本.44 回復の兆しも無く、ちゃんは眠り続ける。 オレ達はそんなちゃんに何をしてやれるでもなく、 何時目を覚ますかも判らないちゃんが一人にならないよう必ず誰かが側に居るよう交代で彼女の側に居た。 けれど、ちゃんは一向に目を覚まそうとはしない。オレやナルト、サスケの声にも一切反応しない。 一体何時目を覚ますのだろうか?明日?明後日?それとも、このまま二度と目を覚ます事無く眠り続けるのか? 不安と焦りだけがジリジリと迫ってくる恐怖の中でオレ達は何の解決策も見付けられず、 なす術もなく、何一つ出来ない自分の不甲斐無さをオレ達は思い知らされた。 そして、時間だけが過ぎていく。 一日、二日、3日と過ぎ、十日、二十日と時間が過ぎ、明日で三十日になろうという日。 ちゃんの身体に異変が起きた。 ちゃんに刻まれた呪印。オレはそれにサスケに施した以上の強力な封印を施した。 これ以上、呪印が拡がらないようにした筈だったというのに ────────── 呪印は変化を起こした。 肩口に留め置いた呪いの印は徐々に拡がり、あっという間にちゃんの身体の全てを飲み込む。 「嘘だろ!?カカシ先生っ ───── 何だよこれっ!!」 その、信じられない光景にナルトは慌て驚き、同じく慌てるも言葉も出ず呆然とするサスケ。 オレは、そんな二人のように驚くでも慌てるでもなく把握した状況に打ちのめされていた。 ─── 何をしても無駄…って事なのか。 こんな風にならないよう唯一自分が出来る事として施した封印が何の効果もなく、こんな状況を招いた事実。 この手で封印し、少しでも状況を良い方向へ向わせようと行ったオレの行為が何の役にも立たなかった現実。 それはつまり、この後に待っているだろう結果をオレに突き付けた。 けれどオレは、自分が一番現状を受け入れられない事に気付いていた。 自分が覚悟など出来る筈もない事も判っていながらそれでも 「二人共 ───── 覚悟しておけ。」 そう二人に告げた。そして ──────────────────── 。 ちゃんが眠り続けてちょうど三十日目。 二度と目を覚ます事もなく、眠ったまま静かに最後の時を迎える事になるだろうと誰もが思った日。 「ふぁ〜〜〜〜〜っ………よく寝たわぁ。」 首をコキコキ鳴らし、ちゃんは目を覚ました。 その身体を覆い尽くした呪印の全てを跡形も無く消して。 -------------------- 2009.12.16 ← □ →