本.24 連邦のモビルスーツと呼ばれるようになって数日、 アタシの元に、アタシの潤い達が帰ってきた。 顔付きっつーか、表情っつーか心構え?が、 行く時と比べて多少変わったのだろう(当たり前か) 出迎えた三人の子供達は多少の怪我は見られたものの、ともかく無事に帰ってきた。 それからの数日は、特に何ら変化があるでもなく、 通常通りの生活を送っていたのだが。 街の中、見掛けた事のない奴がチラホラ見え、 ランチ時間にも一見さんらしき人がポツリポツリと混ざり始めた頃、 ナルトがアレを持ち帰ってきた。 ”中忍試験志願書” それに、嬉々とその紙に名を書いているナルトを見ながらアタシは自分の記憶を辿る。 が、どうにも思い出せない。 覚えているのは、あの”茶釜坊主”が登場する?って漠然すぎる大雑把な内容だけで、 細かい流れだとか何だとか、全く思い出せん。 何だっけかな、思い出さないとマズイ事態がこの先にあったような気がするんだが。 はて?何だったか…と考えても思い出せないもんは思い出せん。 さして重要な事でもないんだろう、アタシはそう結論付けて、 ごくごく今まで通り普通の生活をすればいいのだ、と暢気に考えていた。 自分が何を忘れ、何を思い出さないようにしていたか? それに気付いた時、どれ程後悔するか? それ自体に気付く事なく…。 そんな、何ら変化の無い生活の中、 アタシにとって新たな出会いが訪れた。 込み合うランチタイムを乗り切り、一応の閉店時間である午後2時に店を閉め、 まかない飯を済ませて掃除して…と考えながら、店の入り口を片付けていた時。 ふと背中に視線を感じ、振り返ってみると 見知らぬ子供らしき3人がこちらの様子を伺っていた。 「ウチの店に何か?」 やたら目立つ3人の子供。 ん〜どっかで見たような気がしないでもないが、里の子じゃないのは何となく判る。 それよりなにより、その中の一人が背負ってるあの瓢箪は重くねーのか?と、 返事もしなけりゃ身動きもしない3人へ近付いてみて (ああ、確かこの子…) 茶釜ぢゃんコイツ、確か…ガアラ?我愛羅だっけか。 額にある”愛”の文字がチャームポイントのデコッパチじゃまいか!!と、 間近で見て初めてアタシは気がついた。 そう、気付いた瞬間アタシの中に沸いたのはすこぶるお節介な気持ちと未知との遭遇に沸いた興味だろうか。 「アンタらよその国の子でしょ?中忍試験でも受けに来た?」 「だから何だ…。」 「うわぁ愛想の無いガキだね。まぁどうせ昼飯食いっぱくれたんだろ?ウチの店にきな。」 ヒソヒソ、どうするか?と話し合う3人を他所に店に戻り、 「この時間、閉めてる飯屋多いよ〜…さっさと来る!」 裏口から表へ回り、店の扉を開けて…遭遇した未知の生物(子供だが)を招き入れたのだった。 大人しく待つ3人の飯の用意をしつつ、アタシはずーっと考えていた。 (この3人ってキョウダイだっけ?) 確かそんなのをどっかで見た気がするんだが、だとしたら似てねぇなぁ、とか そりゃもうイロイロ考えていた。 最終、ナルトと戦って改心する…じゃねぇけど、そこは覚えてる。 ただ、やっぱりそこに行き着くまでに非常に大切な何かが抜け落ちてる気がしてならない。 それも、相当量の情報っつーか記憶が。 漠然と覚えてるそれらが、かなり順番が入れ替わってて (アテになんねぇなあ、ホント。) 自来也のおっさん登場はナルトの修行見てくれる為だからそろそろで? えーっと名前が出てこない…あのヘビみたいなオカマみたいなのが出てくるのはそれより前だっけ? サスケやカカシが怪我すんのは試験最中…だったっけか? と、覚えてはいる。 覚えてはいるんだが、そうとう順序が入れ替わってる臭いもんだから流れとして 思い出す事が出来なくて、結果内容が無茶苦茶になるもんだから面倒になって、 (まぁいいか…) 結局そこに行き着いて終了…と、断念する数日が続く。 こうして店に、この3人を招きいれてどうこうなる訳でもなければ何かを思い出す訳でもなかったけれど。 何つーかこう、この里に来てポッカリ浮いてるような3人の子供を見過ごせるような 嫌な大人にはなりたかねーし。 何か思い出すかもしんねーし!と 「おまちどーさん。遠慮なくどーぞ。」 3人の前、やはりお子様ランチ風に仕上げてみた特製お昼ご飯を差し出し 「………………。」 「「「…………。」」」 テーブルの側、しゃがんで自分の膝に肘ついて顎乗せて、3人の様子を伺う事にした。 寧ろ、凝視している…が正解かもしれないこの場合。 アタシの視線を避けるように、黙々と食べる3人の子供。 そういや初めて店に来たサスケもこんな風に愛想のないハムスターみたいだったな、 と、思った瞬間 「……………何だ。」 「意味は無い、寧ろ意味を求められても困る。」 「…………。」 少し膨らんだ我愛羅の左頬をフニっと摘んだ、衝動的に。 こうして見てれば、ちょっと普通より愛想のない子供なんだけどなぁ、と、 その手は自然と頭へ伸び 「……何だこの手は。」 「気にするな、そこに頭があれば撫でたくなるのが人ってもんだ…。」 「…………。」 ナルトにするのとも、サスケにするのとも違う、 繊細で壊れやすいガラス細工を撫でるが如く手付きで頭をなでなでなでなで… 「いいねぇこの薄い反応。」 「…………。」 「いや、この場合は薄いというよりは無視されてると表現するべきか。」 「…………。」 「ガッツリ食って大きくなれよ?子供達よ…。」 と、抵抗しない事をいいことに延々頭を撫で続けた訳だが。 さすがに、食い終わるまで撫で続けたら飽きた。 「まぁ、死なない程度に頑張りな。ウチは安くて旨いってのが売りだからな、いつでもおいで。」 食べ残しもなく、綺麗になった皿を引き上げ 「幾らだ?」 「今日は奢りだからいいよ。だからまた来な!」 「幾らだ?」 「他はあんま旨くねぇからなぁ、良心的なウチに…ああそうそう…」 「幾らですか?」 「一応閉店は2時だから。まぁアンタらなら過ぎてても構わないか…」 「幾ら…だと聞いている。」 「奢りだっつってんだろ?ガキは黙って頷きゃいいんだよ。」 「「「………………………。」」」 しつこく食い下がる3人を威嚇して黙らせ、 「変な女だ…。」 「変なのは限界ギリギリのお前の前髪だ。」 「……………。」 つい生意気な口を叩く我愛羅を大人気ない態度で黙らせ、 心温まる交流(?)を交わしてお見送りし… 「ん〜…案外普通のガキじゃん…。」 「そう言えるのはちゃんだけじゃない?」 「貴様、どっから生えた?」 「生えてないから普通にいたから。」 「どこが普通だよ!!」 突如沸いたカカシに何故かイラっとして一発お見舞いして(鳩尾に) 店から叩き出して片付けて鍵掛けて 「オレに昼飯は…。」 「知らん!」 無視を決め込んで家まで猛ダッシュして帰ったのだった。 チキショウ、すっかり忘れてたがあの野郎のお陰でアタシは散々な目にあったんだっ!!! -------------------- 2008.12.11 ← □ →