15.節分は、過ぎたというのに………。 私が彼と出逢ったのが寒い冬、十二月。 そして、あの出逢いの日から半年が過ぎた今は六月。 つまり、私と彼が過ごした日々は半年も過ぎたという事になる関係は兎も角として。 彼氏彼女の関係なら、今だアツアツでウフフアハハな関係かもしれないけど、残念ながら私と彼の関係は殆ど他人で単なる顔見知り。 出逢った頃から全く進展の無い、進展のし様が無い残念な関係だ。 とはいえ、私がそんな関係を望んだのだから愚痴は言えても文句は言えない。 成り上がり根性も無ければ野望も無い、自ら清らかな関係を望んだのだ仕方ないで片付けなきゃ仕方ない。 ───── けどそろそろ一度…。 半年も過ぎた事だ。 一度、心のアルバムに仕舞い込んだ数々のスナップ写真を整理しよう!と、 私はスタート画面を開き(心の中で)、画像メニューを選び、画像鑑賞メニューを選択した。 心の画面に広がる画像鑑賞メニュー。 そこから、これまでに目撃した生スチルをもう一度見てみようと選んでみる。 先ずは一番最初に目撃した”頭の悪そうなオッサンを襲った羅刹な隊士”スチル。 血に塗れた悪鬼の如く形相の羅刹隊士のスチルはうんまぁ別に要らないから心のアルバムから永久消去した。 そして、その直後に現れた土方単独スチルとイケメン二人組(沖田&土方)?のスチル。 まぁこれはこれで見るには十二分に美味しいですし?保存しておこう…と心のアルバムの中に作成した保存ファイルに移動完了。 そして遂に登場した”不審者を見上げるコンビニ前のヤンキー”風スチルは勿論あの三人組。 私の目の前で、見事千鶴ちゃんとの最初のフラグをおっ立ててくれた左之さんと、頼んでも無いのに どっから見つけたのか?私相手に意味不明なフラグを立ててくれた新八っつあんと、一人出遅れてる平ちゃんの生写真。 うんうんいいよその視線、挑戦的でイイ!と鼻歌交じりに保存ファイルの中に作成した極秘ファイルに移動。 あとは…晩御飯時間を楽しんでる三人と千鶴ちゃんのスチル。 ───── あっれぇ?これだけ? っていうか半年も過ぎたというのに集めたスチルはたったこれっぽっち!? 私、確か心のフィルターに様々な場面を激写した筈なのに…と再度心のアルバムをガッサガッサと漁り倒す…と。 ───── ……………………。 出るわ出るわ一体いつの間に心のシャッターを押したの!?ってか無意識って怖い…と自分の才能に怯えそうになる程の、 無駄に撮影したっぽいスナップ写真がゴミ袋に3つ、心の片隅に追いやられてたのを発見した。 その、可燃ゴミ袋に入れられたスナップ写真を確認しようと袋を解いていくと ───── ……………………っこれは!? 盗撮スレスレの覗き見スナップが袋一杯に詰まっていた。 勿論、その大半は左之さんのものだったんだけど、私としては撮影した(見た)覚えの無い他の方々の物まで入ってて驚いた。 ホント無意識って怖い。 覗き見盗撮スナップ写真の中に、まさか近藤さんのスナップまで入ってるなんてどうかしてる ────────── っていうか 袋三杯のスナップの殆どが盗撮スレスレの写真ばっかの時点でどうかしてる。 けど、処分するには惜しい。 中々どうして盗撮スレスレの割に素晴らしい角度で撮れてるものばっかで、私は新たな保存ファイルを作成し、 その全てのスナップ写真をそこに保存して(整理はまた今度にする事にして)。 只今土方さんに呼び出され、沖田氏と平ちゃんの同席する部屋にた千鶴ちゃんの付き添いとして同席してる真っ只中、 そろそろ目の前で繰り広げられてると沖田氏の睨み合いにストップを掛けた方がいいかもしれない。 だってどう話を切り出そうか迷ってるっぽい土方さんが苦虫を30匹程口に含んで噛み潰してるような表情を浮かべ始めた。 ───── …そろそろ許してやれば? ───── 、甘やかすような事をしてどうするの。 ───── いやいやいや、そうやってアンタが沖田氏と睨み合ってると話しが進まないって。 ───── 私に引け…と? ───── いや、だから引くとか引かないとかそうじゃなくて。 ───── いい?人間にはやらねばならない時があるの。 どう考えても今はその時じゃないだろ…。 とはいえ、このまま睨み合いを続けられては話が進まないどころかこの部屋から退室する事が許されない上にフラグが立ちゃしねぇ。 ───── 今回は引き分けって事にして…ね? ───── …………今回だけよ。 私の言葉に渋々ながらも承知してくれたが沖田氏に向けていた喰い殺さんばかりの視線を 通常仕様(対沖田氏)の射殺すような視線に戻した事で 「お前に外出許可をくれてやる。」 この部屋に突入してから一時間後(今)、ようやく最初の一言を発する事が出来たのだった…。 そして。 「とにかく俺は許可を出してやる。行くか行かないかはお前が好きに判断しろ。」 その言葉を締めに私達は退室を許された。 さて、この判断自体がフラグなんだけど ───── 行くか行かないか…これがフラグね? 流石サン、自室に戻る中で気付いたんだろう私と千鶴ちゃんを交互に見ながらそう小さく呟いた。 ───── 行かない…が一応正解。 ───── 原田さんルートを突き進む道為には外出してはダメなのね? ───── そうよ。ここで外出したらこの先池…。 ───── 池? そう、このフラグで選択ミスを犯せばフラグは真っ二つに折れ、左之さんEDに到達する事は許されない…が。 ───── 、どうしたの? ───── いや…っその…ね。 が最も興味を示すであろうちー様との初対面を最短で果す為には この先にある池田屋で出逢う為にが今最も敵対心を抱いてる沖田氏との外出が必須になる。 それをクリアする事で、池田屋に同行が可能になるのだ…けどっ! そうしちゃったら左之さんフラグがおっ、おっ、おっ、おれっ、おれっ…。 ───── 別に構わないわよ。 ───── 何で!? ───── フラグなんてその気になればどうにでもなるから。 何っちゅう爆弾発言!? ───── だってそうでしょう?フラグは一応千鶴ちゃんの為の物だけれど…。 ───── けど…? ───── フラグの無い場所場面相手にフラグを立てる事が出来る能力を忘れたの? …………… そういやそんな能力あったな。 ───── 途中で寄り道したからといって、折れるようなヤワなフラグなら私がこの手で折って差し上げるわ。 ───── だからアンタねぇ…。 ───── そして改めて、より強固なフラグを私自ら立てて差し上げるわ。 爆弾発言再び!? ───── 取り合えず原田さん方面で結構よ? ───── 結構…って。 ───── 私に任せなさいな。 そう言って、これまでに見せたことのない凶悪な笑顔を浮かべ、 千鶴ちゃんの肩を優しく抱いて歩くの背後に私は ──────────────────── 鬼を見た気がする。 -------------------- 2010.09.15 ← □ →