本.41 散々っぱらバカにしてくれたお礼参りを無事済ませ、 護衛をお供に意気揚々とアタシは可愛い子ちゃんの待つ砂隠れの里へと旅立った。 護衛の人数は3人。たった3人ぽっちかよ!?な愚痴は出発間際に発した所で何の意味もなく、 本当に本っ当に新米な下忍少年達に命を預け、アタシ達は順調に旅路を行き砂隠れの里へ到着する ────────── 筈だった。 けれど、人生何処にどんな障害か待ち受けているか?なんざ見当も付かない。 ましてそれが命に関わる障害だなんて誰が想像しただろうか。 こんな事になるなら忠告通り”激安”なんて言葉に引っ掛かるんじゃなかった ───── なんて後悔ももはや無駄だった。 自らの手でもなく、事故でもない明らかに第三者からの行為によって人が簡単に命を失う様を見せ付けられ、 次は自分の番だと認識した人間にこれまでの人生を振り返ったりだとか 走馬灯のように色んな事が頭の中に過ぎるだとか考える余裕なんて一切無い。 ともかく、そんな状況に直面したアタシが出来た事といえばたった一つ。今置かれた自分の状況を冷静に受け止めるだけだった。 とはいえ、それでもまだ自分がこうなるに至る経緯を思い返す余裕がアタシには残っていたらしい。 ─── 何つーか、諦めるってホント簡単だわ。 瞬き一つ、たったそれだけの瞬間でアタシの回りの地面は赤い色に染まった。 アタシの前を歩く二人が崩れ落ちた事に気付いた瞬間、振り向けば後ろにいた一人は既に崩れ落ちてて。 身体から流れ出すその血によって見る見るうちに辺りを赤く染めていった。 勿論、アタシ如きに”今何が起こったのか?”を判断出来る程の判断能力などない。 皿に乗ってた唐揚げが減った理由とは訳が違うのだ。 だからアタシは今自分の周りで起こっている何かを知ろうとし、不運にも気付いてしまったのだ。 事の起こりと、自分も彼等同様そうなるのだという事に。 そして、それに気付いた瞬間にアタシの身体は地面に崩れ落ちた ─── となるともはや諦めるしか他はなく。 ─── 忘れてた…で済む問題じゃないよなぁ。 サスケが里に留まった事でアタシは忘れていたのだ、その存在自体を。 そしてその執念深い不快な存在と、不運にもアタシ達は鉢合わせてしまったのだろう。 つまりあちら側からすれば”坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”って事か。 ─── そりゃそうだよなぁ。 理由も判らない、けれど手に入る筈だった自分の新しい身体を手に入れ損ねた恨み辛みはハンパ無いだろうし、 その恨み辛みを延々持ったまま忘れる事も出来ず、そこにのこのこっていうかたまたま偶然その関係者発見した日にゃ そりゃ恨み節の一つも聞かせたいっていうか、晴らさずにはおれんだろう。 結局、アタシが撒いた種は見事花を咲かせ、巻き添えという不本意な犠牲を出した挙句自分に返って来たのだ。 事実、あのオカマ蛇は言った。 ”自分の前を通り掛った不運とこちら側に来なかったうちはサスケを恨め” ”何が邪魔をしたのかは知らないが、邪魔をしたその存在が全ての原因、恨むがいい” と。そう言われた日にゃアタシはアタシを恨む訳で?っていうか自業自得じゃねーか!と、 見に覚えありまくりなアタシは諦めるしかないんだが。 自分が死んだ事に気付かないまま死んでいったかもしれない下忍少年達にはどう謝ればいいんだろうか。 この世界情勢で忍って職業を選択した時点で死は隣り合わせなのかもしれない。 今ここで命を落とさなかったとしても、それこそ明日の日にも命を落としたかもしれない。 けれど、その原因が自分にあるって知ってる上に目の前であっけなく死なれた以上、アタシにだって思うところはある。 ─── もしかしたら、時間に遅れたアタシ達を我愛羅達が探しに来るかもしれない。 自分の撒いた種が原因、自分の所為で目の前で命を落とした子供。 ─── あの子達が探しに来てくれたら、助かるかもしれない。 沢山の可能性と未来を秘めた子供が自分の所為で死んだ事実。 アタシが今、ここで生きていける理由でもあるナルトとサスケと、 アタシをここに引き止めたカカシの事が頭を過ぎり、死にたくないと願わなかった訳じゃない。 けれどアタシは自分の記憶に残る自分の最も忌み嫌うあの場面が蘇ってきた瞬間、自ら僅かな望みも断ってしまった。 お腹と背中に刺さるクナイと、何故かオマケに貰った呪印からくる痛み。 その痛み以上に感じる痛みは身体に与えられる痛みと別の物で、アタシはまた同じ後悔する。 何故、ここに残ってしまったのだろうか?何故アタシだけ残ってしまったのだろうか? アタシがここに居なければ(残らなければ)彼等は死なずに済んだかもしれないのに ────────── と。 -------------------- 2009.09.07 ← □ →