本.22


別に、絶対に言いたくない、だとか話したくない知られたくない程の…って事じゃなかった。
誰にだって1つや2つ?ベラベラ話すべきじゃない事ってのがあると思うし。

流れっつーか雰囲気っつーか、うんまぁそんな軽いノリで
カカシに乙女の秘密を話したあの日から、
何つーかなぁ、カカシの態度っつーか雰囲気が微妙に変わった気がする。

ま、それは置いといて!だ。

目下アタシの頭を悩ませてるのは別の次元にある。
それは、昨日帰宅したナルトが開口一番におっしゃったとある事だったりする。





「ねーちゃん!ついにやったってばよ!」

何興奮してんだお前は!と一瞥し、

「何だよ、ついに何かやらかしてクビになったか?」

カカカと笑いながら晩飯の支度を続けていれば。

「ひでーよねーちゃん…。」

軽い冗談だっつーのにガックリ肩を落とし…どころか床に崩れ落ち床に手を着いて、
ズーン、っつぅ効果音を背景にナルトは項垂れっちまって。
あらいやだ、この子ったらいつからそんなグラスハートになったのかしら?
その程度で壊れるようなヤワなハートなんざ捨てっちまえ!じゃねーが。

「で?何だ?何があったんださぁ早く言え!」
「ムグッ…モグモグ……」

怒るだけじゃあきません!とアタシはサクっと味見(を兼ねた飴)にと、
揚げたてそして甘酢を絡めたての肉団子を1つナルトの口に放り込む。
咀嚼から数秒、モグモグゴクリ飲み込んだナルトは

「ついにきたってばよ!初のCランクの任務に波の国に行くんだってばよ!!」
「Cランク…ってんなスゲーの?」
「スゲーんだってばよ!今までの任務はDランクの下の下の仕事ばっかでさ?」
「雑用みたいなもんか?」
「雑用って…ひでぇ!っそりゃ…迷子の猫探しだとか草むしりだとかそんなのばっかだったけど…」

仕事内容を説明し始めた。
そう、し始めたのはいいんだが、ナルトよ、説明してる段階でお前が凹んでどうすんだ?
まぁ、任務っつー名前が付いただけのマジ雑用ばっかだった
昨日までを思い出したら凹みたくもなるだろうけど。

「ともかくっ!波の国まで護衛で行くんだってばよ!暫く帰ってこれないけど…」

ん?護衛で任務で家空けて?って流れははて、どこかで聞いたよう…なっ!?

「なぁナルト、その護衛する相手ってまさかジーサンじゃねぇだろうな?」
「何で知ってるんだってばよ!?」

いかんいかん、生活疲れかはたまた育児ノイローゼかは判らんが、すっかり忘れてた。
そういや初めて?の任務で結構遠く…なのか近くなのか距離感まで(も)は知らんが、
初めてのそれで確か…

(結構キツイ事になるんだっけか…)

やたら凶暴な奴と、白兎みたいな子供の二人組みにフルボッコされて、
肉体的精神的にも打たれて弱ってんでもって成長するナルトとサスケであった。みたいな?
確かカカシも怪我して、サクラちゃんも精一杯頑張って、だっけか。

「何時出発すんだ?」
「明後日!」
「そっか、なら荷物の準備しねぇとな…」
「そんなのすぐ出来るってばよ!」
「忘れモンないようにちゃんとやれよ?早めに。」
「わ、判ってるってばよ…。」

と、そこで一旦会話は終了、風呂→飯→談話→おやすみなさい、って毎度の流れになったんだが。





(初めての任務…か。)

半ば遠足(?)気分、大事になるとは全然想像してない下忍3人連れての任務っつーのは、
上忍とはいえ多分10円ハゲでも出来そうな位に神経すり減らしそうだ、と思う。

そして、初任務が想像以上にハードだった時、それに直面したガキ共の、
自分達が選んだ道がいかに厳しい物か?を知ったときの戸惑いや葛藤ってのも相当だと思う。

そんな戸惑いも葛藤も、知らずに生きていけるっつーんならそっちを選んで欲しい。
けどこの里に生まれて忍として生きる事を既に選んじまってる以上、それは避けて通れない道で、
アタシはただ、皆が無事に帰ってくるのを待ってる事しか出来ない。

何も出来ない不甲斐なさを嘆く程、人格者でもなけりゃお人好しでもねーが。

やれない、と嘆いてる暇があんならやってみようじゃねーか!と、
アタシはナルトの寝顔を見ながら、自分が出来そうな事、何かねーかと絶賛考え中な訳なんデスガー。





「ほれ、これ弁当な?」
「これって…」
「ピンクの包みがサクラちゃんので青いのがサスケの、黄色がお前んで茶色がジーサンの。」
「じゃこれはカカシ先生のだな!」
「そそ。んでこれを…っと…」

散々考えて、1日で出来る何かを考えて思いついて出来上がったそれを、
手渡し出来ないからナルトに預ける事にしたアタシは、
ナルトの分だけは自分の手で付けてやりたくて膝を付いてそれを腰紐に結び付ける。

「サクラちゃんのもサスケのもこうやって付けてやりたかったんだけどねぇ…」
「ねーちゃん…。」
「知らないジーサンもいるみたいだし、まいいっしょ。」
「これ何だってばよ?」
「お守りみたいなもん?この紐が切れた時にお前等の願いが叶うっつぅ優れモンよ!」
「す、すげぇ…」

いや、軽い冗談なんだが…とは今更言えず。

「お前のが蛋白石、サスケのが紅玉髄でサクラちゃんのが珊瑚。」

一応、こう見えても口先小手先指先だけは器用なんだよアタシ。
暇つぶしになりゃ…と旅行カバンの奥底に、
すこぶる安物の石だとか糸も入れておいたのを思い出して
手芸糸っぽい結構頑丈なそれらの糸をカラフルに編み込んだ。
でもそれだけじゃ味気ないっつーか芸がねぇし、
調べた誕生石を一緒に編み込んでストラップ風に仕上げてみた。
ちなみに切れたら願いが叶うっつーのはミサンガの意味をアタシが勝手に織り込んだ訳だが。

「腰紐に付けてりゃそんな邪魔にはなんねぇしな!石は誕生石っつってだな…」

理解出来るかどうかは判らんが、一応意味がある事だけは教え…と説明する中、
疑問符を浮かべたナルトがアタシの説明を中断させやがった。
ちきしょう!いい度胸してんじゃねぇか!

「なぁねーちゃん…カカシ先生の分は…」
「ある訳ねぇよ。」
「あはは…だよな………。」
「二人の分はお前から渡しといて。」
「絶対忘れずに渡すってばよ!」
「サクラちゃんはくの一とはいえ女の子なんだから、怪我一つさせたら…」
「絶対怪我させないってばよ!」
「サスケにも言っとけよ?」
「絶対絶対言うってばよ!」
「お前等も一応怪我すんじゃねーぞ?」
「気をつけるってばよ!」
「じゃ、気をつけて怪我しねーようにな?」
「行って来るってばよ!!!」

何度も振り返り、アタシに向かって手を振るナルトを見えなくなるまで見送ったアタシ。

こうして、暫く一人で過ごす日が続く訳だが………。






























「これ、ねーちゃんからみんなに渡してくれって頼まれたんだ!」
「何これ可愛い〜〜〜〜♪」
「お守りなんだって言ってた、これがサスケので…」
「………ふん。」
「ホントは自分で…オレのみたいに付けたかったって言ってたってばよ…。」
「…………そうか。」
「へぇ〜…で、ナルト。」
「ん?カカシ先生何か用か?」
「オレのは?」
「はいコレ!」
「弁当…ってそうじゃなくて!」
「何だってばよ…」
「オレには…それはない訳?」
「ある訳ねぇよ。って言ってたけど…」
「………だよね…そうだよね…あはははははは………。」

軽く悪意すら感じるのはオレだけだろうか。
ガキ共は、彼女の手作りだというお守りを嬉しそうに付け合いしちゃってくれてるし?
あのふてぶてしいサスケですら心なしか嬉しそうなもんだから
余計こうオレに対する嫌がらせっつーか差別化を図られてる気がして。

結構そういうのって堪えるもんだよねー、なんて考えながら先を進み、
太陽が真上に来た辺りで休憩を兼ねた昼飯を取る事にしたんだけど。

(……………えーっと…。)

一人、離れた場所で渡された弁当の包みを開いた中にそれはあった。
懐紙に包まれた何か?を開けて見れば

「青玉……?」

ガキ共が嬉しそうに見せ合ってた物と同じものがそこにあった。
確か、誕生日がどうとかってナルトが説明してたが

「どういう意味でここに入れてくれたんだか…。」

彼女の照れからなのか?それとも…はオレでは判らないが。
こうして子供達に知られないようそれでもオレの為にこれを彼女が
作ってくれたって事につい頬も緩む。

そう、本当に彼女がどうしてこっそりコレをここに忍ばせたのか気になる…が。
それ以上に気になるのは

「あは…あはははは………はぁ〜っ…」

そのお守りだという物が包まれていた懐紙。
それに書かれていた

”男らしく散れ”

その文字の意味が気になって仕方なかった。
これって一体……………。





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2008.11.12