暗雲を背負い歩く街はとても冷たいコンクリートジャングル。 人も街も冷たくて、鉛色の空からは涙雨がもうすぐほら…。 こんにちは、ワタクシ、今は気分的に自称吟遊詩人とでもいいましょうか。 さて、今日は私めずらしく昼間街を散策しています。 理由は単に、意味不明にゴネた侑斗がまたプイッと出掛けたままかれこれ3日程戻ってこないから。という世知辛いモノですが。 昼間は常にオデブちゃん仕様な私にとって、私として外出出来る機会はとても少なくて。 この分なら後4日は帰ってこないだろう侑斗を探すついでに私として街を散策する事にしたのですが。 数日前のリュウちゃんとウラちゃんとのあれこれで、実はちょっぴり精神的にヤバイ状態になっていました。 どう表現すれば一番しっくりくるか?は自分でもまだ見つけられてないのですが、 今現在思い浮かぶ一番しっくりくる表現としては滅びてしまえ!って感じでしょうか。 ウラちゃんに怪しまれ(?)リュウちゃんには懐かれ、 個人的には一番お近づきになりたい筈の良太郎くんとの距離はどんどん引き離されていく上、 侑斗は全然椎茸食べてくれないしオデブちゃんスーツは暑いし臭いし重いしバイトはしなきゃならないし、 そのバイト先で何か妙な事ばっか起きるしこの分だと次はどっちの太郎と出会うんだ? アハハもうあと太郎2人しか残ってないよねー!いやいや手羽先がまだ居たよ? でも手羽先はもう居るの?居てもここには居ないから問題起こさないからいっかー! でもちょっとだけ見てみたかったな限りなく遠い場所から。でもその前に タダ券貰ったからコーヒー飲みに行って愛理さん拝見しなきゃ死んでも死に切れないわー…。 と、シナプス焼き切れんばかりにテンパてたりしたりしてる?みたいな。 要するにもう何が何だか全っ然判らんわ。 ともかく、少しでもリフレッシュしよう!頭悩ませる事を少しでも忘れよう!って一人街を散策する私。 けれど、私の心を写したかのような空模様は今にも涙雨…って吟遊詩人気取りはこの辺で止めておかないと、 何だかとても嫌な予感がしてならないこの1〜2分。 空を眺め続けて少し乾いた目を、コシコシと擦ったのが災いを呼び寄せてしまったのか…。 「どないしたんやお嬢さん!」 「…………………キノセイダコレハゲンチョウダ。」 「こないな街中でお嬢さんが涙流すなんてアカンアカン!」 「…………泣いてないです。」 「謙遜せんでもええ。俺はちゃあんと見とったで!お嬢さんはずーっと空を眺めて…」 お前は何処ぞのストーカーか何かか!? 「単に雨が降ってくるかもしれない、と思って眺めてただけで?」 「流れようとする涙を堪えてるのを俺は確かに見たで!」 人はそれを大いなる勘違いと言うに違いない。 「いえ、ですからそれはそうじゃなくて…。」 「心配せんでええ。俺は何も見てない事になってる…黙ってこれで涙拭いとき。」 そう言って私に手渡されたのは懐紙の束。 この束になってる懐紙で涙拭いた暁には私の目尻は爛れてるかもしれない。 キンちゃんには限度とは何か?から教えるべきじゃないだろうか。 「ありがとうございます…。」 「礼はいらんで?俺は俺のやりたいようにやってるだけや!」 なるほど、だから束なんだ。 「それよりあのっ…良太郎くんとは違いますよね?」 一応、初めましてってのをしとかないと後々困りそうだから、と私は私の知り合いと 似て異なる方ですよね?と疑問系を前面に押し出してみたつもりだったんですが。 「どっかで見たことあるおもたらお嬢さん良太郎の知り合いか!」 どこで見たんだ?とはあえて突っ込まない。 「という事はやっぱり良太郎くんに似てるだけの方だったんですねー…。」 我ながら、白々しいとは感じつつももうそんなフォローしか出来ない状況であるのは確かだと思い 「いや、俺は良太郎や!」 どこがだ!ともあえて突っ込まず 「もしかしてやたらっていうか無駄にキザ臭さ漂うウラちゃんとかどこの小動物だお前は!って言いたくなるようなリュウちゃんとか…。」 「何や!お嬢さんあいつらとも知り合いやったんか!」 「ただの顔見知りです!!!!!」 あくまでただの顔見知りであるという事を主張しつつ 「でも良太郎くんとは知り合い…っていうかうん、知り合いです!」 「ほなもう俺とも知り合いやな!俺はキンタロス言うんや。キンちゃんで構わへん!」 出逢った太郎が思いのほか常識人であった事に感謝しつつ、 「キンちゃんですか。私、と申します。」 「礼儀正しいお嬢さんやな。ホンマにウラタロスやリュウタロスにはもったいないお嬢さんや!」 前言撤回!全然話通じないじゃないですかーキンちゃん! 「いえ、ウラちゃんもリュウちゃんもただの顔見知りですし!」 「照れんでもええ。俺にはちゃんと判ってる!」 というか、お願いですから私の話を聞いてください!流さずに!! 「良太郎くんとはバイト先で知り合い、お話するようになって…ってそれは判りますよね?」 「おう!良太郎とはエエ感じなんやな!」 「それはともかく!で!良太郎くんが突然ある日人が変わったようになったと思ったら…。」 「それはしゃーない事や!」 「しゃーない!で済ませていい問題なんですかそこ!?」 「かまへんかまへん!」 「………で、この姿の時はウラちゃん、って呼んでくれって…。」 「間違いやないおおてるがな!全然問題あらへん事や!」 「っ…で、ですね?またある日人が変わったような良太郎くんが…。」 「リュウタはまだ子供やからなぁ…けどアイツも強いで?」 「いえ、私は強さ論議をしている訳ではなくてですね?」 「そうか。良太郎とウラとリュウの三人でちゃんを奪い合ってるっちゅーこっちゃな?」 「それこそありえねーだすよ!」 「そうか、ありえねーだすか!」 「です…よ…でした…。」 「人間誰しも間違いはある!気にせんでええ!」 「はぁ…。」 「つまりちゃんが何を言いたいか?やけどな…」 「判って貰えるんでしょうか?」 「何で良太郎のヤツが俺のような強い漢らしい漢と似てるんか?っちゅーこっちゃろ?」 「全っ然違うんですが…。」 「細かい事気にしたらアカン!」 「全然細かくないですからそこ!」 ダメだ全然話が通じねぇ;;;;;; 何処ぞの球団カラーの着流しを着る良太郎くんinキンちゃんは、 お約束通り私の話を明後日の方向へ向わせてくれる天才でした。 「ほな俺も同じようにせなアカンやろな!この姿の時はキンちゃん呼んでくれたらええ!」 「そうなるんですかーーーーーーー!」 「かまへんかまへん!」 「かまってくださいよおぉぉぉぉぉ…。」 ダメだ。やっぱり私にはイマジンさんを御する才能はない。逆に玩ばれる自信だけが増えていく。 「で?肝心な事聞くの忘れとったわ。ちゃんの本命さんはどちらさんなんや?」 「どちらにもこちらにも居られません!これっぽっちも居られませんからっ!!」 「何や?また涙流して…ん、これで拭いとき。」 人は困難に立ち向かう生き物だと、誰が言っていただろうか誰も言ってねーよな? 逃げちゃダメだ×∞って呪文も全然効果ないし、逃げたって誰も私を攻めたりしない…筈。 「あの、私急用を思い出したのでこれで失礼します!」 「そうか?ほなまたな!」 っていうか何でその引き際の良さを去り際だけに発揮するかなコノヤロウ! 予想通り、私を待ち受けていたのは残る2太郎の黄色い人でした。ってことはつまり 次に遭遇するのは多分………。憎いアイツは虎キチか!?-------------------- 2009.05.27 ← □ →