05. 「 ────────── っていう訳よ。」 「マジ!?」 「おうよ。」 「証拠ないの!?写メとか写メとか写メとかっ!」 「誰のだよ…。」 「サスケとかサスケとかサスケとかサスケの!!!!!!!!」 「携帯持ってたっけなぁ…。」 「これっスよ。サンが倒れられてた場所に落ちてました。」 「あんがとー。」 「早くっ!見たい見たい見たいサスケ見たいぃぃぃぃっ!」 元、幼馴染(であり妹分)であったこの子はアタシの従姉妹と判明した。 そして、アタシがどうして此処に居るか?ここに来るに至る状況および此処に来るまでの生活を説明した途端、豹変した。 コノヤロウ、心配するならともかくいきなり言う台詞がそれかいっ!と一瞬殺意が沸いたがこればかりは仕方ない。 コイツはそういう属性持ちなのだ。(しかもサスケが相当お気に入り) ちなみにアタシにそういう属性があるのはコイツの影響だったりする。(弟も影響済み) 「うはっ!何この照れ顔…イイなんてもんじゃないっ!」 「だろ?サスケってばさぁ超ツンデレでさぁ…。」 「羨ましいぃぃぃぃぃっ!!!!!」 「ナルトはすっごい素直よ?」 「うんうん!それで!?」 と、完全に理性を何処かに放り投げて属性丸出しで興奮する一見すると美少女(実は相当なタマ)の様子に ゲタ帽子と双子の弟は圧倒され、部屋の隅で小さくなっていた。 「ねね、カカシ先生の写メは???」 「カカシさんのはあったっけなぁ…。」 「ん???」 「何…。」 「っいや…別にぃ…。」 「その割りに何か言いたそうなツラしてんじゃねぇか。あ?」 「やいやいやアタシそんなヤボな事言えないしぃ?」 「んだぁ?含みあんじゃねぇの。」 「だってさぁ…ねぇ?」 「それ、誰に同意求めてんだ?」 「だってだってぇ…。」 キモイ位にウネる美少女ってのは想像以上にキモイ。部屋の隅にいる二人は完全に見ないフリを貫き通し、 自ら蚊帳の外へ出て行った模様で。 属性丸出しのコイツは少々暴走する悪いクセがある事をすっかり忘れてたアタシは 「だって何だ?その口でアタシに言えるなら言ってみな。」 「ちょ!お姉ぇ怖い!!!」 「くだらねぇ事抜かしたらその舌引っこ抜くぞ!!!」 「いやぁ〜ん!だってカカシ先生って…。」 「それ以上ぬかしたらてめぇ…。」 「お姉ぇの中にある”二次元萌え”の条件、完全に満たしてるからぁ〜?」 「だから何だっ!!!!!」 「うふっ、うふふふふふふふっ。」 「一護っ!」 「ハイっ!」 「コイツに一発アレお見舞いしてやれ。」 「アレって…。」 「今すぐ卍解して一発放てっ!」 「ちょ!おねっ…や、ねーちゃ…あねき」 「い〜〜〜ち〜〜〜ごぉぉぉぉっ!呼び方なんかどうでもいいからさっさと卍解しやがれっ!」 「きゃぁぁぁっ!お姉ぇったらこわぁぁぁいっ!」 「杏子っ!っこれ以上刺激すんなよっ!」 「だってだってぇ…。」 属性丸出しの美少女の発言に完全にキレていたそれは決して図星を指されたからじゃない(筈だ)。 っつぅかあの毎日が精一杯目いっぱい生きてます!な状況で自分の萌え条件にイチイチ反応できるとでも思ってんのか! お母さんは毎日大変なんだよ萌えてるヒマなんかねぇんだよっ!!! 「サン杏子サン、正直申し上げますと今アナタ方の萌えはどうでもいいんスよ。」 「ちょっと喜助さん!どうでもいいってどういう意味よっ!」 「いや、喜助ちゃんの言う通りだ。っつぅかさぁ?アンタ…。」 「っ何!?」 「なぁ一護?コイツ何で”喜助さん”とか呼んでる訳?」 「っそうなんだよっ!最初浦原さんって呼んでた筈なのに知らない間にっ!」 「親父さん聞いたらどうなるか…。」 「ちょっお姉ぇっ!?」 「皆サンちょっとアタシの話、聞いてもらえませんかね?」 「ちゃんと聞いてるじゃねぇか。」 「「((どこがっ!?))」」 「ともかく。確認したい事があるんスよ。」 「なら先に言えよそれを…。」 「(言うチャンスを尽く潰したのは一体だれだと…。)」 「取り合えず地下行くか?それでいいんだろ?喜助ちゃん。」 「最初っから解ってるんじゃないスか…。」 と、散々訳の解らない萌え談義で収集の付かない場を(誰かが)強引に終結に持って行き、 アタシ等は地下へと下りる事となった。そして ────────── 。 「サン、アナタもしや薄々お気づきで?」 「激痛の後イロイロ思い出して?そのついでに何となく。」 「ついでっスか………。」 「何?どういう事なの?」 「俺らにも判るように説明してくれよ浦原さん。」 「実はサンが庭に倒れていた時、一緒に子供が居まして…。」 「子供っ!?それってもしかしてっ!」 「ナルトでもサスケでもシカマルでもねぇよ。」 「ちっ…。」 「杏子…お前いい加減にしろって。」 「解ってるわよっ!」 気を抜けば猛獣と化しそうな約一名は軽くスルーし、本題に入る。 アタシと一緒にいた子供。アタシをここへ導いてくれたあの子の正体は多分 ───── 。 「あの子供は斬魄刀の具現化した姿っスね?」 「そう思う。」 「えっ!?斬魄刀ってお姉ぇっホントなの!?」 「たださぁ、何か微妙に違うっつぅか?斬魄刀の定義からズレてる気がすんだよねぇ。」 「どう違うんスか?」 「斬魄刀ってのは名前があって?その名を知って呼ぶ事で解放されんでしょ?」 名前を呼ばれない斬魄刀は斬魄刀じゃない。あの印象的な一護と斬月やりとりを思い出しても、 あれが正しい形なんだと思う。がっ!!! 「アタシ、呼ばれたんだよね…あの子に。」 「斬魄刀に?」 「そう。呼ばれて出逢ってんでもって”呼んで”って。」 「名前を?」 「うん。」 「でもそれって別に普通なんじゃ?」 「だよなぁ。俺も斬月に”お前は知ってる”って言われて思い出したぜ?名前。」 「斬魄刀にはさ?名前が必ず在るもんなの?」 「名前があるから斬魄刀なんス。名無しの刀は所詮ただのなまくら刀っス。」 ならやっぱりアタシとあの子の出会いは定義からズレてんじゃないだろうか。 あの子は名無しで、名前はアタシが付けたんだし。 「それでどうズレてんの?」 「あの子さぁ、名前呼んでってそりゃしつこくて。」 「別におかしくないんじゃねぇ?それ。」 「でもさ?名前呼べって言うクセに名前無いって言うし。」 「あ〜…俺なんかすげぇイヤな予感すんだけど。」 「あっ、アタシも。」 「そうっスか?」 「だってお姉ぇ規格外れだし。」 「だよな。何かイヤな予感っつぅか、とんでもない事になりそうっつぅか。」 「それは一先ず置いておくとして、それでサンはどうされたんスか?」 「付けるしかねぇし?取り合えず名前付けてみたんだけど。」 「そんな適当でいいのかよっ!」 「いくらなんでもさぁ、それは無いよねぇ?」 「アタシもそう思ったけど仕方ねぇじゃん!しつこいしつこい。」 「えー…っそれでどうなったんスか?」 「名前付けたら納得すると思ったらさぁ、”どんな字?”って可愛く聞いてくんだよ!」 だから名前を付けた。付いていた名前を思い出して呼んだんじゃなくて、アタシが付けた。 やっぱそれって微妙に斬魄刀の定義からズレてる気がするんだよなぁ。ってアタシの思惑が、 漸く通じたのか?三人とも神妙な面持ちでうーんうーんと唸り始めた。 「っていうかさ?そんな風に規格外で定義から外れた斬魄刀の能力ってさ…。」 「尋常じゃないっつぅか、ありえない何かやらかしそうな気がすんだけど俺。」 「サン、例えば…っス。卍解他諸々出来そうな予感や気配なんかは?」 「気配や予感は無いけど確信があるわー。」 あの子 ───── 水鏡を斬魄刀と認識した途端、アタシは理解してしまったあの子の能力を。 「確信ってどんな!?」 「いきなり卍解とか無しだからなっ!」 「お前等アタシを何だと思ってんだっ!!」 「一護サンも杏子サンもサンも少し落ち着いて下さい!!!」 一人は身を乗り出し、一人は逃げ腰、一人はその二人を庇うようにアタシの前に立ちはだかる。 どいつもこいつもアタシをどんだけ危険視してんだよ…。 アタシだって一応女、そんな風に猛獣扱いされたら傷付くんだからねっ!と、ムカついたんで腹いせに 「水鏡おいで。」 『いいの?』 「構わない。怖くないから出ておいで。」 『うんっ!』 「うわっ!?ちょ!いきなりかよっ!!」 「いいいいい一護っ!にっ逃げっ!」 誰に確認する事なく、多分99%斬魄刀だろう水鏡を呼び出した。 得体の知れんガキ、という認識からアタシの斬魄刀かもしれないって認識に変わった途端、 アタシの水鏡に対する感情は知らず内に変化(激変)していた。 「うわっ…。」 「マジか…。」 「これはまた随分…。」 殺傷能力の或る愛らしさ全開の銀髪の子供をアタシは抱き上げて、ぎゅうぎゅうと抱き締める。 それを、嫌がるどころか喜んで受け入れるこの子はやっぱりアタシの子だわっ! 「ねぇ喜助さん。斬魄刀の具現化した姿って…。」 「それぞれ持ち主次第ですが、稀に持ち主の願望を色濃く反映する場合もあるかと。」 「もしかして、色濃く反映しすぎた結果か?アレ。」 「っ多分。モロお姉ぇの好みだもんあの子。」 「我が子を溺愛するバカ親…。」 「一護っ!聞えたら何されるか解んないって!」 「聞えてるわよぉ。」 「「ごごごごごごごごめんなさぃぃぃっ!」」 と、喜びもつかの間。また言いたい放題言いやがってマジでこいつ等一回シメねぇとダメだな。 「で?能力の方はどういった風で?」 うん、コイツも一緒にシメるか。 「そこのハイスペックとは違うから仮面はムリ。っていうか頼まれてもあんな趣味悪ぃ仮面はムリ。」 「いえ、そういう意味ではなく…。」 「けど鬼道は使えそうな気がするー。」 取り合えずシメるのは後回しにし、水鏡を抱き上げたままで解る事だけ簡単に説明する。 頼まれても御免被りたいお面はどうやら被れないっぽい。(助かった) が、こう身体の中をワキワキと何かが湧き上がってる感じから、ドーンと何か出来そうな雰囲気は感じ取れる。 「例えばこう ────────── 『破道の九十黒棺』」 ドカーン 「えっ詠唱破棄とかありえねぇよっ!ってか殺す気かよっ!今マジだっただろっ!なぁっ!!」 「あ、悪ぃ。」 「(絶対狙ってたよアレっ!お姉ぇ本気だよどうすんのよ一護っ!)」 「(どうするったってこっちが聞きてぇよっ!)」 「(取り合えず話題を変えてみてはどうです?)」 適当に頭に浮かんだ鬼道の技名口にしたら派手に何かが飛び出した。途端アタシから距離を取り(それもかなりの距離)、 何対策だか知らんが岩陰に隠れてどっから持って来たのか(持ってたのか)?白旗を振り始めた三人。 「おっ、お姉ぇ!」 「何?」 「っその水鏡ちゃんは具現化したままなの?」 「さぁ?」 「さぁ?って斬魄刀の姿にしてみたらどう?」 「やり方シラネ。」 「「「(どこまで適当なんだ…。)」」」 「っと、とりあえず念じてみたら?」 「ん〜…こうか?」 と、仕方なく言われるまま念じてみると案外簡単なもんで、アタシの水鏡は具現化した姿から スラリとした細身の刀へと姿を変えた。その名を写したかのような、すべてが鏡で出来た”水鏡”という名の斬魄刀に。 「(うわぁ何アレ。アリなの!?ねぇあれってアリな訳っ!?)」 「(どんな斬魄刀だよっ!あんなモン持たせたの誰だよっ!)」 「(アタシ、恐ろしくて性能聞きたくなくなってきたんスけど…。)」 「この後どうすんの?」 「っええっと、っそのっ、卍解とか!?」 「(バカっ!卍解していきなりドカンだったらどうすんだよっ!)」 「(だって他にどう言えっていうのよっ!いざとなったら喜助さんが何とかしてくれる筈よっ!)」 「(ちょ、アタシに振らないで下さいよっ!)」 「(浦原さんアレだっ!紅姫の血霞の縦だか盾だかで俺達の事守れよっ!)」 そして、騒がしい外野はこの際無視して既に理解してるこの子の性能を確かめるべく、 「(っ解りました。危険が及ぶようでしたらアタ ───── っ!?)」 「起きろ『紅姫』。」 「(ちょっとぉぉぉぉっ!ああああああああれっ!何あれっ!)」 「(浦原っ!どうなってんだよっ!)」 「(ア、ア、アタシの紅姫がっ!?)」 「あのさー?そっちの喜助ちゃんのソレ、今ただのボンクラ刀だからー。」 「「「(ありえねぇぇぇぇぇぇぇっ!!!)」」」 アタシの知識の中にある斬魄刀の姿を写す水鏡。勿論写すのは姿だけじゃなくて性能その他も含み、 その上アタシの水鏡がその姿を模している時本体(本物)は卍解どころか始解も不可能になるっぽい。 流石にそれはありえねーよ!と、アタシですら思うがっ! 「(何でお姉ぇにあんな斬魄刀持たせたのよっ!)」 「(俺が知る訳ねぇだろっ!)」 「(二人とも少し落ち着いてくださいよ!サン以外があんな斬魄刀所持したらもっと危険じゃないっスか!)」 「(そんなの紙一重よっ!)」 「(っでも確かに浦原さんの言う通りじゃねぇか?)」 「(二人とも知らないから暢気な事言えるのっ!お姉ぇは…っお姉ぇは…。)」 第三者に言われると異常にムカつくんだけど。 しかも、あいつ等聞えてねぇと思ってんのかさっきから延々言いたい放題だし。 「(とととととにかくお姉ぇをこれ以上刺激しないでっ!)」 「(してねぇよっ!)」 「(お姉ぇだってアタシ達がこんな事言ってるの知ったら傷付くっ!)」 「(そういうタイプには見えませんが…。)」 「(傷付いたお姉ぇはものすっごーく凹むんだからっ!)」 だから丸聞こえだっつぅの。 「(そんでもって凹んで悩んで悩んで雛森桃みたくなって…。)」 「(っそれは微妙にウゼェかも。)」 「(回りに危害を加えないなら問題ないんじゃ?)」 「(開き直った瞬間に藍染惣右介と化すのよっ!世界が崩壊するわっ!!!)」 「(どどどどどどどうすんだよっ!どう考えたって藍染よりタチ悪ぃじゃねぇかっ!)」 ほほぅ、それで? 「(だからお姉ぇをこれ以上刺激しちゃダメっ!)」 そういうお前が一番刺激してんじゃねぇか。 「(浦原さんっ!何か話題転換出来るようなネタねぇのかよっ!)」 「(散々っぱら言ってアタシに丸投げするつもりっスか!?)」 「(だってこの中で一番喜助さんが強いんだからいいじゃない!)」 「(何言ってるんスか!?一番強いのは一護サンっスよ!)」 「(ざけんなよっ!?俺が一番な訳ねぇだろどう考えたって………。)」 どう考えたってアタシが今んとこ最強だよな? 「で?お前等話は纏まったのか?今なら土下座で許してやってもいいけどさぁ…。」 「「「すいまえんでしたぁぁぁっ!!!」」」 結局そうなんだから最初から素直に大人しくしてりゃいいのに。 「まぁ今回だけは見逃してやる。けど次はないからね?」 「「「はぃぃっ!」」」 土下座しながら後方にバックスライディングする三人。 行動は器用なクセに言動に少し気をつけやがれ!ってなもんだが。 「まぁ心配しなくてもいいって。そりゃアタシだって水鏡の性能は反則どころじゃねぇって思うし。」 「っだよね?ねっ?」 「だから、逆に良かったんじゃね?アタシどうせ此処の住人じゃねぇし。」 「 ────────── あっそうか。だよな!」 「おまけに斬魄刀使えたところで帰ってもクソの役にも立たねぇし。」 そう、アタシが無事帰れたとして。鬼道はともかく斬魄刀はキャベツも刻めないんじゃないかと思う。 そもそも、斬魄刀っていう物自体、あっちじゃ使用不可だろうし。 「こっちで使えてもさぁ、体力勝負の戦闘に加わる気もなけりゃ体力もねーわ。」 「宝の持ち腐れって言葉の見本みたいなもんスね。」 「ちったぁ言葉の使い方に気ぃつけろや。このままポッキリいくぞ?」 と、当初の目的っつぅか確認?から全部が逸れてグダグダになるオチもいい加減飽きてきた。 「っとそれよかさ?アタシ帰れるんだろか。」 「どこに?」 「ここじゃないどっかだよ!」 「取り合えず斬魄刀片付けてから考えようぜ?」 「そうっスよ!取り合えず刃物は片付けてからにしませんか?」 「そうよね!とにかく片付けようよお姉ぇ!」 「お前ら…………。」 そして腹立てるのも面倒になってきたんで仕方なく、 「水鏡、それじゃ今日のところは『おやすみなさい』」 『おやすみなさぁい!』 紅姫から水鏡に姿を戻し、アタシの内へと消えた水鏡の存在を確認し ────────── たが。 「っ痛った!」 「お姉ぇ!?」 大して何かした訳でもないのに身体のあちこちが痛み始めて改めて思い出した。 アタシがここに来る前、瀕死だったという事を。 多分、ありえない様々な出来事に痛みはどっかに忘れてたんだろう。けれど、 一応アタシの中にあった色々な疑問が解消された事でその痛みはぶり返し、今更その痛みを痛感してる訳だが。 「イタタタタタタタタタっ!」 「おおおおおおおお姉ぇっ!?大丈夫ってちょっとぉぉぉぉぉっ!」 「耳元でうるさいっ!!!!!」 「なななななななななな…。」 「どうしたんスか?」 「何で…っ!?」 「どうしたんだよ杏子っ!」 「何でお姉ぇに呪印があんのよぉぉぉぉぉっ!」 ………………いまさらかい。 -------------------- 2010.01.25 ← □ →