本.49


(火の無い処に煙が立った翌々日のランチタイム)



お陰さまで本日もランチタイムは大盛況 ─────────────── の筈が。

───── 何でやねん!!

そう突っ込まずにはいられない事態が起きていた。
前まんぷく食堂から今日まで、昼のランチタイムに客足が途切れた事は無い。
なのにそれなのに。ランチタイムに客がゼロという有り得ない状況にアタシは置かれていた。

「何で………。」

いやホント、何で?何で客が来ない訳!?
心当たりは有りすぎて無いっつぅか、いややっぱり心当たりは無いし?
何度か店の外まで出てみたけどそれらしい客の姿すら辺りには見えないし?

「食中毒出した訳でもないのに…何でよっ!」

このまま客が一人も来なかった場合。
ってそんな事は想像するのも恐ろしいけどもし、客が一人も来なかったら今日仕込んだランチメニューの
材料代は誰が弁償してくれるんだ!?って頭抱え込むハメに陥ったのは開店5分前から10分強の約16分間。

「ま、まぁ……うん。バレなきゃいいか。っつぅか別に問題ない」

そこから更に6分弱、頭抱え込んで考えたが。
こうなったら仕方ない。幸い今日のメニューはトンカツ定食だ。
午後から急遽カレーを仕込んで明日のランチメニューをカツカレー定食にすればいいうんそうしようそれしかないよもう…。
っていうかご飯どうすんの!?アタシはトンカツよりもご飯の行方を心配するべきだったのに!

「この分じゃマジで客来そうな感じないしな…。」

しょぼーん…って噴出し文字を背負い、手付かずのご飯を冷凍保存する準備を始めたのだった。

思えばこれが、始まりの合図だった……。





それは、悲しみに暮れながら炊飯器の飯を冷凍保存するのに冷ましてる最中だった。
突然現れたナルトと、その後に着いて店に入ってくるサスケ。

「ねーちゃん来たってばよ!」
「は?」
「は?ってどうかしたのか?」
「どうかしたかもこうしたかもねーだろ。」
「何か怒ってんのか?」
「別に怒ってねぇよ傷付いてるだけだ。」
「何でだよ何かあったのか!?」
「お客さんが…一人も来ない………。」
「ねーちゃん何言ってるんだってばよ。今日は貸切にしてって頼んであったじゃん。」
「何それ聞いてねぇよ!」
「ちゃんと言ったってばよ!なぁ?サスケ!」
「昨日…飯の時に言った。朝出掛けに表に貸切の張り紙オレが貼っておいた。」
「…………………………っそう。」

いきなりの登場に驚いたのは勿論だが、その台詞にさらに驚いた。
そして、冷や飯食わす訳にはいかないからもっかい炊飯器にご飯を戻して保温しながら昨晩の事を振り返ってみる。

───── やっぱ覚えてねぇ…。

自分の記憶を掘り起こすように、1時間刻みに昨日の夜7時半まで遡ってみたが全っ然記憶に無い。
けれど、ナルトやサスケが嘘を付く理由も思い浮かばなければ素振りも無かった。
という事はやっぱりアタシがド忘れしてんだろう。
一体何人で貸切にしたかは知らんがともかくこれで冷凍ご飯に冷凍庫を占領される事は回避された。

「で?何人来るんだ?」

先ずは人数分の皿から用意して、人数分のカツをサクっと揚げて…と考えながら人数確認をした時。

「ちょ…アンタら一体何の会合する訳!?」

取り合えず名前を全部羅列すんのも面倒な人数が店内になだれ込んで来た。

「おねーさんこんにちはっ!」

女の子を代表して挨拶してくれるのはサクラちゃん。そして男の子の代表はさっきのナルトとサスケだとして。

「上手いモノを頼んだよ、。」

綱手ねーさんまで来るってマジでアンタ達何会合っていうか何か仕出かしたんじゃねぇだろうな。

「おっ、おう…任せろ…。」

ぶっちゃけ意味解んねぇ。解んねぇけどどうこう言ってる暇もどうやらアタシには無いらしい、ってか無い。
全員が店内に収まったと同時に揚げ物用の鍋を火に掛け、人数を数えて(15人もいやがった)冷蔵庫から下準備をしてある
カツを取り出そうと冷蔵庫を開けた瞬間。

───── ちょっ…この忙しい時にいぃっ!

冷蔵庫の向こうに広がってくれた茶の間に眩暈がした。
そして開けた時と同じ速度で瞬時に冷蔵庫を閉め、思わず頭を抱えそうになるのをグッと堪え、再度冷蔵庫を開けて
何事も無かった顔でカツを取り出し頃合を見て揚げ始めるが。

───── これマジでどうにかしないとシャレにならんわ…。

暇な時なら辛うじて許せるとしても、今このクソ忙しい時にまでこんな状態は冗談でも笑えねぇ。
客席側に背を向け、出そうになる溜め息を堪え、カツの様子を見つつ皿を出そうと棚を開いて再び固まる事3.7秒。
今度は棚の向こうに茶の間があった上に向こうに居たツインテールの女の子と目が合った(しかもバッチリ)。

───── おー元気そうだなぁってそうじゃないだろアタシ。

冷蔵庫に次ぎ、棚の扉も開け閉めを瞬時に繰り返し皿を取り出しキャベツを盛る。
(つい大目に盛ったのは消してヤケになったからじゃない。)

───── これ、マジで余裕こいてる場合じゃねーかも。

原因さえ解れば対策が練れる。
その原因を早急に探らなければアタシは扉を開ける都度このぶつけようのない怒りを拳に溜めなきゃならない羽目になる。

───── 近い内に連絡して原因究明させよう。

15人前のトンカツ定食を用意するまでに計4回茶の間を見たアタシは、そう心に固く誓ったのだった。















(火の無い処に煙が立った翌々日のランチタイム。客side)



********** 前日、店前道路北側の木上占拠チーム **********

「今日でハッキリさせるわよ、いの!」
「解ってるわよ。そうさせる為に綱手様にも来てもらったんだから!」
「念の為に張本人のイルカ先生も連れて来たしね。」
「私達の勝利は見えたわっ!でしょ?ヒナタ!」
「(ごめんなさいごめんなさいお姉さんごめんなさい………。)」
「で?本当なんだろうね。がイルカと好き合ってるってのは。」
「「勿論ですっ!!!!」」
「(うわぁん!ごめんなさいごめんなさいお姉さんごめんなさい………。)」」










********** 前日、店前道路南側の木上占拠チーム **********

「見たか?サスケ。」
「ああ…確かに見てた。不知火ゲンマをジッと。」
「連れて来て正解だったのかな、本当に。」
「何故だ?」
「だって…っていうか何でそんな顔してられんだよっ!さっきからカカシ先生の殺気が貫通してんのにっ!」
「仕方ない。耐えるしかないオレにアレは止められない。」
「っそうかもしんないけど………。」
「お前らどうかたのか?」
「「((アンタが正面にいるから殺気が貫通してんだよっ!))」」










********** 前日、店前道路東側の木上占拠チーム **********

「自信はあまり無かったが…やっぱり間違いないな。」
「ああ、間違いない。」
「年齢差は多少気になるが本人同士の問題だしな。」
「ああ、年齢差を考えればあまりお勧めはしたくないがこればかりは…な。」
「オレ達の勝ち…か。」
「あっけないものだな。連れて来るのには難儀したが。」
「で、本当に銭湯の女湯を覗ける絶好ポイントを白状するんだな?」
「「((やっぱり間違いじゃないのかコレ………。))」」










********** 前日、店前道路西側の木上占拠チーム **********

「なぁシカマル。」
「どうしたよ。」
「やっぱりオレ達…負けか?パックン連れて来れなかったし。」
「いや、多分オレ達の勝ちだな。パックンは論外としてあの二人連れてきたのオレ達だぜ?」
「そうか?その割に余裕な顔してるみたいだけど…。」
「あれのどこに余裕あんだよ。それにヒナタ見てみろよ泣いてんじゃねぇか。」
「…………………。」










********** 前日、店裏側道路の木上占拠チーム(前日、店前道路西側の木上占拠チームに連行されたチームとも) **********

「おいカカシ。」
「何だ。」
「どこ見てんだ?」
「お前も含めて怪しい奴全部に決まってんだろ。」
「だから余裕が無いにも程があんだろって言ってんだろ昨日から。」
「五月蝿い。」
「大体怪しい奴って何だ。誰と誰が怪しいんだ?」
「だから言ってんだろ。お前も含めて全部だ。」
「まさかとは思うがガキは論外だろうな?」
「…………………悪いが黙秘だ。」
「(どうしようもねぇな面白すぎて。





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2010.03.10