13.3日で見飽きるより3日で慣れろ。 



夕日の差し込む部屋でぼんやりと過ごしながら、夕日の差し込む部屋でただぼんやりと過ごし
これまでを振り返っているだろう千鶴ちゃんを思う。

「、神妙な顔をしているけど何かあったのかしら?」
「いや、ちょっと千鶴ちゃんとシンクロしてみたっていうか?」

今頃千鶴ちゃんは沖田のヤローに軽くからかわれてるに違いない。
なのに千鶴ちゃんの側を離れ、私がここに居るには訳がある。

「千鶴ちゃんの今に何かあるのかしら?」
「多分ねー?今頃沖田のヤローにからかわれてる真っ最中だと思う。」
「あら、なら助けに行かなければならないわね。」
「ゴメンそれだけは勘弁してくんないかなアンタと沖田氏の相性はサイアクなんだから。」

つい最近判明した驚きの事実(っていうか予想通りの事実)なんだけど、我が親友と沖田氏の相性が恐ろしく悪い事に気付いた。
だからあえて今、私は千鶴ちゃんと距離を置いている正しくは沖田氏からを遠ざけた。
二人の間に(私の知らない間に)何があったか?は知らない。
が、あの沖田総司がの顔を見るとビミョーに顔を引きつらせるっていうかコメカミ辺りをピクピクさせるっていうか、
まぁそれは沖田氏に限った事じゃなくて土方さんも私達を見るとそういう感じだからどうでもいいっちゃいいんだけど。

「それより、あれからどうなったの?」
「あれからって?」
「井上さんと永倉さんとの三角関係の行方よ。」
「勝手にそんな関係作らないでくんない?誤解とか言い訳とかそれ以前の問題だから。」

あの、フラグの立たない所(場面及び相手)に愛キャッチグラフィックを出現させた日。
がいうところの”特殊能力”を得たあの日、残念ながらが期待するようなウフフアハハな展開はこれっぽっちも無かった。

「大体さ?愛キャッチグラフィックに似てたのは似てたけど…。」
「色違い…だったかしら?」
「そう、色違い。」

見た目は確かに見事な愛キャッチグラフィックだった。
けど色が違うと全て違うっていうか根本的に違った。

「愛…ではない、という事かしらねぇ。」
「多分ね。恋愛フラグを立てた合図とは違うっぽいもの。」
「あら残念。」
「あらゆるルートの隙を突いて偶然発見した友情EDへのルートっていうか?」

ピンクではないもっと赤みを帯びた暑っ苦しい色のグラフィックはこれまた暑っ苦しい友情を表してたに違いない。
つまり、私は愛しい左之さんとの接触はおろか会話もロクにしないまま、新八っつぁんとの友情フラグを立ててしまったのだ。

「でも時に友情は愛情を越えるものよ?」
「御託はいらないから。冷静になってくれない?」
「なら単に友情を深めただけ…って事かしら。」
「まぁ左之さんの大親友の親友になれたらそれはそれで…。」
「親友の親友は親友じゃなくて単なる顔見知りよ。」
「頼むから一言で望みを絶つのはヤメテくんない?」

あわよくば、親友の立場を利用して親友の親友だから親友だよね?って位置まで行こうとしてるのに。
その望みすら絶とうという私のリアル親友は一体私に何をさせたいんだろうか。

「全ては紙一重。どこでどう転んで何が起きるか判らないものよ?」
「あのさ、やたら無駄に修飾語つけてややこしくすんのやめてくれない?」

どこでどう転んで何が起きたのか判らない内に沖田氏とややこしくなったクセに。
アンタの居ない所で私がどれだけ沖田氏の精神的攻撃(嫌味)を食らってるか知らないクセにいぃぃぃぃっ!

「で?永倉さんはどんな方だったの?」
「井上さんが意外過ぎて印象が薄かったのは覚えてるわ…。」

結局あの日、私の中に強く残ったのは無駄に立ててしまった友情フラグではなく、
ハンドルを握ったら人格が変わる人のように竹刀を握って人が変わってしまった井上さんの強烈なキャラクターだった。





「遅ぇよ。」

そしてその日の夕食時。
広間に着いた千鶴ちゃんを迎えるついでに一緒に居た私とも迎えてくれた左之さんと新八っつぁん。

「おめぇら遅ぇんだよ。俺の腹の高鳴りをどうしてくれんだ?」
「それってただ腹が鳴ってるだけだろ?困るよねぇこういう単純な人。」
「お前らが来るまで喰い始めるのを待っててやった俺様の寛大な腹に感謝しやがれ!」
「新八、それ寛大な心だろ。まぁいつものように自分の飯は自分で守れよ。」

千鶴ちゃんを呼ぶついでに私達も呼びに来てくれた平ちゃんも加わって、賑やかな夕食が始まった。
私達の正面、左から平ちゃん新八っつぁん千鶴ちゃん左之さんが並んで座っている。

───── 相変わらずあちらは賑やかねぇ。
───── ホント…賑やかよね。
───── あら、それだけなの?
───── それだけ…って?
───── だって、アナタあんなに興奮してたじゃないの。
───── そりゃ?PLAYして初めて左之さんが居るスチルだもの興奮するに決まってるじゃないの。

その光景のスチルは印象深い物として確かに私の心のアルバムにあった。
何度見ても飽きないすばらしいそのスチルをナマで目撃した瞬間、鼻血我慢した私エライ!
とさらに興奮したのだ ────────── んがっ!

───── 要するに見飽きたのね?
───── 何ていうか、美人は3日で見飽きるのと同じ?
───── 拗ねてるのねぇ…。
───── 拗ねてないもんっ!!!

どう頑張ってもスチルに参加できない距離感がそこにある現実に、人は簡単にやさぐれるものなのですよ…ケッ。










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2010.07.06