本.03 「ねーちゃんの居たとこって、すげぇ不思議なとこなんだな!」 「や、アタシからすりゃこの里の方が不思議なとこよ。」 アタシの話、話す内容をナルトは興味深々といった感じで聞き入って、 疑問に思う事、不思議に思った事をアタシに問いなおす。 あーだこーだと色んな事を話し、 「ねーちゃんが、いつ戻れるかオレには判んねぇけど、ずっとここにいればいいってばよ!」 「うん、あんがとナルト。アンタに追い出されたらアタシ路頭に迷うから!」 「そんな事しないってば!」 「そうかそうか!だよな!そうだよな!うんうん、ナルトはイイ子だ!」 今度こそ、っていうか、アタシはやっと全てを話し、 ナルトの口から同居(同棲?)の許可を貰って人心地付いた気がした。 その、安心感から来る嬉しさから手を伸ばした先にあるナルトの頭をガシガシ撫で回し、 空になった皿を洗って片付けて。 「洗濯物片付けたら休憩して、そしたらもっかい買い物行こう!」 「今度は何買うんだ?」 「布団?」 「あ、そっか!ねーちゃんのいるもの買わなきゃなんねーんだな!」 「そうそう、着替えも…いるかなこれじゃ」 午後の予定をおさらいする。 まぁ布団だけあれば十分だし、ムダにお金は使いたくない。 でも、アタシが着てる服は、完全にこの里じゃ浮いてるだろう、そんな恰好で。 何枚かは買わなきゃならないだろう。ひっそり静かに暮らしたいから! 「じゃアタシ洗濯物片付けるから、ナルトは…ちょっと頼まれてくれる?」 「何すればいいんだ?」 「何か紙と書く物持ってきて、街の地図書いてくんない?まだ全然判んないし。」 明日になればナルトはアカデミーとやらへまた通う。 つまり明日からアタシは一人で行動しなきゃならない訳で、でもさっぱり道が判らん。 「買い物出来るお店と、一応アカデミーまでの道、あ、ここからのよ?それ書いてー」 「判った!ねーちゃんが一人で歩けるように判りやすく描いたらいいんだよな?」 「そうそう!覚えるまではそれを頼りに街歩いてみるから」 自分の部屋から紙と…やっぱり筆を持って来たナルト。 うーん、と悩みながらも丁寧に?この街の地図を書いてくれた。 もちろんアタシはその間に洗濯物を片付け、シーツも取り替え終える。 よし、これでこの部屋の全てが人並みに戻った。 「晩御飯何食べたい?」 「ラーメン!」 「それ以外で!!!」 「何でもいいってばよ!」 「外食するか!焼肉屋あったし…焼肉食べよ!ナルト!!」 「賛成賛成賛成っ!」 朝昼続けて適当だったし、今日の夜位は美味しいもん喰うか。そう決めて、 財布にお金を補充して、アタシはナルトと手を繋いで二度目の買い物へ出発した。 「うん、これどうしよっか。」 「大丈夫だってばよ!オレがちゃんと持っ…」 「無理無理無理!どう見ても無理!って足ふら付いてるから待て!!」 一番嵩張る布団を後回しにしたのは良かったけど。 その布団を運ぶのにこんなに手間取るとは想定外だった。 現在、荷物は紙袋に入ったアタシの着替えと日用品と、 掛け敷き布団のセットとシーツ、その替えに枕1つ。 「アタシ一回荷物置いてくるから、二人で運ぼう?」 「大丈夫だって!」 それが、こんなに重いのはマジ想定してなかった。 ってアタシはうっかりしてた。 自分が大人の身体じゃないって事をすっかり忘れてたからこうなっちまって非常に困ってる。 今までの、アタシであったアタシならこれくらいの荷物、運べたと思うんだが、 如何せんうら若き乙女(?)のアタシじゃ背に背負ってみたけど歩くのも厳しくて。 見かねたナルトが男のオレがやるってばよ!って変わりに背負ったが無理のようですハイ。 それでも、頑張ろうとしてくれるナルトの姿は、あれだ。 何でこんなにイイ子なんだお前は!とアタシの口癖となりつつある台詞が当てはまる。 が、無理なのは無理だ。手にある紙袋が無ければ二人でどうにか運べるかもしれないし、 「無理して転んで怪我でもしたら困る!布団が汚れても困る!だから…」 手荷物を置いて出直すつもりで、アタシが何とかナルトをこの場に待機させようとしていた時だった。 「ナルト?お前こんな場所で何やってるんだ?」 アタシの背後から、アタシの正面にいるナルトに掛ける声が聞こえてきた。 あ、あれ?この声は確か???? (土井センセーーーーーっ!?) 「イルカ先生!?」 ゴメン、アタシ、アニメはNARUTOより忍たま率の方が高かったんだよ…フッ。 「お手数掛けてすいません…」 「いえいえ、気にしなくていいですよ。」 「そうだってばよ!イルカ先生はすげー優しいんだぞ?」 そして、アタシとナルトが格闘していた布団は今、 土井先生改めイルカ先生の背に背負われていたりする。 何て親切な先生なんだ!ちきしょうカッコイイぜ!! そんなイルカ先生と並んで、手を繋いで歩くアタシとナルト。 「そういやお前、今日休んで一体何して…」 「あ、すいません。実は私がナルトにお願いして…」 「ねーちゃん、何か口調が違うってばよ…」 ちょ!アンタ変に鋭いじゃないの! アタシはナルトの首にガシッと腕を回し、イルカ先生とは逆方向に向き直ると しゃがんでナルトにしか聞こえないよう小声で話す。 (バカ、余計な事言うんじゃねーの!) (っ!!怖ぇよねーちゃん…) (おだまりっ!アタシは使えるモンは何でも使うのよ!) (だったら先に言ってくれればよかったのに…) (んな暇なかっただろうがっ!) 不審者すぎる、挙動不審すぎるアタシとナルト。 当然、先生という立場の人がその怪しさに気付かない筈もなく 「どうかしたんですか?」 「いえ、何でもありません。申し遅れました、私、昨日からナルトにお世話になってます、と申します。」 「これはご丁寧に。オレ…は海野イルカと言いまして、ナルトの…」 「先生の事は知ってるってばよ!な?ねーちゃん!」 「とっても優しい先生なんだよね?イルカ先生って?」 「そうそう!オレ先生の事一番尊敬してるんだってばよ!」 「ナルトが昨日、教えてくれたんです」 ニッコリ笑ったのは、挙動不審を隠す為、である。 あれだな、やっぱり人間は顔なんだな、と思ったのは、 0円スマイルなアタシを見たイルカ先生が、少し頬を染めて視線を逸らしたからだった。 (恐るべし美少女の微笑み…。) まぁ、でも0円で荷物が運べたんだ、儲かったじゃねぇの?と思うのは、商魂逞しい関西人だから仕方ない。 もちろん、頭の片隅に”タダより高いものはない!”の名言は残ってる。だから 「先生、もし予定が無かったら晩御飯ご一緒しませんか?」 「先生どうせ帰るだけだろ?焼肉行くんだ!一緒に行くってばよ!」 無事、布団を部屋まで持ち帰った玄関先で一応誘ってみた。 俗にいう、お約束、ってやつです。 「ただ荷物運んだだけだから遠慮しておきますよ。それよりこれからナルトの事、よろしくお願いします」 っしゃ!奢らなくて済んだ! 「ナルトがご迷惑をお掛けするかとは思いますが、今後ともよろしくお願いします、イルカ先生。」 上機嫌なアタシは、イルカ先生の手を取り、 増量中の0円スマイルをこれでもか!って位に浮かべて、深々と頭を下げる。 「こちらこそ、ですよ!えーっとさん、でよろしいですか?」 「はい。」 「何か困ったことがあれば、いつでも言ってください。オレで良ければ…」 「ありがとうございます!!」 あれだ、表現しにくいが、気分は→^^^^^^^^^^^v←こんな感じだ。 どっかの、態度の最悪な野郎とは大違いだぜ全く。 思い出して眉間に皺が寄ったが。帰っていくイルカ先生を二人で手を振って見送り、 「よし、焼肉行くぜ!」 「行くってばよ!」 アタシの、今後は全く判らないけれど新しい生活は、焼肉パーティーで祝う事から始まったのだった。 -------------------- 2008.08.23 ← □ →