03.知らない世界…でこれから生きる私はペット!?



昼寝をしていただけの私を襲った突然の不運。
それが夢か現か幻か?は判らないままに3日という日が過ぎた。
そして4日目に”これは夢じゃなくて現実だ”と認め、5日目に”これからどうすればいいのか?”を悩み、
6日目には悩む事にも疲れて7日目の今日、私は全てを諦めた上で開き直る事にした。
現在この一週間に得た知識を反芻する真っ最中。

「時代が…何とか時代だったっけ。」

呆けた状態で俺様に連れられて移動した数回。
その最中に見かけた人と景色を見て導き出したのは”今が私にとっての今じゃない”事だった。
しいて言うならテーマパーク時代っていうかそういうのにありそうな時代っていうかそんな感じ?
自慢じゃないけど私は”賢い”と称される人の間逆に立つ側の人間だからマジで判らなかった。
縄文とか弥生とか、あと奈良平安鎌倉室町でもないのは何となく判る土器も無かったし麻呂も居ないから。
けど、農民?みたいな人達を見かけたからそういう時代なんだろうなぁってのは理解出来た漠然とだったけど。

「そういや…。」

時代背景以外にも判った事もある。
私を親(烏)の元から連れ出し里親となった電波な不思議ちゃんでサバゲ好きのミリオタな俺様さんが実は忍者だった事。
その”俺様”っていうのは名前じゃなくて自分の事を示していて”猿飛佐助”っていう立派な名前がある事。
そして、佐助さんは見た目に反して優しいという事も判った。

「案外っていうか結構親切なんだよね…。」

現状が受け入れられなくてどうしていいか判らなくて、泣けてご飯どころじゃない私を心配そうに眺めていた佐助さん。
親鳥から離されて食欲が無いんだろうってわざわざ活きのいいピッチピチのミミズを探して持って来てくれた時は
違う意味で泣けたけど、ミミズを必死の形相で拒絶した私を見て”人の形してるから人と同じ物食べるのかもしんないね”って
言ってご飯粒に海苔巻いて渡してくれた時はこれまた違う意味で涙が出そうになった。

私は此処に来て”一応小鳥”になって”ことり”という名前を貰った。
これまでの”今”が無くてここにある”今”しかないというなら。
それを受け入れるしかないなら私は”ことり”として生きていくしかない。

「ことり〜?」
『………呼んだ?』

私は初めて佐助さんに”ことり”と呼ばれて返事を返したのだった。





そして、私が佐助さんに慣れ始めた頃から彼は私を頻繁に外に連れ出してくれるようになった。
けど!オレンジの髪にしがみ付いての移動は私にとって苦行に等しく木から木へ飛び移る度に
”離したら死ぬ!絶対死ねる!”恐怖を味わい

「へぇ…器用なもんだ。」
『死にたくないから必死なのよこっちは!』

高い木の上での一服中、必死で髪の毛を編み込んで編み込んで籠みたいに編み込んで、
身の安全を確保出来る位置を自力で作り上げた ────────── 人様の髪の中に巣作りしてる気がしたけど。

「落ちるなよ?落ちても俺様拾いに行かないからね。」
『だったらいっそ置いてってよ!』
「はいはい嘘だって。心配しなくても落としたりしないし落ちてもちゃんと拾ってあげるからさ〜。」
『もうやだー!おうち帰るー!!』
「そうかそうか、俺様の優しさは言わなくても判ってるか。」
『スピードと高度落とし…ぃっ!舌噛んだっ!!』

安全装置はあまり効果は無く(慣れてないから仕方ない)、
籠にひっ掴まって行く先も聞いてない何処か?まで私は荒馬に手綱無しで乗ってるような
スリリング且つエキサイティングな移動を余儀なくされたのだった。

「ほら着いた。」
『吐きそう…き゛も゛ち゛わ゛る゛い゛…。』
「そうか〜ことりも嬉しいか!」

違ぇよ吐きそうなんだって言ってんじゃん察しろこんちくしょー!!




(『  』台詞はピッピッピ。)
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2010.05.10