本.02


先ずは、どこから手を付けるべきかを考える。
洗濯しながら掃除して、掃除しながら片付けて、片付け終わったら買い物?
アタシは頭の中で一応シュミレーションを行って、今日の予定を決めてからナルトを起こしにかかる。

「起きろ〜ナールートー…」
「まだ眠いってばよ…」
「子供が生意気言うんじゃない、起きないと…」

布団を頭まで被り、抵抗するナルトの布団をひっぺがして無理矢理叩き起こし

「今日は忙しいから悪いけど朝はこれ食べるように。」
「判ったってばよ!」

ナルトが顔を洗っている間に湯を沸かし、そしてカップに注ぐ。
あれだ、いわゆる一つのインスタントラーメンってやつだ。

「食べたら洗濯するから洗えそうなもん全部持ってくるように!」
「洗えそうなもんって?」
「アンタの服でしょーがっ!」
「えーいいってばよ…」
「いいから全部出して来い、アタシ布団干してくるから」

朝食にインスタントラーメンは、結構楽だ。基本、朝は楽が一番だし。
ナルトがズルズルラーメン啜ってる間に、アタシは布団のシーツを全て剥がして
洗濯機に放り込んだ。
一応、洗濯機が可動するかどうか?は昨日の内に見ておいた。
さすがに中に干からび変色したタオルが入ってたのには驚いたけど。
使う為に洗濯機から洗うハメになるのは、想定外でしたー。

「ごちそうさま!」
「食べ終わった?」
「これ、服なんだけどほんとに全部洗うのか?」
「今日は天気いいしね、洗濯機には悪いがフル可動よ!」
「ふ、ふる?」
「気にするな気にするな。よし、じゃゴミから出すか。」

もじもじ?洗濯物を持って来たナルトを引き連れ、最大の作業になるであろう
ゴミの分別から始めた。

「一部屋づつやるからね?このゴミ袋に…」

分別っても、置いておくか?捨てるか?の二択だけど。
大きなゴミ袋をナルトに持たせ、

「いいか?アンタの大切な物は置いとけばいい。それ以外は…」
「どうすんだ?」
「捨てる。使わないならいらないもの!思い切って捨てる!」
「え〜…でも…」
「いいから捨てる!どうせアンタの事だから、あれ?これ何だっけ?なモンまで残してんだろ…」
「ねーちゃん、何で知ってんだ!?」

やっぱりか。
まぁアタシだって?空箱とか紙袋は捨てられなかった方だしあんまキツイいい方は出来んが。

「これからこの部屋に二人で暮すんだから、物は少ない方がいいっしょ?」
「そうなのか?ってかねーちゃんずっとここにいるのか?」

ナルトが神妙な顔でアタシを見上げている。
ずっとここにいる?と聞かれたら正直判らん。
いきなり来たからいきなり帰るって事もあるだろうし、それ以上に

(トイレに入ったら自宅だった…ってありそうだ)

そんな考えが浮かぶ。
ま、でもあんまし深く考えるのは面倒だ。

「多分いると思うよ?そうだな、ナルトがお嫁さん貰うまでは…」
「なっ!?何言い出すんだってばよ!!」

いっちょ前に照れるナルトは、うんやっぱり可愛いな。
これくらいの歳の子供って素直でいいわ。

「袋が一杯になるまで入れんなよ?持てなきゃ捨てにいけないから!」
「判った!ねーちゃんはどうすんだ?」
「アタシは台所片付けてるから、何かあったら呼ぶように。」
「じゃ始めてくるってばよ!」
「頑張るように!!」

ゴミ袋片手に、部屋の隅から片付け始めたナルト。
いやほんと、この歳の子供は言う事聞くし使いやすくて…ゲフンゲフン。
ともかくっ!最初の部屋、ナルトに任せてアタシは台所から片付ける事を始めた。

何つーか、独身男の一人暮らしよりタチが悪い。
割れた皿は放ったらかし、紙パックもゴミ袋に溜めっぱなし。
冷蔵庫は元がわからない何か?が干からびてるし。
その、全てをゴミ袋に入れ、冷蔵庫の掃除から始めた。
途中、洗い終わったシーツを干し、次の洗濯物を回して
綺麗になった冷蔵庫に昨日少し買って来た食材を突っ込む。
そのまま風呂場に向かって掃除をし、

「ゴミ袋まだある?ちゃんと片付けてる?」
「やってるってばよ!袋もまだちゃんとあるって!」

途中覗きに来たナルトに作業の進み具合を確認しつつ、延々と掃除をし続ける。
朝、7時過ぎから始めた大掃除と大洗濯は、10時過ぎ頃に半分位は済んだと思う。

「ナルトー終わったー??」
「後はゴミ袋捨てたら終わるってばよ!」
「じゃ、それ捨ててきたら買い物行くよ!」
「判った!オレ捨ててくる〜」

3時間フル可動した洗濯機は、ちょっと熱いか…。
それでも、ほぼ洗濯も終え、部屋の全てが見違える程綺麗になった。
ナルトがゴミを出している間に、買わなきゃならない物を紙に書いて…って
紙はあってもボールペンない!?筆か?もしかして筆なの!?

「うん、あれだ。メール保存にして買うもの打っとこう。」

割れた小皿1つを灰皿代わりにして、携帯ポチポチ打ってたら

「なぁねーちゃん、それ何だ?」
「あ、これ?」
「携帯電話って便利な物なのだよナルト君。ってそういえば…」

ナルトが物珍しそうに覗き込んできた所で、アタシはふと思い出した。
アタシは、肝心な事をナルトに何一つ言ってない。
自分がどうしてこの里に来たのか、どうして戻れないのか、今後どうするのか?を。

「お昼御飯食べながら言えばいいか…」
「どうかしたのか?」
「や、何でもない。よし、じゃ買い物行こう!」

妙にはしゃぐナルトと、アタシは買い物に向かったんだけど。

「何かどの店も妙に態度悪ぃな…」
「ん…多分オレのせいだってばよ…ゴメンなねーちゃん…」

どの店でもそうだった。支払い時にナルトを見たオヤジやババァは
急に表情を変え、さっさと帰れ的表情になる。
てめ!散々愛想振りまいてたくせに、接客態度最悪じゃね?

「何でそこでアンタが謝る訳?アンタ悪さしたの?」
「っしてねーってばよ!」
「じゃ謝んな。悪い事したんなら絶対謝らんといかんが。やってねぇのに謝んな!」
「ねーちゃん…」

イイ大人が子供にする態度じゃねーぞアレは?胸クソ悪いったらありゃしねぇ。
いくらナルトん中に九尾?がいるからってアレはねぇだろ。

「あんなの気にしなきゃいい。ほっとけ、あんな態度しか出来ないバカな大人は…」
(その内天罰が下るから!)

周りに聞こえないよう、小さな声でナルトの耳元で囁く。

「うわっ…ねーちゃん…」

驚いたような顔をして、一瞬怯えた顔を見せ、そして笑うナルト。

「一回帰ってお昼食べよう。昼からもうちょっと片付けたらもっかい買出しー!」
「おーっ!」

二人の両手に余る程の大量の荷物をどうにか持ち帰り、
簡単な昼食を用意して食べながら、アタシは自分の事を話し始めた。





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2008.08.23