本.08 ア タ シ が 一 体 何 を し た !? そんな、誰に向けていいのか判らない怒りと荷物を抱えたアタシは現在、 生まれて初めて(?)の全力疾走ってヤツをやっとります。 ゼェゼェハァハァ 息が上がるわ脇腹痛くなってくるわでもうヘロヘロ。 許されるなら今すぐ立ち止まりたい、けど許されないから走る!と、 追っ手から逃れる為に、必死で走るアタシはメロス。 そうなった原因は、多分知らないけど絶対そう! 遡る事数十分前及び、数日前デスカコノヤロー!? いつも通りの通常営業は、いつもの通り何事も無く終了。 まかないを狙い、現れたアスマさんと雑談しつつ、アタシは後片付けをしていた。 「最近何か変わった事はないか?」 「変わった事は特に無いですね、うん無い筈です。」 むしろ、アナタの質問の意味がアタシゃ判りませんよ。 「いや、最近な?変な野郎がウロついてるって小耳に挟んだんでな…」 「私は聞いた事ないですよ?」 そう言いながらも、もしやあの野郎か!?と、アタシはある男の事を思い出した。 狐の面を付けた、カカシじゃないナナシバージョンのあの野郎を。 (まさかあの野郎、マジで嫌がらせするつもり!?) 「何か思い出したか?」 「多分気のせいだと思うので…。」 アタシの中で、変な野郎=狐野郎でナナシ(一応カカシの時は外れてる)の図式が出来上がってる。 故にアタシには、アイツ以外に変な野郎は思い浮かばなかった。 通常であれば、思い浮かべる”変な輩”をうっかり除外して。 「まぁ、用心に越した事ぁないからな。気を付けておけよ?」 「はい、判りました。」 普段なら、戸締りする時間まで居る事なんかないアスマさんが、 何故かアタシが戸締りするのを確認してから帰って行く。 その背中を見送り、不意に思い返すさっきのアスマさんの忠告の言葉。 アタシはそれと同時に、一つの不審物をようやく思い出した。 鞄の奥、突っ込んでクシャクシャになった一通の封筒。 数日前店のポストに投函されてたそれは、アタシ宛だったまではよかったんだけど。 よかったのはそこまで。それ以下が問題だった。 消印及び送り主の記載等一切ないその封筒は、あきらかに直接投函されたようで、 またその中身ってのがおかしな物だった。 「そういや、これって変な部類に入るんじゃねーの?うっかり忘れてた…。」 封筒の中に入っていたのは数十枚の写真。 アタシがナルトと買い物している姿だとか、店先で掃除をしていたりだとか、 0円スマイルを振り撒いてるのだとか買出ししてる最中のものだったり。 店に向かう途中で小銭を拾ってる瞬間のものまであった。 「はっ!?まさか…」 小銭のネコババ疑惑でアタシを脅そうと!? いやいや、この里に警察はない。つまり! ”落し物は警察に届けるんだよ?”という教えなど無い!とアタシは願う。 たかが二両(20円?)ごときで脅されてなるものかっ! アタシは拳を握り締め…たついでに証拠写真も握り締め、本格的に証拠隠滅を図るべく、 再び店に舞い戻った。 それが間違いの元でしたー。 店の台所のシンク内、アタシは写真に火を付けて炭化させる事に成功した。 ついでに他の写真も(ナルトとのツーショ写真は貰っておいて)一緒に炭化させて水に流した。 「OK、任務完了ーっと。」 フッ…これで全てが無に還った。これでアタシを脅かす物はない! 今日は仕入れた品が多めに余ったから夕飯は豪華になるかもしれん! そんな、ゴキゲンなアタシが一難去った安心感から鼻歌歌いつつ再び戸締りをしている時。 「ちょうど良かった。君に聞きたい事があるんだ。」 アタシの腕を掴む男が現れた。 もう一人、共に並ぶ男の方はニヤついてて、気分悪ぃっつーかキショい。 「私に何か御用ですか?」 「受け取ってくれたかい?綺麗に撮れてただろう?」 一応、猫は着込んだまま、0円スマイルと共に尋ねてみる。 内心は、お前等誰?つか犯人お前かよ!なんだけど。 野郎二人はアタシを壁際まで追い込み、アタシを間に挟むように立つと 「君、結局どっちが本命なんだ?」 「俺の方だろ?」 宇宙語を話し始めた。 つか、その言葉の意味をアタシは瞬時に理解。そして拒絶反応を示し、 野郎二人が何を言っているか?を理解する事自体を拒絶した。 「意味が良く判りません。」 「恥ずかしがらなくてもいいんだ。正直に言ってくれ。」 思いっきり棒読みしてるんだが。 一体棒読みの何処に羞恥が隠れてんだ?訳判らん。 「俺達は一応話し合ってさ、同時でも構わないって事になったんだ。」 はぁ?大丈夫かこの二人。 構う構わない以前に、生じてる誤解を理解してくんねーかな。 「あの、お客様。何か勘違いされてるようですが。」 「君さえよければ、日替わりで俺達と…」 日替わりはランチだけで十分じゃ。 一向に会話が噛み合う気配がない。むしろ聞く気もないんだろうバカ男二人は アタシの腕を掴み、強引に何処かへ行こうとする。 「っ離してください!」 「だから、恥ずかしがる必要はないから。ねっ?」 ねっ?じゃねぇよ! これのどこが恥ずかしがってるか、30文字以内で説明してみやがれっ! 出来たら何処でも着いてってやらぁ! そんな、アタシの日本語は口に出そうが出さまいが通じる筈もなく。 「バカ相手にしてる暇ねぇんだよ!クソがっ!目障りだから消えうせろやボケが…。」 当然アタシがブチ切れるのも当たり前で。 強引に腕を振り払い、言い捨てたついでに鞄に入ってた食材の内の塩を撒いてやった。 「一度、キチンと話し合おう。それがいい!」 「そうだな、お互いを知れば何かに気付くかもしれない。」 一切話しが通じない、会話にならない上に、どこまで勘違いしてるのかも不明な奴ら相手に 塩撒いても無駄だと悟ったアタシ。 あれだ、無視が一番だな。と、二人で相談し合ってるバカは放置して、一人そこから離れた訳ですが。 「待て!」 ハイ判りました。って誰が待つか! 少し離れた場所から、小走りで家に向かい掛けていたアタシの後を、追いかけてきた二人のバカ。 人間、追われれば逃げたくなるのが本能ですから? それが例え、追っ手が警察じゃなくても同じですし? ようするに、人は追われれば逃げるものなんですよ! アタシは、チョイスした鼻歌が忍たまのEDだったからこうなったに違いない。そう後悔しつつ、 食材の入った重い荷物と後悔を抱え、街中を疾走するハメに陥ったのだった。 -------------------- 2008.08.31 ← □ →