本.20 「…………。」 「…………。」 で?話ってのは何なんだ???? こう、物思いに耽って遠くを見つめる(当然遠い目で)カカシは、 閉口したまま一向に話を切り出そうとしない。 人をこんな遠くにまで拉致っておきながら、 いまさら口篭るとかそんな恥じらいいらないから! と、カカシを見れば 「え〜っと…?」 「…………。」 アンタさっきまで遠くを遠い目で見てたじゃねぇの?ってカカシの妙に真面目な視線が アタシをじーっと見てて。 何だかなぁ、一体このアタシに何が話したいというのか。 この最近は大人しくしてた筈だから、また文句言われる事はないと思うんだが。 やっぱあれ?ここは大人なアタシから話の糸口を提供してあげて、 スムーズに会話出来るよう気を回し…って何でアタシがそこまでせにゃならん! 「カカシさん、話って何かなぁ…」 ここはもう直球勝負で行っちまうが一番!と、再度カカシを見上げてみれば 「あそこに見える墓にさ、俺の親友も眠ってるんだよ…」 何かを思い、少しだけ顔を歪ませてそう呟いた。 何だこの妙なシリアス展開は。 アタシ、そういうシリアス展開超苦手なんだよね、根がギャグ基本だから。 かといって、だ。苦手だからって茶化したりボケたりする程KYではない。 困った、どう突っ込むべきか判らんよマジで。 「オレの親友はちょっと特殊でさ、これ…アイツの形見なんだよね。」 「はぁ…。」 そして、また唐突でいきなり展開っつーか。 座ってるアタシの隣で立ってたカカシは腰を下ろし、またアタシをじーっと見つめて 自分の左目を指差しながらそう言って笑う。 笑う、ってもこう苦しそうっつーか苦笑い?そんな表情で。 何だかなぁ、この人もやっぱあのガキ共と変わらんっつーか。 何でこんな顔してまで笑おうとすんだろうか? 「あのさ、そんな顔してまで笑って言わなきゃならない事な訳?」 「そういう言い方って酷くない?」 いや、酷いのは今のアンタの顔だから! 「やっぱアレだよね、カカシさんもナルトとあんま変わんねーよ?」 「オイオイそれはどういう…」 「笑って誤魔化そうとする位ならさ?笑わない方がよくね?」 「別に誤魔化したいとかそんなんじゃなくて…」 「で?その親友の形見がどうしたの?」 アタシをわざわざこんな場所にまで拉致った挙句に親友の紹介とか、訳判らんから!! つかマジで話がそれだけっつーならアタシ暴れるぞ。 「失敗だったんだ…。」 「だから何が?」 「や、失敗じゃない。判断ミスっていうかさ…」 「ゴメン全く話が見えないからストレートに言ってくんねーかな。」 「身も蓋もないよね、ちゃん…。」 遠まわしに話してアタシにそれを察しろっつーのが土台無理な話だとコイツは思わんのだろうか。 阿吽の呼吸っつーのは、築き上げていくもんであってだね、ゴニョゴニョ。 「アイツはさ、俺を庇って命を落とした。で、息を引き取る寸前にこれを…」 「くれたんだ。よかったじゃん。」 「良いわけないだろっ!」 逆 ギ レ か よ ! 「うちは一族の落ちこぼれって言われ続けたあいつが…やっと写輪眼を覚醒させたっていうのに…」 「それで?」 「上忍就任祝いだ、そう言ってアイツは…」 「お祝いに貰ったんならいいじゃん。」 「あの時、オレがもっと早く…気付いてればアイツは…」 「あのさ、だから何が言いたい訳?」 物思いに耽ってたと思えば逆ギレするわ、今度は自虐的思考ですか???? マジでアタシがここに居る意味が判らんわ…。 「アンタさ、もしかして『あの時オレがあんな事しなかったらアイツは今頃元気に』とか言いたいんじゃないだろうな?」 「当たり前だろ!?あの時あんな事さえなけりゃ、アイツは今のオレ以上に…」 「でも実際はもう死んでいねぇじゃん。今更どうしろっての?」 「お前はアイツを知らないからそんな事が…」 お約束過ぎて欠伸が出るか思たわ。 「何なの?親友が死んでアンタが生き残って何が悪い訳?じゃアンタが死んで親友が生き残ればよかったとでも?」 「そうじゃない!そうじゃないんだ…オレは…。」 「あのさ?何も知らないアタシに悟れってのは無理だと思わない?」 「オレは別にそういうつもりじゃ…。」 「アンタさー、その親友ってのがアンタにくれたそれ…要するに要らないって事?迷惑な訳?」 「あーっもうそうじゃなくて…。」 「アンタさ、ありがたいと思うならともかく、何で未だにグズグズ言ってる訳?」 そりゃ自分にとって大切な相手が死んで、引きずらない奴なんかいないかもしんないけどさ。 ぶっちゃけそれとアタシの拉致と何の関係がある訳!? 言いたいことの半分も言えてない臭いカカシは、 未だ旨く言えないのか、頭抱えて溜息をついてる。 「カカシさんのお友達、可愛そうだわ。」 「なっ…」 「死に際にさ?自分の大切な物渡せる親友がいて、良かったんじゃねぇの?」 「それは…っ…」 「それを!貰った方は訳もわかんないでウダウダしててー。要らないなら返せば?」 「返す…ってお前…」 「潰すなり何なりすりゃいーんじゃね?」 「お前…ホント人事だと思って言いたい放題だね全く。」 「だって人事だし、まったくもって人事デスヨ?」 男のクセに何いつまで女々しい事に拘ってんだろうかこの野郎は。 まぁ?上忍はたけカカシにんな事面と向かって言う奴はいないかもしんないが。 「それさ、もうアンタの一部じゃん。」 「………。」 「アンタの眼でしょ?元の持ち主がどーとか、関係なしにアンタの眼でしょ?」 「………。」 「ウダウダ言ってないでさ、親友に感謝して大切にすりゃそれでいいじゃん。」 「それは…」 「アンタの一部になって、アンタの眼になってさ?死んで何も残らない残せない人よりすげー幸せじゃん。」 「幸せ…?」 「思い出に残れば十分!なんて結局口だけじゃね?人なんていつか忘れちゃうもんよ。」 「そんな簡単に言えるのは…」 「や、だからさ?例えばよ?死んじゃった人の事、誰が四六時中考えてる?」 「人はそういうもんだろ?大切な人が死ねば…」 「四六時中考えてんのは最初だけっしょ。気がついた時には”そういえば…”ってなってるもんよ。」 「そうかもしれないけど…でもそれで片付けられる程…。」 「でさ?結局アンタはアタシに何を言いたい訳?」 「…………何だったっけ?」 「シメるぞてめぇ…。」 結局、カカシ自体がアタシに何を言いたかったのか判らない時点で 今この時間は無意味に終わる訳で。 全く冗談じゃねぇっつーの! 「あ、思い出した。」 「今更かよ!!!」 ポンっと手を打ち、思い出したらしいカカシはアタシに再度向き直ると 「あのさ、アレ…」 「どれ?」 「いくら子供だからって、一緒に入るのはマズイと思わない?」 「どこにだよ…。」 「風呂?」 「…………は?」 「や、だからね、ナルトと一緒にいつまでお風呂に入るのかねぇ…と。」 「そりゃアンタ、死して土に返るその瞬間まで?」 「意味わかんないし!!」 「つーか何でアンタがそんな事知ってるんだ?」 「そりゃ………」 「そりゃ?」 「上忍の情報収集能力を侮るべからず?」 「あっそ……。」 飯食った後に重労働(運動)させられた挙句、その理由が宅の入浴方法ですか?? 「結局さっきアンタが語った親友の話ってさ…何だったの…」 「さぁ?」 この野郎、この期に及んで喧嘩売ってやがんのか!? っつーか、この男相手に本気になったアタシがバカだったんだろう、多分。 -------------------- 2008.10.31 ← □ →