12.行動とは、実際に体を動かして”あること”を行うことである。 『流石だな。俺達の言いたい事が良く判ってるじゃねぇか。』 『っそんな事…。』 『謙遜する必要ねぇよ。』 『謙遜なんかしてません!』 『周りの空気を読んで気ぃ回してくれるなんてよ…。』 『っそれは勝手にやった事で…っそれで…。』 『そういう事が自然に出来るってのがまたいいじゃねぇか。気に入った…いや、惚れたかもな。』 『っそそそそそっ!?』 『冗談だ、って言って欲しいのか?』 『冗談なんですか!?』 『本気だよ。』 そんな事言われたら私、今すぐアナタの胸に飛び込んでしまうわっ! と、痛すぎる沈黙に耐え切れず一人妄想という名の海にダイブした私は”いっそこのまま延々沈黙が続けばいい”とさえ思う。 けれどそんな都合のイイ事が起こる筈もなく。 ───── 、アナタ一人都合のイイ場所に逃亡するなんて事許されると思って? 私の一人旅をが妨害してくれた。 許すとか許さないとかそれ以前に、いい事無し続きなんだからこれくらいの逃避見逃せっていうの。 ───── 聞いてるの? ───── 聞いてるわよ…。 ───── どうにかなさい。 ───── 何で私が!? ───── つまらないじゃないの私が。 ───── 判ったわよどうにかすればいいんでしょ! 結局私は逃避も妄想も許されず、誰が招いたのかは判らない沈黙を破る任務を与えられた。 ったく誰よカチンコチンに場を凍らせたのは。 「男の浪漫を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまうんだよ千鶴。だから多少の事には目を瞑る事も必要だ。」 「馬に蹴られるのは夫婦喧嘩じゃないですか?助三郎。」 「格之進、夫婦喧嘩は猫が無視するんだ。」 「いや、猫が無視するのは男女の喧嘩だったような…。」 「男女の喧嘩は象が踏んでも邪魔できない…じゃないか?」 「どれも全部間違いだと思うけどな俺は。」 「偶然だな左之、俺もそう思う。」 「成る程、俺の勘違いか…。」 「私も勘違いしていたようです。」 「「「…………………………。」」」 そして無事、カチンコチンに凍った場は解凍された。 されたのはいい、全然いいんだけど何だろう左之さんが私とを可哀想な子を見るような生暖かい目で見てる。 それは左之さんだけじゃなくて新八っつあんもだし千鶴ちゃんまで!? 「皆さんどうかしたんですか?」 「いや……何もねぇ。だろ?左之。」 「っああ……。っ別に何もねぇよな?千鶴。」 「お二人とも何で私に振るんですかっ!?」 「千鶴、何でそんなに慌ててるんだ?」 「そうですよ?何か気になった事があれば言ってくださっていいんですよ?」 「何もっ………ない………です。」 何もないのに何でそんな目で私達を見るんだろうまぁいいか。 「ところで…遅いんじゃないですか?」 「ん?どうした格之進。」 「いや、お二人が此処に居て藤堂さんの姿が見えないのが…。」 「成る程な…。」 それよりも、の言う通り平ちゃんの登場がえらく遅い気がする。 もう登場してもいい頃なのに気配も感じられないし、もしかしてどっかで凍ってんじゃ!? 「あれ、千鶴?まさかおまえも行くの?」 と思ってたら平ちゃんがばたばた走ってきて。 本当は行きたくて仕方ないけど行けないんです…と首を振る千鶴ちゃんを見て凄く残念そうな顔を見せた。 ───── あら、この子は千鶴ちゃんに? ───── 当たり前でしょ!?千鶴ちゃんを何だと思ってんの! ───── 忘れてたわねそういえば。彼女は無敵のヒロインだったわねとは違って。 ───── っちきしょう!どうせ私は名も無きAよ! 「藤堂さんも島原に行くの?」 「そうだけど…って千鶴、藤堂さんとか他人行儀な呼び方やめようぜ?」 「え?でも私…。」 「平助でいいよ。皆もオレのこと平助って呼ぶし。これからしばらく一緒に暮らすんだしよー?」 「ええっ!?でも…いいのかな。じゃあ、平助君?」 「そうそう。んじゃ千鶴、今日から改めてよろしくな!」 「うん!よろしくね、平助君。」 ───── 無意識って恐ろしいわね。 ───── どういう意味よそれ。 微笑ましい平ちゃんと千鶴ちゃんのやりとりにははぁ〜っと溜め息をつく。 呆れた、ではない関心したような溜め息を。 ───── だってそうじゃなくて?千鶴ちゃんは一切何もしていないというのにあの子は千鶴ちゃんの”と り こ” ───── それはそういう仕様なんだから仕方ないじゃない。 ───── だからって諦めていいの?羨ましくはないの? ───── っそれは…。 羨ましくない、とは言い切れない。 半ばっていうか8割諦めてるけど諦めきれない気持ちもある。 ───── このままでは開発の思うツボ。 ───── けど仕方ないじゃない? ───── 仕方ない、では前に進めなくてよ? ───── だからアンタは何が言いたいの。 ───── 開発も唸るようなイイ仕事をなさい、。 ───── 意味判らんわっ! ───── 開発が『成る程こういうパターンも有りか!』とデータを書き換えたくなるような行動を起こすのよっ! は私や自分を何だと思ってんだろうか? 大体書き換えたくなるとか言う以前に製品は発売されてんだよ今更それはねぇよ!と突っ込んでいいんだろうかコレ。 「でも結局平助君も島原に行くんだよね?」 「でも女ってわけじゃねぇよ!皆で酒飲んで馬鹿騒ぎしたい気分なんだ。」 「うん…。」 ───── 見てみなさい?千鶴ちゃんの見事な思わせぶり。 ───── っ見事だわ…。 ───── やってみたくはない?、アナタが想いを寄せる彼にあんな風に…。 ───── っ!? ───── 妄想…いえ、想像して御覧なさい?原田さんがにあんな風に振り回されてオロオロしている様を。 スイッチオン。 私はの言う通り、私の発言や行動に振り回される左之さんを想像してみた。 『原田さんも島原に行くのか?』 『そうだけど…って助三郎、原田さんとか他人行儀な呼び方やめねぇか?」 『しかし…。』 『左之で構わねぇよ。皆も俺のこと左之って呼ぶしな。これからしばらく一緒に暮らすんだしよ?』 『しかし…それでは示しが…。』 『俺が構わないって言ってんだ。』 『っそうか…。っ左之。』 『出来るじゃねぇか。じゃあ助三郎、今日から改めてよろしく頼むぜ?』 『こちらこそ宜しく頼む、左之。」 …………何か違う。 私の変換ミスとはいえこれじゃ違うフラグになる。 全然違う私の求めてるフラグはBLじゃない普通の恋愛フラグだ。 ───── どうだった? ───── 最悪だったわ…。 ───── 、アナタの事だからうっかり違う方向で想像したんじゃなくて? ───── どこでそれをっ!? ───── ………まぁいいわ。 BLフラグを立てる位なら涙を呑んで家政婦になって実況した方が100倍マシだ。 「お前が女の格好をしてくれるんならそれだけで十分目の保養なんだけどな。」 「そ、そんなっ!?」 ───── あれを目の当たりにしても平気だと言い切れるなら諦めなさいな。 ───── くうっっそおぉぉぉぉっ! 「あ、オレも絶対可愛いと思う!色々落ち着いたら振袖着て見せてくれな!」 「い、いきなりそんなこと言わなくても!」 ───── あれで落ちない男がいるかしら?照れながら頷くなんて…魔性ね。 ───── あっあっあっあれくらい私だってっ! 『お前が女の格好をしてくれるんならそれだけで十分目の保養になんだけどな。』 『嗜好は人それぞれですからとやかく言うつもりはないが…。』 『悪い…今のは忘れてくれ。』 『そうします…。』 ダメだ萎えた。 「いつか機会があれば、ですよ?」 「約束だぞ、千鶴。忘れんなよ?」 「………はい。」 ───── 出たわ!必技”約束” ───── 何よ必技って…。 ───── あやふやな約束ほど煽られるとは思わない? ───── それは…確かにそうかもしれないけど。でもっ! ───── いつか…って何時?いつになるだろうか?って想いは膨らむものよね…。 ───── 約束なんかしなくたって! 「そういうわけで察してくれよ千鶴。俺らは汗水垂らして京の治安を守ってんだぜ?」 「何がそういうわけなのか私には全然わからないですけど…わかりました。」 ───── 理解出来ない事だけれどこちらが折れます判りました。 ───── 何…。 ───── 好感度アップね。格好とのギャップが女らしさのチラ見せをさらに煽る。 ───── きーーーーーーっ! 「千鶴。土産何か買ってきてやるから。お前何が食べたい?」 「じゃあ………みかんがいいです。明日の午後にでも皆で食べましょう?」 ───── いっそ私を食べてくれませんか?って言いたそうね。だからはダメなのよ。 ───── みかんなんかいらないわっ!土産は…土産はっ!!!!! ───── がっつくのは諦めきれない証拠でしょう? ───── くっ!じゃあどうしろっていうのよっ! 蚊帳の外に置かれ、会話を盗み聞きするような状況でのとのやりとり。 その内容は私を責めるようなものばかりでどうしろっていうんだっていうか私に何をさせる気だコイツは! ───── コントローラーを握れないのなら…内から変えてしまえばいい事。 ───── だから、何をどうしようってのよ! ───── 予感がするわ…。 ニヤリと笑うの予感は=(イコール)私の悪寒だ。 この後、何かとんでもない事が起こるんじゃないか!?って私が悪寒に身を震わせたその時だった。 「おや、これから皆で出かけるのかい?」 「う…よりによって源さんかよ!」 井上さん登場で場が一気に盛り上がる ────────── 訳がない。 この後に待ち受けるのは悲惨な結果のみ。 島原に繰り出すどころか余計な一言が出かけるチャンスと逃げ場を奪い、絶望がこの場を支配するのだ。 「ほら、あれだよ源さんあれ!み、皆で素振りでもするかなあって!!」 「そ、それだ平助よく言った!今日は天気も良いし風が暖かいからな!!」 「いやはや永倉君たちは勤勉だなぁ。折角の機会だ、私も付き合わせてくれるかい?」 「あの、ご愁傷様です・・・?」 ───── ねぇ、この状況で私達はどうすればいいかしら? この場面のスチルは存在しなかったけれど、文面から漂ってくる悲愴感に私は大いに同情したものだ。 けど巻き込まれるのは御免被りたい。 ───── 逃げる方が無難かもしれないわ。 「あ、ごめん!オレも皆と素振りしたいんだけど今日は先約があるから付き合えないんだった!」 一瞬のスキを突いて一人逃げ道を作った平ちゃんの裏切り行為。 「こいつに屯所の中を案内してやるって約束。そうだったよな、千鶴!?」 「待て平助!一人だけ逃げようなんざ────────── 。」 「千鶴、俺も付き合ってやるよ。平隊士にからまれちゃ面倒だろ?」 「それはその…確かに…。」 「原田君の言う事はもっともだ。じゃあ永倉君、我々は中庭に行こうか。」 「平助のみならずお前もか左之!」 それに巻き込まれる千鶴ちゃんと便乗する左之さんと、便乗し損ねた哀れな新八っつあんと状況を分析中の私達。 ───── なら私達も便乗する? ───── そうね、便乗して逃げるなら今のうちだけど…。 ───── 何かあるの? ───── 何もないから迷ってんのよ。 左之さんに押され平ちゃんに手を引かれてこの場を逃れるだろう千鶴ちゃん。 なら私達は? その後をノコノコと着いて行くだけ…なの? ───── 要するに嫉妬してるのね。 ───── だって…肩に触れるのよっ!?初接触よっ!そんなの目撃したら私っ…。 ───── だから行動しなさいって言ってるでしょ? ───── 行動っていっても…どう動けっていうのよ! ───── それはアナタの内から湧き上がる衝動に任せるのよ。 要するに、ノコノコ着いて行くのが嫌なら適当に行動しろってか! 何だそのいい加減且つ適当な助言はっ! ───── わーったわよやりゃいいんでしょ!やってやるわよ思うままに動いてやるわっ! 私は自分から井上さんの前に出て千鶴ちゃん達を後ろに追いやり 「(格之進、後は頼む。)」 「(助さん!?)」 「(助三郎、どうするつもりですか?)」 「(おい!お前どうする気だ!?)」 後ろ手でを含め千鶴ちゃん達に早く行くよう促して 「井上さん、俺にもご指導願えますか?」 「構わんよ。永倉君も構わんだろう?」 「俺は構わないっていうか俺もやっぱ一緒なのか…。」 千鶴ちゃんの肩を押した左之さんの代わりに井上さんの肩にそっと手をやり、 平ちゃんに手を引かれる千鶴ちゃんの代わりに新八っつあんの腕を取り、 「行きましょうか。」 達の逃げ道が広くなるよう自ら行く道を選んだ。 ───── 一緒に逃げたってロクに会話も無いんじゃね…。 ウフフアハハ(?)な千鶴ちゃんと左之さんの会話をボケーっと見てる位なら自ら谷底に飛び込んでやるっ! とあえて険しい道を行く事を私は選んだ ──────────────────── けれど。 人間嫉妬という愚かな感情で行動するもんじゃない。 嫉妬という醜い感情で行動する者には必ず報いがあるものだ。 「ちょっ…!?」 「えぇっ!?」 「おや?どうかしたんですか?」 「何かあったのか?」 私を心配し、最後までその場に留まっていたと私の目に映った衝撃の映像。 この場面で…っていうか部屋から出て今この時点までで絶対に起こり得ない事が起きた現実に私とは思わず声を洩らした。 ───── 何でっ!? 何で新八っつあんに愛キャッチグラフィックがあああああああっ!?(しかもピンク色じゃない) ししししししかもここここここここっち見てるしぃぃぃぃ! ───── おめでとう、きっとが行動したから得る事が出来たのよ。 ───── いやいやそれ有り得ないからっ!っていうか納得いかんわ全然おめでたくないっ! ───── 『は”フラグのない場面(相手)とフラグを立てる”能力を得た。』ピロリロリ〜ン。 ───── RPG風に説明すなああああっ! -------------------- 2010.06.01 ← □ →