本.40


上忍はたけカカシの猛攻を、家族一致団結して軽やか(必死)にかわしながら
過ごす毎日が続くも流石にカカシも飽きたのか?団欒にちゃっかり混じっててもあからさまな話題転換及び
精神的攻撃は徐々に弱まり、ふと気が付けばめっきりそういう話題も無くなったなぁ ────────── な平穏なある日。
アタシは常々考えていた事を実行する事にした。

「あのさ?暫く店休みにすっから。」
「え?何でだってばよ?」
「急…だな。」
「うん、ちょっとね ───── 旅行でも行こうかと思って。」
「それって…もしかしてオレ達も連れてってくれるってばよ!?」
「ナルト、確かお前任務が…。」
「残念だったな。悪いが今回はアタシ一人で行かせてもらうよ?」
「えぇぇぇぇっ!?一人で行くつもりなのか?」
「一体何処に行くつもりなんだ?」

そう、アタシはここへ来て数年が過ぎ、色んな事に遭遇し ───── 過ごしてきたが。
今回の最大の出来事も無事過ぎて?まぁこれまでの事をちょっと思い出したりしてたらフッと
どっか行ってみたいなぁ、そういやアタシ、この里から出た事ねーじゃん…と気付いてしまったのだ。
そう思ったら何つーかこう尻がムズムズしてきたっていうか、思いつきなんだけど ─── って回想してる最中、
そこまでアタシ達の会話に一言も口を挟まなかったカカシが開口一番おっしゃった。

「なるほど婚前旅行か。」
「サスケ ───── 。」
「判った。」
「ちょ!冗談だからクナイ仕舞えって!!」
「カカシ先生ってホント全っ然懲りないよな。」

瞬時に席を立ち、カカシの首筋に容赦なく当てられるクナイ。軽口に対応するのもこの数日で慣れた
アタシ達は(っていっても主に動くのはサスケとナルトなんだけど)見事な連携技でヤツの口を封じる。
肩を竦め、しょうがない感も露にカカシはそれ以上の軽口は控えるんだけども。
カカシの軽口なんて全然気にしない。だってアタシは既に、
キッチリ予定を組んでいる数日後の旅行に心躍らせていたから全然気にしないー。

「一体何処に行くつもりなんだ?」
「教えたら来そうだから絶対教えない。」
「だよな!カカシ先生絶対抜け駆けしてねーちゃんとこ行きそうだし。」
「抜け駆けや出し抜いたりは ─── 得意らしいしな。」
「お前等なぁ、ホント最近オレに対する態度、酷くないか?」
「全然?」
「当然の対応だ。」
「ま、子供の僻みなんかいちいち気にしてられないからいいとして。冗談抜きで何処に?」
「大丈夫だって。ちゃんと護衛頼んであるし。」
「は?オレ聞いてないってばよ?サスケは?」
「オレも聞いてない。」
「となると、やっぱりオレが ─── ってのはありえなさそうだしな。」
「だってアンタ等全員アタシの依頼断ったじゃねーの。」
「 ─── ぇ?」
「オレは聞いてない…。」
「オレも聞いちゃいないが…。」
「人づてに聞いたんだけどさぁ?一応アンタ等の誰かが付いて来てくれたらいいなぁって思ってたんだけど ─── 。」

そう、アタシは正式な任務の依頼をし、見事コイツ等全員に振られたのだ。
しかもその理由がムカつくったらありゃしねぇ。ムカつく通り越して、聞いた瞬間アタシは大いに笑ったのだ。

「ちゃちぃ依頼だな。そんなもんアカデミーの生徒でも出来るんじゃないか?ってね ─── ふふふ。」
「っそういえば…何かそんな事言ったような…。」
「気がしなくも…。」
「ないな、うん。確かにそんなような依頼があったけどCランクの中でも下の下だったし…。」
「お陰さまで破格の値段で護衛してもらう事になったわ!ちょうどアンタ等の初任務時みたいに…。」

アタシは、アテにしてた可愛い可愛いナルトとサスケに振られ、
妥協してカカシでもいいか ─── って折れてやったのに。なのに結果、初めての任務なんです!な
新米下忍共数人の初任務っつぅそこはかとなく危険漂うんじゃねーのそれ?な激安価格で初旅行に行くハメになったのだ。

「まぁ流石に?激安だからって新米下忍だけで護衛させるなんて事はないと思うからいいんだけどさ。」

だから妥協した。激安だったから妥協したさああ悪いか!

「な、なぁねーちゃん…。」

けれど、その”激安”の二文字にナルトが顔を顰め

「オレの思い違いじゃないなら…。」

さらに、サスケが眉間に皺を寄せ

「確実に何かあるから激安なんだろ。何で確認もしないで食いつくんだそれに…。」

カカシがガックリ頭を垂れた。三人三様、表現っつーか表情は様々だったが
一同にアタシを見つめる目が微妙に呆れてる上に怒ってるっていうか。

「ねーちゃんってさ…変なトコでケチなんだよな。」
「うっせぇ!」
「おまけに”安い”って言葉に弱すぎる。」
「っアンタまでっ!?」
「流石に野菜じゃないんだから安い=裏がある ─── って普通なら判るけどね。」
「きーーーーっ!悪かったな!」
「その依頼今から断った方がいいってばよ…。」
「再依頼しなおせばオレが受ける。」
「なっ!サスケに任せられっか!オレ!ハイハイっ!オレが護衛してやるってばよ!」
「オレも断った方がいいと思う。やっぱりそういう任務は上忍じゃないと。」
「っ大丈夫だもん!ちゃんと途中で我愛羅が迎えに来てくれるしっ!」
「「「 ──────────────────── はぁっ!?」」」

実は、アタシの初めての小旅行先っていうのは何を隠そう砂隠れの里だったりする。
別に砂とか砂とか砂まみれに興味は無かったけどタイミングが合った結果?行き先を砂隠れの里に決定したんだが。
アタシは以前から誘われていたのだ、我愛羅に”遊びに来ないか?”と。
発端はアタシがこの里から出た事もない、他国なんか見た事もない ─── っつった事なんだけど。
ナルト達と和解し、ちょっとだけ変わった我愛羅はこの里を離れる日、ワザワザ店に顔を出し、
可愛くない態度だったけどそこが萌 ─── えたんじゃない何ていうかツンデレ ─── でもないともかくっ!
そんな風に変われた事や、変わった姿がアタシの乙女心をゆっさゆっさと揺さぶったから
先ずはお手紙のやり取りからって事で文通を始め、最近それ(旅行)を思いつき今に至る訳だ。

「っていうか、知らなかったの?」
「聞いてないっていうかねーちゃんそんな事一っ言も言ってないってばよ!」
「オレも初耳だ。」
「オレに至ってはよもやの伏兵の存在に眩暈がしてるよ。」

っていうか、お前等全員アタシの親か!?何でイチイチそんな事報告せにゃならん!

「ともかくー。だから大丈夫な訳!」
「全然大丈夫じゃないってばよ!絶対反対!」
「オレも反対だ。」
「今すぐ依頼を断ってきて改めてオレに依頼しなおしてくるとするか…。」
「勝手やったら二度とウチの敷居跨がせねぇからな…。」
「そこまで嫌がらなくてもいいんじゃないか!?」
「カカシ先生はちょっと黙ってるってばよ!」
「話がややこしくなるからいっそ帰れ…。」
「オイオイお前等な…。」
「っていうかアタシの話聞く気ねーだろお前等…。」

何でだろう。何故この三人と話してるとこんな風に最後纏まりつかないっつーか
収集つかねぇっつうか、ドン詰まりじゃねーか!!!

「ともかくっ!アタシは行くからなっ!出発は明後日だ!」
「オレも行くってばよ!」
「任務ある奴は却下!」
「ならオレが…。」
「アンタ、確か明日から二日程そこの野獣と修行予定だった ─── よね?」
「…………………。」
「そ、そうだっけ?オレ記憶にないんだけど。」
「アタシの目を見てもっかい同じ台詞言えっか?」
「………………無理…かな?」

アタシは浅はかだったのかもしれない。
たかが数日の小旅行とタカを括っていたが。
よもやここまで大騒ぎされるとは ────────── ちょっとだけ泣いていいですか?
いや、その前に散々バカにされたんだから仕返ししねぇと。




--------------------
2009.08.08