本.42


「本気…か?」
「文句言いながらも付いて来てるじゃないか。」
「っそれは…。」

ちゃんを見送り、オレはサスケを連れて街を出た。勿論後をコッソリつけようなんて事微塵も思ってはいない。
ただ、今日明日と修行する場所がたまたま同じ方向にあるだけだ。
だから同じ方向へ進んでるだけだ!とサスケに言い聞かせ、真っ直ぐちゃん達の後を追う。

「バレたらどうなるか…。」
「一緒に居る時点で同罪だからな。」
「っオレは仕方なく付いて来た…っだけだ!」
「見失うなよ?」
「判ってる。」

あくまで主導はオレであり、自分は巻き添えを喰っただけを主張しようとする割には素直にいう事を聞き、
前方を行くちゃん達に気付かれないよう距離を保ちつつ、けれど決して追尾の手を緩めないサスケ。
オレの知る限りここまで真剣なサスケは見たことが無い。が、まぁそれも彼女を想う気持ちから来るものであり、
オレも人の事をとやかく言える立場じゃないのは明らかだ。

「ずりぃってばよ!」
「っナルト!?」
「サスケもカカシ先生も自分達だけ抜け駆けするつもりだったんだろ!」
「お前任務は?」
「一日二袋で一ヶ月分、合計六二袋のポテチでチョウジに代わってもらったってばよ…。」
「ウスラトンカチが…。」
「お前等も一応覚悟はしとくんだな。」
「っ判ってるってばよ!どうせカカシ先生が一番怒られるんだから構わねぇってばよ!」
「だな。オレ達は唆されただけだ。」
「お前等なぁ…。」

その上、オレ達の行動を既に読んでいたのだろう騒がしいのがもう一人合流する事になり、これは
バレたら完全にオレ一人が悪者でオレ一人がその報いを受ける事になるだろう確実に。

「絶対見つかるんじゃないぞ。」
「判ってるってばよ!」
「見つかるようなヘマはしない。」

だからくれぐれもバレるんじゃないぞ!?の意味合いは隠し、あくまで護衛を護衛してる事をバレるなとの
意味合いで二人に渇を居れ、一応滞りなくちゃん一行を追い続けたんだが。





「これからどうするってばよ?」

激安価格だった割にはしっかりした下忍を派遣したんだろう特に問題も無く、
あと僅かで目的地に到着する辺りまでやってきた。
何か起こる気配も無く、何か起きるんじゃないか?な予感も無く本当に何事も無くそこまでは辿り着いた。
一応念の為、サスケを先回りさせて目的地の様子を見に行かせ、ナルトには砂隠れから迎えは出たか?の確認もさせ、
先を行くちゃん達に決してバレないよう出来る限りの手を尽くし安全の確認を取った。

「もう少し様子を見て引き返すか。」
「それがいいかもしれない。」
「ねーちゃん意外と勘がいいしな…。」

これ以上、過剰な行動はちゃんの野生の勘に反応する可能性がある。
そうなると必然的にオレの寿命が縮む可能性が増し、行動の全てが単に自分の首を絞めるだけの愚かな行為と成り果てる。
引き際を見極める事も大切な任務の内だ。とサスケとナルトも同意した事もあり、
保っていた距離を徐々に離しオレ達はちゃん一行の護衛という依頼無き依頼を無事完了させ、
本来の目的地である修行場へ行こうとした ────────── のだが。

「どうした?」
「カカシ先生こそどうかしたのか?」
「いや、特に何かあるって訳じゃないんだがな。」
「サスケはどう思う?」
「特に何も無いとは思…う。」

戻るぞ!なオレの合図にオレも含め誰一人その場を離れようとしない。二人の顔を見れば何かしら思う事があるのだろう
釈然としない表情で、オレ自身どこか釈然としない漠然とした何かを感じていた。


「お前等の気持ちは判らんでもない。」
「っだろ!?」
「どう言えばいいのか判らないが…。」

ちゃんが動くと何か起きそうな予感がする。寧ろちゃんが行動して何も起きなかった事が今まで一度でもあっただろうか?
何かしら厄介事に巻き込まれがち、というか厄介事に招かれやすいというか、厄介事を起こすというか。
ちゃんの所為でもなければそういう環境に慣らされ過ぎたオレ達が悪い訳でもないが、

「どうも気になるんだよな。」
「オレもだってばよ…。」
「オレもだ…。」
「様子を見に行くか。」

気を揉んでいたところで自分達の中にある釈然としない思いが払拭出来る訳もなく、ならばいっそ安心出来るよう
立ち回れば良いだけの事、とすぐさま後を追ったオレ達。
その時点で、僅か先を行くちゃん達を襲う異変が起きていた事など誰が想像しただろうか?
オレ達がその異変に気付いたのは、後を追ったちゃん達との距離を僅かに縮め、
あともう少し先に行けばその姿が確認出来る一歩手前の距離での事。

空気に乗った確かな血の匂いがオレ達にそれを知らしめたのだった ──────────────────── 。





--------------------
2009.09.07