本.04 新たな生活の第一歩はお弁当作りから始まりました。 え?弁当箱はいつ買ったんだ? そんなヤボはいりませんから^^^^^^^^^ と、まぁ一体何年振りになるだろう、朝っぱらからの弁当作り。 自分が学生だった頃は、生きてたオカンに任せっぱなしだった。 そして、学生って職業(じゃねぇけど)を卒業し、弟が学生になった頃、それはアタシの仕事になった。 その仕事も、弟が嫁を貰いアタシが家を出た事で終わったんだけど。 「ま、こんなもんだろ」 アカデミーの授業ってのがどんな内容かは知らんが。 ナルトに箸ってのがどうもしっくり来ないっていうか、そんないい加減な理由から、 アタシはナルトのお弁当の御飯はオニギリにしてみた。 梅干におかか、塩昆布入りのオニギリを3つと、から揚げにレタス(多分)、卵焼きに爪楊枝を添えて、 それを持たせてアカデミーへ送り出す。ちなみに朝食はインスタントのうどんだ。(また!?とか言うな!) その後は、自分の中で段取りしていた掃除に洗濯、夕食の下ごしらえをする。 ちなみに、アタシの朝御飯は煙草で昼御飯はコーヒーだったりする。 不摂生だとは思うが、折角の美少女体型を、自称ぽっちゃり系にするのは忍びなく。 とはいえ、かつての自称ぽっちゃり系なアタシの食生活と何ら変化はないけれど。 まぁともかく、そんな感じでお昼頃には時間が出来たって事で、ナルトが描いてくれた地図、 それと財布・携帯・煙草を手にアタシは早速街を散策するべく家を出る。 初めてここに辿り着いて徘徊した時も思ったけれど、この街は本当に活気があると思う。 ナルトに対して、ちょっと(いやかなり?)陰険なのが気に入らないけれど、まぁそんなバカな大人なんぞは 居ても居なくても何ら障害はない、アタシがいる限りは。 そんな事を考えながら、並ぶ様々な店を冷やかし半分で覗き、アタシは昨日買い損ねたブツを探す。 お目当ての品は、裁縫道具だったりするんだが、正直ミシンがあるなら欲しいけど、それが存在するかどうか?が判らん。 たとえあったとしても、名前がミシンとは限らないし、違う名前だったら余計判らん。 だから、針と糸があれば十分、ついでに何か適当な布も買って…と、手芸屋っぽい店を探す中、 それ以上に探す必要があったある物をアタシはついに発見した。 したんだけど、どうにも直ぐにそれに飛びつくには躊躇われた。 何故か、というと。 (古い…古過ぎるぞ…。) 求人広告っぽい一枚の張り紙。そこには 時給八十五両、詳細はお気軽にお尋ね下さい。とある。 ただ、その紙がヤバかった。もう何ていうか古紙?ってくらい古ぼけてて 「おじさん、この張り紙っていつからあるの?」 アタシは張り紙の張られた八百屋のオヤジに可愛く聞いてみた。 「先月からだぜ嬢ちゃん!」 何か?この里じゃ1ヵ月で紙が古紙になんのか???それともオヤジギャグ? そう問いたくなるような、そんな張り紙だった。が、 朝10時から午後3時までって時間に惹かれた。しかも、その場所が 「アカデミーの近くじゃねぇ?これ?」 簡単な地図入りの張り紙に書かれたその場所が、アカデミーの側っぽいのがまた惹かれる原因で。 一応、覗きにだけ行って見るか。とアタシはその場所へ向かった。 「何つーか、お約束すぎだろこれ…」 アカデミーから少し離れた場所にあるそこは、その目的から考えれば立地条件は最高な筈なのに。 その上、店名も中々どうしてよさげだというのに、明らかにくたびれていた。 名前は【まんぷく食堂】、見た目ボロ。 おまけに、おまけがまたお約束過ぎてアレを通り越してレアだった。 「いらっしゃいませ〜」 人のよさそうなおばあちゃんが接客、厨房にいるこれまた人のよさそうなおじいちゃんの家族営業ってとこだろう。 アタシは下見がてら、中に入って”本日のオススメ”ってヤツを頼んだんだけど。 (あのじぃちゃん、宇宙人じゃねーの?) ともかく、見た目は普通むしろ美味しそうなのに、味が壊滅的刺激的過ぎだった。 一体、何をどうすればこの見た目からこの味が出るのか、それを聞きたい位に個性的なお味。 もし、このオススメの謳い文句が”オフクロの味”とかだったら、アタシなら切れてるかもしんない。 お前んとこのオフクロ今すぐ出せ!って。 大体、このじぃちゃんばぁちゃん二人でやろうってのも相当無理がある気がする。 店内はこじんまりして、客が目一杯入っても20人ちょい位だろうけど、それでも。 (年寄り二人にはキツイだろうなこれは…) そんな、気がした。 ただ、客が入りそうにないからキツイ事はないだろう、とも思うけれど。 あの求人は、もしかしたらこの古めかしい店に新たな風を齎す新人募集なんだろうか? だ、だとしたら! (アタシ以外に誰がその風を起こす!?) そう、アタシはこの店にアタシのこの里での使命を見出した。(当然無断で勝手に) ならば!アタシがやる事ぁただ1つ!! 「あの、すいません…」 「どうかしましたか?」 「実は街の八百屋さんで張り紙を見たんですが…」 「あれですか?あれねぇ、中々若い人が来てくれないから…」 「じゃ、まだ募集中なんですね?」 「二〜三日内に決まらなかったら、店を畳もうと思ってるのよ…」 キタ、ガチでキタ!もうこれは神のお告げっしょ?やっぱ使命っしょ? アタシの持てる全て、この店に捧げて目指すはチェーン展開!!(違うか) 「あの、アタシじゃダメでしょうか?」 「おやま、こんな可愛らしいお嬢ちゃんが来てくれたらありがたいわ〜…」 ばーちゃん、信じてねぇ臭い。 オホホ、と笑いながらもどこか遠い目っつーか、寂しい目してるし。 「アタシ、料理は得意です!やる気もあります!」 「本気なのかしら?ちょっとおじいさん!来て下さいよ!」 「どうした?」 「実はこのお嬢ちゃんが…」 アタシの本気、ちょっと伝わったのか、おばーちゃんはおじーちゃんに説明してくれた。 なのに、 「しかしな、もうこの店は…無理じゃろう…」 おじーちゃんは、完全に心折れてる臭かった。 ちょっと離れた場所に出来た、新しく綺麗な食堂に客が集中してるから、 今更どうしようもない。そう呟くじーちゃん。 「どうせツブれるんだし、やるだけやってみませんか?」 考えてみりゃ、失礼な言い方かもしんなかった。でも、 アタシはみすみす好条件の就職先を逃す程甘かねーんだよ。 「お嬢ちゃん、本気か?」 「ものっそ本気っす!ガチっす!」 「がち??」 「や、いいんですそれは!ともかく!」 「なら、やってみるか?」 「お願いしますうぅぅぅぅぅぅっ!」 成り行き、でも偶然でもなく。 アタシは念願の就職先(雇用・失業・健康保険等は無し)を自ら手に入れた! が、いつポシャるかはわかんないから三代目のじーさんにはまだ報告しなくていいか。 ってなワケで、前略、愚弟様。 お姉さまは、異界にて新たな就職先を見つけました故、ご報告いたします。 -------------------- 2008.08.25 ← □ →