っ!」

偶然発見に至った(?)家計簿から知った桜井家の台所事情。
私はオデブちゃん同様、それをどうにかしようとアルバイト情報誌を手に深夜の街を徘徊していたのですが、
どうやら侑斗はそれに気付いたようで。

「もういいっ!」
「ゆっ、侑斗!?」
「着いてくんじゃねぇ!」
「侑斗ぉ…」

私(オデブちゃん)の隠し事を嫌う侑斗は、決まった関節技にも口を割らない私に怒りを露わにし、
捨て台詞を残してゼロライナーから飛び出してしまったのです。

「ぐすん…。」

全ては侑斗の為に…な行動も、事情を知らない侑斗には判ってもらえないのは仕方ないとはいえ、
折角上手く生活をしていたというのに些細な事で喧嘩をしてしまうなんて。
それもこれも、見た目も派手(?)で目立つオデブちゃんが悪い!
こんな格好で街中をウロウロすれば、嫌でも噂が立ち、侑斗の耳に入ってしまうのは
当然で、そうなれば説明できない私は隠す事しか出来ないのです。

「侑斗、またデンライナーに逃げ込んだんだろうな…。」

ポツーン、と私一人ゼロライナーに取り残される物悲しさ。
私だって一緒にゼロライナーに行きたかったのにいぃぃぃっ!じゃなくて。
何か疑ってる、というか気付いてる風のウラちゃんやリョウちゃんにはあまり逢いたくないけれど、
良太郎君やモモちゃんには逢いたかった(ちょっとだけ)。
だから、どうせゼロライナーに行くなら私も一緒に連れてって欲しかったのに………って
脱線してる場合じゃなかった(電車だけに)。

ともかくなのです!
ともかくは、誤解を解く作業から始めなければ事態の打開は図れないのです!
が、侑斗は余り深く物事を考えないタイプらしく、噴火は一瞬で鎮火が早く、
お腹が空いたら”デネブ!腹減った!”って帰ってくるのでまぁ大丈夫として。
私が最優先しなければならないのはお財布の中身。
今朝も買出しに行って、無駄金を使った為に、本当に一刻の猶予も無くなってきている。

「どうする…どうすればいいの私っ!?」

ゴツイ頭を抱え込み、しゃがんで唸っても全然いい方法が浮かばない。
それ以前に、この容姿で雇ってくれるバイト先が見つかるとは到底思えない。

「うっ、ううっ…。」

多少の事ではヘコたれない私ですが、このどうすればいいか判らない容姿に
涙が浮かんで流れて落ちて

「ううっ…うっうっ…うぇえっぷ」

何故か蒸せた。
嗚咽に咽ぶ、な咽たではなく蒸せた。
こう、密閉された空間で無駄に泣いて咽たもんだから熱気が篭って蒸せた?みたいに蒸せた。

「うっ、ううっ…何かこれキモチワルイ…。」

それが原因なのか、何か皮が腐ったみたいな匂いまで漂い始め

「っ我慢できないぃぃぃぃっ!」

その悪臭から逃れようと思わず抱え込んでいた頭を引っ張ると

─── スポンッ

頭が取れた。

「え…えええええええええええええええっ!?」

手の中にあるのは確かにオデブちゃんの頭。
それが取れたって事はつまり私は今頭部の無い首から下しかないバラバラ死体状態な訳で、
なのに私は普通に呼吸とかガンガン出来ちゃってるんですが…まさか!?

「ま、ま、ま、まさか…!?」

私は急ぎ鏡のある場所へと向かいました。
ゴクリ息を呑み、意を決して鏡を見るとそこに写っているのは見覚えのある顔で。

「う、嘘ぉ…。」

まさかオデブちゃんの中身(スーツアクターさん)が私だったなんて!!
私、そんな事今の今まで全然知らなかったいやむしろ気付かなかった気付けなかった。

「落ち着いて、落ち着くのっ!これは…むしろ好都合なのよ…。」

そう、素のオデブちゃん姿…が私であるならばソレは可能。
私の想像が正しければ、オデブちゃんはオフ時間にオデブちゃんという殻を脱ぎ捨て、
素のオデブちゃん姿でアルバイトに勤しんでいたに違いない。
そしてこれなら多分、どんなアルバイトでも面接段階で落とされる事はなぁい!

「よしっ!これで深夜のコンビニでアルバイト出来るかもしれない…。」

深夜、侑斗が寝静まった頃を狙って抜け出してアルバイトすれば気付かれる事なく
収入を得る事が出来る。
これで、我が桜井家(?)のエンゲル係数の心配も侑斗の浪費もカバーできる!

─── よかった…ホントっ良かった…。

私は自分の心が打ち震えている事に気付き、
そして、実はオデブちゃんの中の人が自分だった事に多少感謝したのです…。









-------------------- 2009.01.13