07.血の滲むような努力の結果、それがあるんだろう。 2だろうが3だろうが所詮本体は本体だ。 選ぶのはコントローラーである千鶴ちゃんで、私はただウィンウィンと音を鳴らして選択肢を発生させるだけの機体なのだ。 ───── 嗚呼何て無情なりこの現実は。 なんて嘆いても状況は変わらない。 私に”ヒロインなんざ蹴落としてヒロインの座を奪おう”って気概が無い時点で私は一生PS2。 どう足掻こうが一生本体のままなのだ。 ならどうすればいい?2ではなく3になる?それともいっそ ───── PSPになればコントローラーと一体化なんじゃ!? って逃避してる暇があったら腹を括れ、私…。 「若様、女である事を素直に話す…という選択肢を一応考えておいて下さい。」 「助さん?」 「意味は無い、状況は変わらないかもしれません。けれど何もしないよりはマシな事もある…。」 「そう、ですね。」 「助三郎の言う事も一理あるかもしれません、若様。」 「事情を説明する機会を作るのも策の内です。ただ状況がそれを許さないのであればその場合は…。」 「解りました。なら…私もやってみます!」 結局私は腹の一つも括れないまま流れに乗ったっていうか流されてその場面に直面する訳だよ情けない事この上ない! ───── いいのね? ───── いいも悪いももう時間無いしね。 ───── まぁ引っ繰り返せない状況を引っ繰り返すのもまた一興…。 ───── 、アンタこの状況で一体何者気取ってんのっ! ───── いいじゃないの、楽しめば。 もうどうでもいいわ。初志貫徹私は私の魂に彼の存在を刻めれば満足よ…とそっちで腹を括り、 千鶴ちゃんを前、その後ろに控えるように私達は立ち 「すみませーん!誰か居ませんかー!!」 千鶴ちゃんの合図によって最初のフラグを無事立てる事に成功した。 ちなみにこの時点で私達は土方・沖田・ちー様の3Sとは袂を別つ事となる……。 「大胆だなあお前さん。捕虜の身分で俺らを呼びつけるか。」 千鶴ちゃんの合図で現れたターゲット+@の4人。 「で、自分から声をかけてくるなんざそろそろ腹も決まったのか?」 その中で一番最初に口を開いた+@永倉新八…改め”新八っつあん”はかなり感心した様子で。 「私の話を聞いて欲しいんです。」 意を決した千鶴ちゃんがこちらの代表としてハッキリとした口調でそう言ったんだけど 容赦ない斉藤一…改め”はじめ君”は?というと 「恐らく、おまえの事情は汲めないだろう。それで良ければ話すといい」 「う……」 千鶴ちゃんの決意を一刀両断に切り捨ててくれた。 うん、見た目と雰囲気のまんま容赦ねぇなはじめ君は。 「おまえの運の無さには同情する。ま、成仏してくれな。」 そして、原田左之助…改め”左之さん”は同情してくれると仰った。 その上成仏してくれだなんてっ! 私今直ぐにでも昇天出来るわっ!と鼻息荒く ────────── なりそうなのを気合と根性と努力でグッと堪えたけれど。 そんな私をが見逃す筈もなく、目も当てられないわ…と呟いたのをハッキリ聞いたがこの際目を瞑ろう、うん。 ───── 成る程ね、この原田なんとかさんがの…。 ───── なんとかさんって何言ってんの!左之助って立派な名前がっ! ───── ハイハイ素敵な名前です事。 ───── キーーーーーーッ! ───── けれど…確かにの好みを完璧に満たしているわね。 ───── でしょ!?もう存在そのものが奇跡なの完璧なのよっ! ってこれ以上興奮したら死期が早まりそうだ。 小さく息を吸って吐いてを数回繰り返し、改めて目の前にいる煌びやかな面々を見据え直した時 「ほら、男なら諦めが肝心だろ?」 藤堂平助…改め”平ちゃんが”ついにそう言った。 ある意味この台詞が止めの一言だが、これで”処分される前提”で会話が成立している事を理解したのだろう千鶴ちゃんは 『状況がそれを許さないのであればその場合は…。』 そう言った私の言葉を的確に理解してくれていたらしい。 全てを諦めたように覚悟を決めた表情を浮かべ静かに畳の上に正座をした。 そう、その瞬間だった。 キャスティングとしてはその他Aな私とその他Bのにだけ見えたそれは紛れも無い愛キャッチグラフィック。 其処に居た私と以外には見えないそれは確かに愛キャッチグラフィック。 ───── …今私が思った事、解る? ───── ええ。多分今私達は同じ事考えてる筈よ。 ちきしょう開発め、イイ仕事しやがって…。 -------------------- 2010.03.02 ← □ →