本.52


───── 面倒っつぅか厄介だよなぁ全く…。

何が理由で何が原因でアタシが追われる身になったのか?は全く見当がつかないが、
ここまで執拗に追い回された以上アタシは黙ってるつもりはない。
やられたらやりかえす、がモットーだしマジで理由も無くこんなマネされて黙ってられっか!
と、山頂目指して歩きながらこれからを考えた。

───── 多分…。

アタシの予想が外れなかったら次に現れるのはおそらくシカマルとチョウジ。
お子様タッグの中で最もアンバランスながらも最もチームワークの良い二人の事、どんな手を使ってくるか解ったもんじゃない。
が!アタシにはあの子達に無いものがある。
多少無駄に過ごしたものの、アタシには年の功がある。

───── ラスボスは…。

そしてラスボスはおそらくカカシだろう。
アタシに痺れ薬をくれた時点でアスマさんはドロップアウトしてる筈だから実質敵は一人。
まぁラスボスかもしんないけど事を起こした首謀者ではなさそうだし、さてどうしてやろうか。

───── それより…ん〜…?

山道を登りつつ、対策を練りつつ…そういやアタシは何で山に登ってんだっけ?と、ふと基本的な部分を思い返した。
よくよく考えてみりゃワザワザ人里離れて人目避けて山に登ってまで直に連絡する必要はあったのか!?
こんな訳解らん状況に追い込まれて、そのオマケか何かはそれこそ解らんが。

───── 何か…間違ってねぇか?

足を止め、ボリボリと頭を掻きつつポケットの中から携帯電話を取り出し、
アタシはこれを使って何をしようとしていたか?をもう一度考えてみた。
自分に起きてる摩訶不思議現象。
それを自力でどうにか出来そうにないと判断したアタシはどうにかしてくれそうな奴に
どうにかしてもらおうと連絡を試みるつもりで山頂を目指してる。
連絡するのに何で山頂なのか?ってのは使えないはずの携帯電話が使える事実を
イチイチ説明すんのが面倒だったから人目につかないように山頂を目指してる訳で…ってここまで来て気付くのもアレだけど。

───── メールした方が早くね?

会話しようとしたから人目につかないようにって思ったんだが、メールするだけならトイレでだって出来た。

「……………気付けよアタシっ!!!!」

意味不明に追い込まれた状況で気付いた現状を呪っても仕方ない ────────── が。

「まぁ仕方ねぇか…ん〜…どうにかしろ?とかでいっか。」

メールで用件が済むならそれに越した事はない。
サクッと用件をメール送信し、携帯を再びポケットに仕舞い

「おーい…シカマルー!チョウジ!居るんだろー?降りてきな!!」

一定距離を保ってアタシの後を付けて来てる二人を呼んだ。(二人対策はメールを打ちながら思いついた。)

「やっぱり気付いてたか…。」
「何時から気付いてたんだよー…。」
「しょっぱなからあんな風に見張られてりゃバカでも解るわっ!」

後はこの二人がアタシの持ち掛ける相談っつぅか商談に乗るかどうか?だ。

「さてお二人さん、ものは相談だがアタシと手ぇ組まない?」
「どういう事だよそれ。」
「オレはシカマルに従うぜ?」
「ちょい耳貸せ。」

アタシが思いついた策…ってのはその場凌ぎの思いつきなんだけど。
山頂にはおそらくラスボスが待ってる筈。
山に足を踏み入れた時点でアタシの目的地が山頂だと気付いてるなら先回りしてる筈だし確認してみれば案の定、
カカシは山頂で待機してるってシカマルは簡単にゲロってくれた。
そう、アタシの用事が既に済んでる時点で山頂に登る必要は無くなってる訳で?
なら待ってるからってアタシが山頂に行く必要はこれっぽっちも無い訳だ。
一体何が目的で総当り戦でアタシに挑んでんのかは知りたくもねーが、
アタシは自分の用件が一応片付いたからついでにそっちも片付けてやろうじゃねぇか!と思い立ち

「で?どうする?」
「面白そうだなそれ…。」
「じゃシカマルは乗るな?」
「いいぜ?」

山頂で待つカカシを誘き出す役にシカマルを任命し

「チョウジは?昼飯1週間でどう?」
「やるやる!!!!!!」
「んじゃ…二人共後はよろしく。」

チョウジにはここに来るまでに脱落したあの子達を集めるよう指示をした。
そしてアタシはのんびり山を下って家に帰るだけ。
家に帰って全員雁首揃えて帰ってくるのを待つだけだ。

───── さてどうしてくれようか。

どんな方法で揺さ振りをかけてやるか?
アタシは家を出た時とは全く逆の妙にウキウキした気持ちと足取りで家に戻り ────────── 知る事になる。
この数日、何故アタシの周りの奴等の様子がおかしかったか?を。





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2010.04.23